2016/10/24 (MON)

アフリカツメガエルの複雑なゲノムを解読 脊椎動物への進化の原動力「全ゲノム重複」の謎に迫る

キーワード:研究活動

OBJECTIVE.

理学部の木下勉教授が参加している国際共同研究チームは、主要モデル生物の中で唯一、全ゲノム解読が行われていなかったアフリカツメガエルのゲノムを解読することに成功しました。

木下教授は、日本チームの一員として、アメリカチームがショットガン法により得た断片的な塩基配列情報を機械的に連結した情報を、FISH法とコンピューター解析により、ゲノム全体に渡って手作業で確認、修正する作業を行いました。また、日本チームのなかでも、8番染色体の構造解析、転写因子、シグナル分子をコードする遺伝子群の解析を担当しました。

この研究成果は、英国科学誌『Nature』に10月20日付にて掲載されました。

発表のポイント

・2種類の祖先種が異種交配して「全ゲノムが重複」したとされるアフリカツメガエル。その複雑なゲノムの全構造を明らかにした。これにより、ついに全ての主要モデル生物のゲノム情報が出揃った。
・祖先種から受け継いだ2種類のゲノム(サブゲノム)を特定することに成功し、約1800万年前の「全ゲノム重複」の後に、ゲノムがどのように進化したかを初めて明らかにした。
・本ゲノム情報は、生命科学の発展に多大な貢献をするだけではなく、約5億年前に脊椎動物が誕生する過程で起きたとされる「全ゲノム重複」の謎を解く鍵、ロゼッタストーンとなる。

発表概要

さまざまな生物の全ゲノム解読は、全遺伝子の解明を通じて広く生命科学に寄与するとともに、生物進化の研究に多くの知見をもたらしてきました。多くの動物は父方と母方からの同一のゲノムをもつ「二倍体」ですが、アフリカツメガエルは、異種交配と全ゲノム重複により一つの生物の中に異なる2種類のゲノムをもった「異質四倍体」とされていました。そのため、非常に有用なモデル生物であるにもかかわらず、全ゲノム解読が非常に困難と諦められ、主要モデル生物の中で唯一行われていませんでした。しかし日本とアメリカを中心とする国際コンソーシアムは、アフリカツメガエルの全ゲノム解読に挑み、見事その全貌を明らかにしました。得られた情報は今後生物学から医学に至るさまざまな研究分野に大きく貢献すると期待できます。加えて、アフリカツメガエルのゲノムの中にある2種類のゲノム(サブゲノム)が別々の染色体のセットに分かれて存在するという重要な発見をしました。それにより、このカエルは約1800万年前に、2つの種が異種交配と全ゲノム重複を起こして誕生した異質四倍体であること、その後2つのサブゲノムが一つの生物の中で異なる進化を辿ったことが明確に示されました。今日の地球上には実に多様な種類の脊椎動物が生息し繁栄していますが、その最大の要因と考えられるのが約5億年前の古生代カンブリア紀に起きたとされる「2回の全ゲノム重複」です。その謎を解くための重要な鍵、いわゆるロゼッタストーンとしてアフリカツメガエルのサブゲノムの進化の仕組みが役立つことになります。これは生命科学における画期的な成果です。

論文情報

雑誌名 『Nature』(出版日:10月20日)
論文タイトル Genome evolution in the allotetraploid frog Xenopus laevis(異質四倍体であるアフリカツメガエルXenopus laevisのゲノム進化)
著者 全著者数は74名、うち日本の著者は30名(海外在住も含む)。
下記に3名の筆頭著者と3名の責任著者を以下に示す。
Adam Session1, Yoshinobu Uno1, Taejoon Kwon1, Richard Harland*, Masanori Taira*, Daniel Rokhsar*
DOI番号 10.1038/nature19840
論文URL http://www.nature.com/nature/journal/v538/n7625/full/nature19840.html