2018/06/13 (WED)

観光学部の石橋正孝准教授が「日仏翻訳文学賞」を受賞

キーワード:研究活動

OBJECTIVE.

観光学部交流文化学科の石橋正孝准教授が、ジュール・ヴェルヌ『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション II 地球から月へ 月を回って 上も下もなく』(インスクリプト、2017年)の翻訳で第23回日仏翻訳文学賞を受賞、6月5日にフランス大使館にて授与式が行われました。

授与式にて

「日仏翻訳文学賞」は、日仏交流事業に取り組む小西国際交流財団が1993年に設けた賞で、フランス語から日本語へおよび日本語からフランス語へ翻訳出版された本を対象に、優れた作品を顕彰しています。2010年には文学部文学科フランス文学専修の澤田直教授も受賞しています。

石橋准教授のジュール・ヴェルヌ『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション II 地球から月へ 月を回って 上も下もなく』(インスクリプト、2017年)の翻訳が今回受賞作品となりました。6月5日、フランス大使館にて授与式が行われ、小西国際交流財団の小西千寿理事長から表彰状や盾などが授与されました。

コメント

COMMENT

観光学部交流文化学科准教授石橋 正孝

このたび、19世紀フランスの作家ジュール・ヴェルヌ(1828-1905)が書いた三篇の連続する作品(『地球から月へ』『月を回って』『上も下もなく』)の拙訳が、第23回日仏翻訳文学賞に選ばれました。

実は、この作品とは個人的な因縁があります。ヴェルヌを愛読していた少年時代、幾つかの有名作品の邦訳が新刊では入手できなくなっていたのですが(インターネット以前だったので、今ほど古本を探すのは容易ではありませんでした)、そのうちの一つが『地球から月へ』でした。この作品の詳注版の翻訳がほんの10年ほど前に出ていたことを知った高校生の私は、藁にも縋る思いで、帰宅途中の大型書店にわざわざ立ち寄って注文を出したのでした。どこの新刊書店から注文しようが、出版社に在庫がない本は入手できないと薄々知りながら、その本屋の薄汚い階段には、地元の本屋では無理でもここならひょっとして、と思わせる雰囲気があったのです。もちろん、入手できませんでしたが、カーボンコピーによる注文書の控えを財布に入れていた間の気持ちは今も忘れません。その『地球から月へ』に始まる三部作を自分の手で訳す巡り合わせになったことだけでも驚きなのに、このような栄誉ある賞をいただけるとはよもや思ってもみませんでした。選考委員の先生方に感謝申し上げるとともに、この喜びを誰よりもまず原作者に捧げたいと思います。

『地球の中心への旅(地底旅行)』『海底二万里』『八十日間世界一周』等を書いたヴェルヌは、「SF」という言葉がまだ存在していなかった時代に、その先駆と見なされるような作品を書いたため、しばしば「SFの父」と呼ばれます。同時代においては実用化から程遠い状態にあったテクノロジー(潜水艦、飛行機等)の発展形態を描いた幾つかの作品は、その楽天的な調子と相俟って、確かにSF的という形容を冠したくもなります。が、ことはそう簡単ではないのは、彼の作品の中で最も「SF的」に見えるこの三部作——巨大な大砲による月世界旅行、そして地球の運命そのものへの介入——を読めばよくわかります。ヴェルヌは、自分が書いていることを愛情をもって信じていないという徹底したアイロニーの人であり、その文章に染み渡った、上機嫌かつ破壊的な「含み笑い」が「楽天」と勘違いされたにすぎないのではないか——これが、翻訳という形で三作を改めて精読した者の実感です。

翻訳にあたっては当然、色々と苦労はありましたが、今となってはそれも含めて楽しみながら訳した作品ですので、これを機に新たな読者に迎えられることを——僭越ながら原作者に代わって——心から願っています。