2015/11/25 (WED)

第28回「辻荘一・三浦アンナ記念学術奨励金」受賞者決定

キーワード:その他

OBJECTIVE.

第28回「辻荘一・三浦アンナ記念学術奨励金」の受賞者が以下の通り決定しました。

【受賞者氏名】
西間木 真(にしまぎ しん)氏(早稲田大学総合研究機構プロジェクト研究所招聘研究員)


【受賞対象業績】
11~12世紀フランスにおける教会音楽の理論と実践に関する研究

「辻荘一・三浦アンナ記念学術奨励金」は、故辻荘一名誉教授(音楽史)および故三浦アンナ先生(美術史)のキリスト教芸術研究上の功績を記念し、キリスト教音楽またはキリスト教芸術領域の研究者を奨励するため、1988年に設置されました。

「音楽学」部門および「美術史」部門の研究者に対し1年ごとに交互に授与されますが、本年度は「音楽史」部門が対象となります。

【選考理由】
西間木真氏の研究は、11~12世紀にフランスで作成された音楽写本の調査、分析、校訂を通して、中世キリスト教社会における音楽文化を実証的に再構築するものである。従来の音楽理論史研究では、11~12世紀は、「フランス音楽史の空白の時代」と見なされてきた。古代から伝えられた音楽理論をもとに西欧独自の音楽理論と記譜法が花開いたカロリング・ルネサンスの時代(9世紀)、パリ大学とノートル・ダム周辺の教養人たちによって記譜法理論が華々しく展開された13世紀とは対照的に、11~12世紀のフランスは、確かに、著名な音楽書や音楽理論家を輩出していない。しかし一方で、11~12世紀は、フランス各地の修道院や教会において新作のラテン語典礼聖歌が多数創作され、楽譜として書き残された時代である。また北イタリアで考案された新しい譜線記譜法が、おそらく教会改革の流れの中でアルプス以北へと普及し、その影響によってヨーロッパ各地で典礼聖歌集が全面的に改訂された時代でもある。すなわち11~12世紀は、ヨーロッパ・キリスト教典礼の実践の場において最も創造性の豊かな隆盛期といえる。
 11~12世紀のフランスにおける音楽理論と音楽実践の間のこうした矛盾を解明するために、西間木氏は、一次史料の網羅的な調査を行い、これまで知られていなかった音楽史料やテキストの存在を確認した。次に、新たに確認された大小さまざまな未刊行テキストの校訂を行い、註釈、用語の定義、小論、暗記歌などについて、ナンシー大学中世研究所の叢書ARTEMの一冊として出版した。さらに個々のテキストの分析から、未知の音楽用語や新しい音楽理論の存在を突きとめた。同時に音楽理論の実践的な側面に着目し、理論書の中で曲例として挙げられるフランス独自の聖歌レパートリーに光をあてた。現在は、中世キリスト教世界で最古のラテン語音楽書、レオムのアウレリアヌスの『音楽論』(9世紀後半)および『音楽についての対話』(1000年頃)の校訂版を準備中である。
 西間木氏はまた、キリスト教音楽史料に関する最先端の共同研究に積極的に関与し、『国際音楽史料目録 (RISM)』、データベース『In principio』、イベリア半島キリスト教音楽写本の図録、北フランス中世音楽写本目録など、複数の国際プロジェクトに貢献してきた。
 ヨーロッパの伝統的な史料調査方法を踏まえた西間木氏の研究は、高い専門性をもち、狭義のキリスト教音楽だけではなく、国際的な基盤研究として広くキリスト教文化研究に寄与すると認められる。今後、これまでに確認された音楽用語や理論、聖歌レパートリーを統合することで、従来、空白期とされてきた11〜12世紀のフランスの音楽文化の多面性を一層具体的に明らかにし、理論と実践の豊かな交わりを浮き彫りにできると期待される。
 以上の選考理由により、西間木真氏を第28回辻荘一・三浦アンナ記念学術奨励金の受賞者とした。
 授与式  2016年1月30日(土)11時から 
立教学院諸聖徒礼拝堂(池袋キャンパスチャペル)
 レセプション  同日 12時15分から
池袋キャンパス セントポールズ会館2階
 問い合わせ先  立教学院総務部総務課 03-3985-2253