2004年7月24日 第10回 対人援助技術セミナー 受講報告

カウンセリングマインドの体験レッスンPartⅥ
―今までの私と今の私―

講 師:本研究所所員・コミュニティ福祉学部教授 福山清蔵

報告者:
介護老人保健施設グリーンヒルズ藤枝 支援相談員 鈴木 里美



はじめに
 
 この夏の猛暑に漏れ違わない1日であった平成16年7月24日(土)、立教大学池袋キャンパス7号館にて、第10回対人援助技術セミナーが開催されました。講師は、主催である立教大学社会福祉研究所所長でもあられる福山清蔵教授で、「今までの私と今の私」をテーマに、主として作業や参加者相互のインタビューを通じレッスンが行われました。

 参加者は、20名弱で、うち男性が3名。20代から70代まで、学生・一般企業勤務・対人援助職従事者など様々な層の方々の集団となりました。

 私自身は、同研究所主催対人援助技術セミナーへの参加は2度目。日頃、介護老人保健施設で支援相談員として対人援助を業務としていますが、日常の中で自己研鑚の場を希求しているとともに援助の過程でいかに自己覚知が重要であるかを感じており、このセミナーがひとつの機会となればと期待し、参加しました。


レッスンの概要

 
 「私と貴方は、今日初対面です。貴方は私のことを知っているといえるでしょうか?いつになったら貴方は私を知っているといえるのでしょう?」
 レッスンは福山教授のこんな問いから始まりました。
 「では、自分を知っているということはどうしたらいえるでしょうか?」 
 「知っている」という言葉。普段何気なく使っていますが、このように問われ、はたと私だったらどう返答するだろうか。思考が混乱しました。
 また、逆転移についても「自分がある人を嫌いだと感じても同じ人物に対して嫌悪感を持たない人もいる。嫌いと思うのは、自身にそう思う要因があるためでもある」と説明があり、改めて自身の価値観またそれが形成された経緯をできるだけ認識しておきたいという気持ちが高まりました。
 過去から現在に私という存在はつながっています。そして未来へ。過去からの自身を見つめなおすことで自分を知る。このレッスンは紙を使った作業「私の数字」「人生曲線」「間取図」「身体の記憶」や相互インタビューを通じ、それを体験することができるものでありました。


レッスンの内容

<私の数字>
 「自分自身をあらわす数字、私の数字をひとつ書いてください。」福山教授にそう言われた瞬間、私の頭は真っ白になりました。自分を象徴する数字?そんなこと考えてみたこともない!とかなり戸惑いました。参加者のなかには瞬時にインスピレーションが湧いた方もいらっしゃったようですが…。
 なんとか書き上げた数字を自己紹介しながら発表し合いました。数字を決めた理由としては、誕生日・名前に入っている数字、節目を感じる年や年数、ただ漠然とインスピレーション等々が挙がりました。なかには、「まず思いついたのがラッキーセブン。ラッキーセブンといえば777。で自分は向上心が強いので10まで目指すため777に8・9・10をつけた7778910が私の数字です。」とかなり考えぬかれた答えの方もいて、発表された数字自体よりもなぜその数字にしたのかという理由が十人十色で興味深く、ただ自己紹介するよりとても印象でした。

<人生曲線>
 今度は紙を横長に置き、まんなか辺りに一本の直線を引く。上側が楽しい・嬉しい等「快」の気持ち、下側が悲しい・怒り等「不快」な気持ちとして、当時の気持ちがどうであったかを直線が年齢をあらわす軸とみなし0才から現在までを曲線にして表現するというものでした。
 過去の記憶を古い順に引出しながら、その時どんな気持ちだったか思い返しながらの作業。なかなか1回では思うような曲線が書けず、何度かの修正が必要でした。
 その後、今の自分に影響を与えていると思われる時期3箇所に影響の強い順から「☆☆☆」「☆☆」「☆」と印をつけ、参加者がペアを組み相互に話を聞き合いました。
 福山教授からは注意事項として、「人間、人の幸運というはそう興味が惹かれるものではありません。が、話すほうは話したいものです。聞いてあげてください。不幸は、その不幸にだけ興味を持って聞くのはワイドショーと一緒です。そこからどう立ち直ったのかを重視して話しを聞いてみてください。」と。
 私とペアを組んだ方とは、発生した年齢は異なるものの3つ中2つの☆印に類似点があり、①自分自身を意識・内省し始めた頃②社会人になり今までの価値観や常識が覆る思いをした頃が今の自分に影響を大きく与えた時期としていました。どちらも不快の分野に曲線はあり、思い出すのもイヤな時期であると話しにもでましたが、「おかげで今の自分はたくましくなれた」と笑い合えました。
 相互インタビュー後、感想発表があり、曲線が二重になってしまったという人、このように自分の人生を捉えるのが初めてで作業にかなり戸惑ったという人、平坦な曲線で自分で大変なことはなかったと抑制している自分を感じたという人など様々な意見が述べられました。

<間取図>
 次の作業は、自分が小学3・4年生のときに住んでいた家の間取図をできるだけ細かく書くというものでした。頭のなかでタイムスリップし当時のことを懸命に思いだしながら、紙に描いていきました。思ったよりも意外に覚えているもので「そういえばあそこに電話があった」とか「ミシンがここにあった」とか忘れかけていた記憶も蘇ってきました。
 書きあがった間取図に色紙を切って作った家族を配置し表現。当時の家族の情景も浮かび上がってきました。また、当時の自分がどう感じていたのか書き出す作業を行い、①友達について②先生について③親をどうみていたか④親からどう見られていたか⑤熱中していたこと⑥(当時の自分を)わかってあげたいこと⑦当時の私に言ってあげたいこと⑧当時の私から今の私に言ってあげたいこと⑨象徴的気分⑩今の自分との相違点と共通点に答えていきました。ところどころ推測にはなりましたが。
 そして、できあがった間取図をもとに再び相互インタビューを行いました。

<身体の記憶>
 最後の作業は、紙に人のかたちを描き、自分の体に関する記憶、例えば病気やケガ、コンプレックス等を思いつくままに書きこんでいくものでした。最初はなにを書いてよいのかわからずなかなかペンが進みませんでしたが、福山教授が自身の経験など例に挙げ説明してくださり、突破口が開けると不思議なほどスルスル思いつきました。比較的健康には自信があったものの振り返ればそれなりに記入できる病気やケガがあり又「外見なんて気にしない」と強がっていても結構他人から言われた一言に一喜一憂している自分を改めて認識しました。
 レッスンの最後は、3人組になりレッスンを通じての感想を話し合い終了となりました。


おわりに

 このレッスンを通じ一番印象的だったのは、再三にわたり福山教授が「(レッスンで行うことは他人に見聞されるので)隠したいことは隠して話してください。ごまかして書いてください。後で自身で振り返ってくださればいいですから。」とおっしゃっていたことです。自分は普段そこまで配慮して話しを聞いているだろうか?話したくないことは話さなくてもいい自由をきちんと伝えられているだろうか?と考えさせられました。
 また、このレッスンは作業等により自身を知る体験をするものでありましたが、併せて参加者が「認識している自分を知ってほしい」「(自分は)ちゃんと認識できているのだということをわかってほしい」という欲求を発露する場であったような気もします。
 最後に、講師の福山清蔵教授及びこのレッスンを開催してくださった立教大学社会福祉研究所のスタッフのみなさまに感謝いたします。ありがとうございました。

 

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