2009年度 全カリ科目「知ること・感じること」・沖縄フィールド・トリップ総括

所長 逸見敏郎
所員 八木正言


2009年度、実践神学研究会とカウンセリング研究会が中心となり全学共通カリキュラム(全カリ)への科目提供をおこなった。また授業をベースにしたフィールド体験型ワークショップとして、沖縄フィールド・トリップを実施した。以下、この二つの今年度新規事業について報告及び考察することとする。

1.全カリ科目「知ること・感じること~ハンセン病を巡る問題を手がかりとして~」
JICEが自らの考えるキリスト教教育を具現化し、発信していくことは、1962年に本学に設置されたJICEの今日的課題ではないか、という観点から「知ること」を相対的に検討する機会を学生に提供することについて八木所員と逸見との間で検討された。
これは情報社会とも呼ばれる今日の社会において、我々はパソコンはおろか手のひらの携帯電話ひとつで、世界の様々な情報にアクセスできるようになった。しかし、ネットを通して得た情報や事象だけで、本当に知ったことになるのか。また一方で様々な体験をし、そこで感じ得たことだけでその事象を知ったことになるのか。そして、我々を取り巻く世界を知るためには、知識ベースで知ることと体験ベースで知ること双方の往還的学びが不可欠になるのではないか、という学びの方法論をもとに、聖公会のハンナ・リデル、エダ・ライトそしてコンウォール・リーと大正から昭和初期にかけて救らい運動に携わった方々がいること、そして本学も1980年代からチャペル・キャンプや学生キリスト教団体の活動としてハンセン病療養所と深い関わりを持つことから、ハンセン病をめぐる問題をその手がかりとして授業を構成することとした。

 授業は、逸見と八木所員が中心となり、ゲストスピーカーによる最新の研究成果及び当事者の声を語って頂くとともに、ハンセン病資料館見学や映像資料の視聴とその批判的検討などを盛り込んだものとなった。授業計画は以下の通りである。

表1 「知ること・感じること」2009年度後期(2単位、池袋キャンパス)

1. オリエンテーション:授業のねらい,進め方,事前課題提示 逸見・八木
2. 「感じること」とは「知ること」とは(1)主観と客観・感じること 逸見
3. 「感じること」とは「知ること」とは(2)ワークをとおして 八木
4. ハンセン病を巡る問題とは 逸見
5. ハンセン病の歴史と差別偏見 藤野豊氏(富山国際大学)
6. ハンセン病当事者が語る自分史 伊波敏男氏
(作家、伊波基金代表、当事者)
7. ハンセン病とキリスト教 藤崎陸安氏
(全療協事務局長、当事者)
8. ハンセン病はどう描かれてきたか(1)映画「小島の春」  
9. ハンセン病はどう描かれてきたか(2)「小島の春」の批判的検討 逸見
10. 我が国におけるハンセン病治療-:小笠原登医師と光田健輔医師- 逸見
11. ハンセン病療養所の生活と歴史を知る;ハンセン病資料館見学 藤崎陸安氏・八木
12. ハンセン病療養所の子ども 宇内一文氏(日本大学)
13. ハンセン病療養所と市民/授業のまとめ 佐藤一宏氏(学生部)
小瀬典明氏(学生部)

 受講登録学生は62名であり、新座キャンパス及びf-campusの学生も受講していた。
最初の3回の授業で、八木所員と逸見で強調したのは、知識として知ることと、それをベースに現場に立ち、そこで出会った人や事象から感じたことを綜合し、相対化する営みの重要性であった。その点では、藤野氏の歴史的思想的研究からの講義と伊波氏及び藤崎氏の当事者の自分史の語りによって、ハンセン病者の受けて来た差別や偏見について、授業空間の中にリアリティが生まれたと言えよう。

2.沖縄フィールド・トリップ
全カリの授業と平行して、沖縄をベースにしたフィールド体験型ワークショップのプランを立てていった。基本コンセプトは、近年、中学校高校の修学旅行で沖縄に行った経験を持つ学生も少なく無いが、平和学習そのものを再度とらえなおし、沖縄を知る機会を提供するとともに、沖縄のハンセン病療養所「沖縄愛楽園」入所者との交流を通してハンセン病を生きる個人への理解をより深めることとした。
日程は以下の通りである。

表2 沖縄フィールド・トリップ(FT)日程表
3月1日(月) 羽田発0850、那覇着11:50
オリエンテーション、那覇市内FT 那覇泊
3月2日(火) ホテル発 嘉手納基地周辺FT、沖縄愛楽園着 愛楽園泊
愛楽園FT、入所者との交流会、振り返りMTG
3月3日(水) 愛楽園発 佐喜真美術館・沖国大・嘉数台公園(普天間基地)、ひめゆりの塔、平和祈念資料館~平和の礎、糸数壕(アブチラガマ)、振り返りMTG 那覇泊
3月4日(木) ホテル発 自由行動(那覇市内歴史散策、旧米軍住宅跡地(現新都心)FTなど)
那覇発15:20、羽田着17:35

 参加学生は11名であり、八木所員と逸見が同行スタッフとして引率した。行程は、いわゆる「観光コースでない沖縄」である。また事前資料として配付し、オリエンテーションなどの機会に説明した沖縄の歴史や沖縄戦の経過の要所を回ること、さらに現在メディアを通してほぼ毎日のように見聞きする普天間基地については、基地に楔のように建設されている佐喜真美術館、2004年8月に米軍ヘリが墜落した沖縄国際大学、そして沖縄戦の激戦地でもあった嘉数にある嘉数台公園の3点から普天間基地を見ること、そしてそこで見たものや感じたものを振り返りミーティングで語り合うというスタイルをとった。
この事前学習により得た知識を、実際の「現場」を周り、学生自身がその場に立つこと、そして同じ体験をしている仲間との議論を通して、自分自身が感じ得たことと知識的学びとを相対化しつつ綜合することができたといえよう。
また愛楽園では、入園者の方に愛楽園入園者が受けて来た差別偏見の歴史と沖縄戦下での愛楽園について戦争遺跡とも言える砲弾跡の残る建物や園長命令により患者によって掘削させられた壕跡などの説明を受けた。この沖縄戦下の愛楽園の状況は、当時の園長の対入園者施策について評価の分かれるところである。
その後、入園者の方々とのカラオケ交流が行われた。歌を唄いあうことがきっかけとなり、学生と入園者が顔を寄せ合うようにして語り合う姿が会場内のあちらこちらに見られたのが印象的であった。

 全カリへの授業提供やフィールド体験型ワークショップの実施は、JICEの新たな方向性の模索としての一歩である。今後も今回の二つの新規事業から得られた視点をもとにJICEが考えるキリスト教教育を発信して行きたいと思う。

(文責:逸見)




 
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