立教大学社会福祉ニュース
第22号(WEB創刊号), 2002

【研究報告】

外国人の子どもの保育への対応
―東京都新宿区の調査から―

研究員 猿田佳恵子

 1980年代後半以降,日本で暮らす外国人の数は急増しており,東南アジアや南米の出身者がその多くを占める。90年代半ば以降,かれらの定住化にともない,外国人の出生数も増加した。また,同時期,日本人の国際結婚件数も急増している。組み合わせとしては,「夫日本人,妻外国人」が全体の4分の3を占める。国際結婚件数と国際結婚カップルの出生数は,必ずしも比例しないが,少なくとも,80年代後半以降,それ以前に比して,日本人の父と外国人の母を持つ子どもが増えたと推察される。両親あるいは親のどちらか一方が外国人である子どもを,ここでは「外国人の子ども」と呼ぶ。外国人の子どもが日本の出生数に占める割合は,全国平均で37人に1人(1996年)であり,東京都区部では14人に1人(1997年)となっている。
 日本保育協会〔2000〕によれば,外国人の子どもの保育所入所児全体に占める割合は,全国平均で1%ないし数%,外国人の子どもが入所している保育所は全体の4分の1で,1ヶ所平均の数は,8.4人(公立9.3人,私立7.3人)である(1999年12月1日現在)。つまり,13人に1人が外国人の子どもである。新宿区の認可保育所では,5,6人に1人(2000年12月1日現在)が外国人の子どもであり,なかには,65%が外国人の子どもというクラスもあった。
 外国人の子どもが入所してくることで,どのような変化が生じているのだろうか。保育所入所を決定する行政側の見解では,日本人も外国人も区別なく平等に扱っており,外国人の子どもが増加しても特に問題はない,という。しかし,外国人の子どもが入所してくることで,保育所内では,言語や習慣,宗教のちがいなどからおこる様々なことがらへの対応に,日々追われているのが現状である。外国人の子どもの保育では,子どもの問題よりも,外国人の親とのコミュニケーションの問題が大きい。特に日本語の話せない外国人の親とのコミュニケーションは難しく,通訳の要望が多くあがっている。入所前に,どこの国の人が入ってくるのか,日本語は話せるのかなどの情報を早めに保育所側に伝えてほしいとの声もある。早めに情報が入ることで,事前に準備・対応できることも多く,これには行政と保育所との連携が不可欠である。また,入所前に外国人の親にたいして,日本の保育所がどのような施設であるのかを理解してもらうことが求められている。ある通訳者の話では,外国語版の保育所入所案内などは準備されているが,その内容や決められていることが,出身国での経験と異なるために,入所後,誤解やトラブルを生じることがあるという。ただ外国語版の案内を発行するだけではなく,内容の理解を求める機会が必要である。また,外国人の子どもの保育にかんする情報交換を,保育所間でできるようなネットワークづくりも重要である。外国人の子どもが増加した,といっても,その増加は,保育所ごとに違う。新宿区でも,先ほどあげたように,半数以上が外国人の子どもというクラスをもつ保育所もあれば,保育所全体で外国人の子どもは1人という所もある。外国人の子どもの保育経験の蓄積のある保育所の情報が他の保育所へ広まることで,日々対応に追われる状態から抜けだし,じっくりと考えて対応できる状態になるのではないだろうか。
 紙幅の都合上,行政と保育所の対応に焦点化した報告となったが,今後機会があれば,外国人の親の立場からみた外国人の子どもの保育について報告をしたい。
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