2015/04/15 (WED)

文学部の阿部賢一准教授が第一回日本翻訳大賞を受賞

キーワード:研究活動

OBJECTIVE.

文学部文学科文芸・思想専修の阿部賢一准教授が、パトリク・オウジェドニーク『エウロペアナ: 二〇世紀史概説』(白水社、2014年)の翻訳により、第一回日本翻訳大賞を受賞しました。

日本翻訳大賞は、2014年1月1日~12月31日までに発表された日本語の翻訳書を対象に授与されるものです。翻訳家である西崎憲氏が発起人となり創設され、運営費はクラウドファンディングにより募られました。

一次選考では、一般読者の投票により10冊、5名の選考委員の推薦により5冊、計15冊(今回は同票により17冊選出)を候補作として選出。二次選考では、委員の投票により候補作が5冊に絞られ、最終選考では委員全員の討議により、大賞が決定されました。

授賞式は、4月19日(日)19時より紀伊國屋サザンシアター(東京新宿)で開催されます。

■『エウロペアナ: 二〇世紀史概説』について
現代チェコ文学を牽引する作家が、巧みなシャッフルとコラージュによって「ヨーロッパの20世紀」を大胆に記述。国内外で反響を呼び、近年出たチェコ文学としては最も多い20以上の言語に翻訳された斬新な歴史‐小説。

66の段落から構成される本書は、タイトルからすると歴史の教科書のように見えるかもしれない。だが冒頭からその印象は裏切られ、直線的な記述ではなく、時代がシャッフルされていることに気づく。あらすじもなければ明確なプロットもなく、記録、実話、逸話、噂話、スローガン、学説などさまざまなレベルの情報がミックスされ、コラージュされるうちに、「世界大戦」「宗教」「フェミニズム」「工業化」「ファシズム」「共産主義」といった20世紀を象徴するテーマや事件が、「マスタード」「ブラジャー」「インターネット」といった日常のささやかなトピックと思わぬ形で結びつく。「ホロコースト」と「バービー人形」のつながりなど、幾多のエピソードを通じて生まれる笑いと皮肉のなかで、時代の不条理が巧みに表出されていく。

虚と実、歴史と物語の境界に揺さぶりをかけ、読者の認識や思考回路を刺激する。「20世紀ヨーロッパ裏面史」、待望の邦訳。(白水社Webサイトより)

コメント

COMMENT

文学部文学科文芸・思想専修阿部賢一 准教授

翻訳は孤独な作業と思われているかもしれません。書物に向かいあい、言葉と言葉の間でひとりで格闘していく、そういう姿を想像されることでしょう。確かに作業のほとんどの時間は、ひとりで悩み、ひとりで言葉をひねり出し、ひとりでパソコンの画面に向き合っています。ですが、少し視点を変えてみると、目の前にある本を書いた人のことや、自分が訳す文章を読んでくれるであろう人の姿を思い描くこともできます。そのような広がりを思い浮べるとき、翻訳は孤独な営為ではなくなるのです。

今回の受賞に当たっても、賞の設立のために駆けずり回ってくれた人、候補作品を読んで胸の高まりを感じた人、この報せを目にして本を手に取ろうかどうかと悩んでいる人、といったさまざまな人びとが思い浮かびます。これからも、目に見えない読者の存在に想いをはせながら、人と人、言葉と言葉をつなぐ翻訳に携わっていきたいと思っています。