2014/12/09 (TUE)

第27回「辻荘一・三浦アンナ記念学術奨励金」受賞者決定

キーワード:その他

OBJECTIVE.

第27回「辻荘一・三浦アンナ記念学術奨励金」の受賞者が以下の通り決定しました。

【受賞者氏名】
奈良澤 由美(ならさわ ゆみ)氏(東京大学大学院総合文化研究科・教養学部・グローバル地域研究機構・地中海地域研究部門特任研究員)

【受賞対象業績】
フランス南東部のキリスト教祭壇の研究 — 古代末期からロマネスク時代まで

「辻荘一・三浦アンナ記念学術奨励金」は、故辻荘一名誉教授(音楽史)および故三浦アンナ先生(美術史)のキリスト教芸術研究上の功績を記念し、キリスト教音楽またはキリスト教芸術領域の研究者を奨励するため、1988年に設置されました。

「音楽学」部門および「美術史」部門の研究者に対し1年ごとに交互に授与されますが、本年度は「美術史」部門が対象となります。

【選考理由】
奈良澤由美氏は、1995年からフランスのエクス=マルセイユ第一大学に留学し、2008年に博士学位論文(Les autels chrétiens du Sud-Est de la France: de l'Antiquité tardive à l'époque romane, Thèse de doctorat, Université de Provence. Faculté des lettres et sciences humaines, 2008)で学位を取得。その後は当大学の客員研究員を務め、2011年に帰国するまで、一貫してフランス南東部に残る中世キリスト教祭壇および典礼備品の装飾に関する研究に従事してきた。中世のキリスト教会において祭壇は典礼の中心をなし、聖堂内の最も神聖な礼拝の場であったが、当時の現存作はヨーロッパ内で限られる。こうした状況のなか、南東フランスでは19世紀以降、考古学調査の隆盛を背景として、例外的に数多くの祭壇周辺の遺構が報告されてきた。しかしながら、各聖堂の来歴と祭壇装飾との関係、制作年代に関する基本情報でさえ曖昧な点が多く、その大系的研究が待望されてきた。

奈良澤氏の研究は、これら過去の考古学データの記録を再検証するとともに、現地の数多くの共同研究に参加しながら祭壇および典礼備品とそれらの装飾の綿密な観察・分析を行ったものである。その方法は徹底的なフィールドワークに基づく実証的なもので、豊富な写真や図版とともに未発表の作例も含めて、祭壇装飾の膨大なカタログ化を実現した。これは、Les autels chrétiens du Sud de la Gaule : 5e - 12e siècle,(Bibliotheque de l’Antiquite tardive, vol. 27), Brepols Publishersとして近刊予定である。本カタログには、プロヴァンス、ラングドック、ローヌ=アルプの3地方、計454の作例が網羅的に扱われ、そこで明らかにされた造形的分類と地域的特徴、編年は基礎研究として極めて重要である。

具体的内容は、これら祭壇群の原型を初期キリスト教時代にさかのぼるものとして捉え、その造形的特徴から4つのグループに分類・考察がなされている。第1群は、寓意的図像を含む卓上型祭壇で、マルセイユ近郊が制作地と考えられるタイプ。第2群は、異教墓碑を模倣あるいは再利用したもので、7世紀までローヌ川沿岸に分布していたが8世紀以降はラングドック地方に「西ゴート」的装飾とともに登場し、その後は地方的な発展を遂げた。第3群は、古代の食卓に起源を有する円形葉装飾タイプで10~12世紀の間ローヌ川以東で大流行した。第4群は、初期キリスト教時代に東地中海世界で普及した簡素な箱型祭壇で、プロヴァンス地方にはロマネスク時代に「輸入」され、特に巡礼路沿いの教会堂に普及した。これらの祭壇は、聖堂内に祀られた聖遺物と結びついて設置され、当時の聖堂建設における歴史的伝統や地理的つながり、礼拝の実態をたどる上で多くの示唆に富む。また、研究対象となった小さな村落の教会堂の管理・維持は、現代フランス社会において問題も多く、常に盗難や破壊の危機にさらされていることを考慮すると、本研究成果の刊行は、失われつつある文化遺産を記録にとどめる国際的取り組みとしてもきわめて重要である。

辻壮一・三浦アンナ記念学術奨励金運営委員会は、以上のような成果から、奈良澤氏の本研究を高く評価し、2014年度の学術奨励金授与を決定した。
授与式 2015年1月31日(土)11時から
立教学院諸聖徒礼拝堂(池袋キャンパスチャペル)
レセプション 同日 12時15分から
池袋キャンパス セントポールズ会館2階
問い合わせ先  立教学院総務部総務課 03-3985-2253