公開講演会 「アベノミクスと雇用改革-『ブラック企業問題』からワークライフバランスまで」

佐々仁美(経済学部経済学科3年次)

2014/12/12

イベントレポート

OVERVIEW

経済研究所主催公開講演会

日時 2014年12月3日(水)18:30~20:30
会場 池袋キャンパス8号館2階 8201教室
講演者 大沢 真理 氏(東京大学社会科学研究所教授)
今野 晴貴 氏(NPO法人POSSE代表)
神林 龍 氏(一橋大学経済研究所准教授)
首藤 若菜(本学経済学部准教授)
 

講演会レポート

第二次安倍内閣の発足時に打ち出された経済政策「アベノミクス」。衆議院が解散され、総選挙が行われますがその最大の争点は「アベノミクス」の評価になります。本講演会ではアベノミクスの「3本の矢」といわれる①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略、のうちの③の成長戦略にスポットを当て、その中でも「正社員改革」についてさまざまな視点からお話を伺いました。

まず、本学経済学部の首藤若菜准教授より、本講演会の導入としてお話しいただきました。日本の雇用慣行の特徴として「企業社会」であることを挙げ、正社員と非正規社員の違いについて説明された後、現在日本型雇用慣行(年功賃金、終身雇用……)が崩壊してきているといわれているが実際はどうなのか、という疑問を投げかけたところでお話を終えました。
次に、東京大学社会科学研究所の大沢真理教授にお話を伺いました。アベノミクスの働き方改革には4つの柱(ジョブ型・限定正社員の構想、時間外勤務の割増賃金規制の緩和、解雇規制の緩和、労働派遣制度の抜本的見直し)に加え、おまけとして女性の活躍促進があると述べた上で、均等・均衡処遇は置き去りにされているということを強調されました。また、現在、非正規雇用者が女性や男性若年者で増加していて、さらに雇用の非正規化が小泉内閣や第一次安倍内閣時に加速したことにより賃金の低下が起こり、現在の第二次安倍内閣下では16カ月連続して実質賃金指数がマイナスになっていることを示されました。その他にも失業給付がもらえない失業者の数が多いことや、中小企業などの小さい事業主の社会保険負担が重くなっていることなど、現在の日本の労働に関する問題点について詳しくお話しいただきました。
次に、NPO法人POSSEの代表でもあり2012年に刊行された『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(文春新書、2012年)の著者でもある今野晴貴氏にお話を伺いました。離職率が高止まりしているのは若者の意識の問題だと世間では言われていますが、実際の原因は「ブラック企業」の労務管理にあるとして、具体的な事例を用いて説明していただきました。ブラック企業には労働者を辞めさせる方法として「選別型」と「使い潰し型」があり、現在ではこうした労務管理の手段を促すような本まで出版されているということでした。若者には、頑張っても報われない企業も存在するということを想定した上で企業を見分けていくこと、また仮にブラック企業へ就職してしまったら自分自身の権利を守っていくことが大事であると強調されました。
最後に、一橋大学経済研究所の神林龍准教授にお話を伺いました。神林氏は、主に「日本型の雇用慣行は崩壊しているのか」という点について説明されました。実際、日本の企業に5年以上勤めたようなコア層といわれる人々の中では、日本型雇用慣行は崩壊していないことが分かりました。また、非正規雇用は増加しているものの、コア層に当たる正規雇用は減少しているわけではなく、ほぼ変化していないことを示されました。その上で、非正規雇用の増加の背景としては自営業の減少との関連を想定すべきであると、データに基づき解説されました。最後に、日本には労使が合意すれば良いといった「労使自治の原則」の考えが根強く、労働市場の改革を実現するためにはこの原則にどこまで踏み込むかが今後の課題になるとして、お話を締めくくられました。

私は、日本型雇用慣行は崩壊しているといった視点で学ぶ機会が多いため、神林氏のように異なる視点に立ったお話を伺うことは、自分の考えを広げるために大変勉強になりました。中でも、非正規雇用の増加は自営業者の減少を関連させるべきという点はとても新鮮な考え方でした。また、大沢氏の講演は、自分自身がアベノミクスの掲げる働き方改革の中身を上辺でしか理解していなかったこともあり、アベノミクスを判断するための良い機会となりました。さらに、実例を踏まえた今野氏の講演も大変興味深いものでした。今野氏の著書『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』を読んだこともあり、また自分自身もこれから就職活動をする身であるため、人ごとではありません。今野氏のいう「自分の権利を守る」ということは一見簡単そうに思えます。しかし、実際は自分の権利を行使できない人が多いのも事実であり、労働者にも行使できる権利がたくさんあることをもっと社会に広めていく必要があると考えました。

今回の講演会は今の日本の労働を取り巻く環境を知ることができる大変貴重な時間でした。労働は生活の中で切り離せないものであるため、もっと多くの人々に日本の置かれている状況を知ってもらいたいと思います。

※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。

CATEGORY

このカテゴリの他の記事を見る

イベントレポート

2017/04/25

法学部主催「国際人に求められる素養と大学での学び~現場の経験...

関 匡史(法学部政治学科 2001年卒)