チャプレン長メッセージチャペル

建学の精神

チャプレン長 五十嵐 正司

立教大学に入学された皆様、ご入学おめでとうございます。皆さんを迎えることができまして嬉しく思います。しかし、新型コロナウイルス感染症の蔓延により入学式を行うことができず、学生の皆さんは未だに大学構内に入ることができず、大学の教員・職員は皆さんと対面することができません。まことに残念なことです。速やかな新型コロナウイルス感染症の収束を願い、毎日祈っております。またこの感染症により亡くなられた方々、闘病中の方々、看護する方々、収束のために日夜働く方々を覚えて、神の祝福と慰め、癒しと励ましをお祈りしています。

立教大学は、146年前、1874年(明治7年)アメリカ聖公会の宣教師であるチャニング・ムーア・ウィリアムズ(Channing Moore Williams)により建てられた学校です。「聖公会」と云う教会は、イギリスの文化の中で育まれたキリスト教会であり、イギリスにおいては英国国教会(Church of England)と称されています。この英国国教会がアメリカに伝えられ、アメリカ文化の中で成長発展してアメリカ聖公会となり現在に至っています。世界の170を越える国々にも伝えられ、世界大のネットワークを持つ教会であり、世界の聖公会では多くの学校が建てられています。イギリスのオックスフォード大学、ケンブリッジ大学も歴史的には聖公会のつながりの中にある大学です。

アメリカ聖公会はキリストの愛を日本に伝えることを願い、1859年(安政6年)にウィリアムズ宣教師を日本へ派遣します。いまだキリシタン禁教令が敷かれている時代でした。ウィリアムズは英語教師として日本滞在を許可されて長崎に上陸します。長崎にいる間に日本の指導者となる人々に英語、西洋事情等を教え、その中には早稲田大学の創立者である大隈重信、日本の郵便制度を創設した前島密などがいます。

長崎に上陸してから14年後、1873年(明治6年)に明治政府はキリシタン禁教令の高札を撤去します。その年にウィリアムズは東京の築地へ移住し、3か月後に、立教学校を開校し「聖書」と「英学」を教えます。これが立教学院の始まりです。

明治初期に、既に行われていた日本の学校教育は明治政府の進める富国強兵・殖産興業政策の影響からか、国家にとって有用な人物の教育また経済界にとって有用な人物の教育が重視されていたようです。しかしウィリアムズはそのような時代の流れとは一線を画して、神が造られた無限な世界に足を踏み入れる、真理探究する場としての教育を行います。

「聖公会」という教会は英国国教会をルーツとしていますので、その良いエートスが立教大学のエートスともなっています。すべての人を神により造られた尊厳限りない命を持つ人として認め、宗教、信条の違いを問わず、国籍、人種、性別の違い等を問わず、一人一人が尊厳をもって生きられるように働く役割が国教会にあります。立教大学もこのエートスを持ち、キリスト教に基づく教育を行っています。

キリストは人が生きる大切な指針を次のように述べています。「あなたがたに新しい掟を与える。互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。」(ヨハネによる福音書13章34節)

新型コロナウイルス感染症の収束を願う今、この言葉が思い出されます。自分の地域が収束したからといって、隣の人、隣の国の人々が苦しむ限り、感染症はまた広まります。隣の人の苦しみに共感して関わりを持つ事が、自分の生きることに繋がります。今、世界の各地から自国中心主義の声が聞こえてきますが、人が人として生きられる道は、互いに大切にし合うことにある、とのキリストのメッセージを覚えて下さい。

キリスト教に基づく教育を行う立教大学での学びを楽しみ、善き人生を歩まれますように、神の祝福とお導きをお祈りいたします。

(2020年5月31日)