2013/12/11 (WED)

第26回「辻荘一・三浦アンナ記念学術奨励金」受賞者決定

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OBJECTIVE.

第26回「辻荘一・三浦アンナ記念学術奨励金」の受賞者が以下の通り決定しました。

【受賞者氏名】
福田 弥(ふくだ わたる)氏(武蔵野音楽大学専任講師)

【受賞対象業績】
フランツ・リストの宗教音楽研究

「辻荘一・三浦アンナ記念学術奨励金」は、故辻荘一名誉教授(音楽史)および故三浦アンナ先生(美術史)のキリスト教芸術研究上の功績を記念し、キリスト教音楽またはキリスト教芸術領域の研究者を奨励するため、1988年に設置されました。

「音楽学」部門および「美術史」部門の研究者に対し1年ごとに交互に授与されますが、本年度は「音楽史」部門が対象となります。

【選考理由】
福田弥氏の研究は一貫して、19世紀ロマン派の作曲家フランツ・リストの宗教音楽に向けられてきた。リストは一般に、比類なきピアノのヴィルトゥオーゾとして知られ、彼の超絶技巧によるピアノ作品はこんにちも世界中で高い人気を誇っている。一方、リストが生涯を通じて熱心なカトリック教徒であり、晩年にはローマに定住して叙階に必要な修養をし、聖職者の資格(下級聖職位)を得た事実は、一般にはあまり知られていない。リストがこの時期にとりわけ集中して取り組んだ宗教曲は、華麗なピアノ曲の数々と比較して地味であり、さらに晩年特有の前衛的で難解な性格をもつこともあり、これまで研究と実践の両方において蔑ろにされ、創作の衰えとさえ見なされてきた。福田氏の研究は、こうした従来の偏ったリスト像に修正を迫る、先駆的な研究として評価される。福田氏は、リストが楽壇や社交界の寵児として一見派手な活躍をみせていた若い時期から既に「音楽の役割は人々の魂の救済にある」という理想を抱いていたことを明らかにした上で、彼の74年の生涯全体を見直し、その延長上に晩年を位置づけることによって、音楽家リストの真価を宗教音楽に認めることに成功している。

リストの宗教作品は100曲を越えるが、演奏に供するべき楽譜が整備されていない曲も多く、自筆譜や当時の筆写譜、印刷譜などの原典資料の数々もいまだ埋もれたままである。福田氏は、このような状況下、手堅く緻密な資料研究を重ねられ、著しい成果をあげられている。世界各地のアーカイブにて福田氏が発見した資料には、ブダペシュトにて《聖フランチェスコの太陽賛歌》の異稿(1998年)、バイロイトとパリとブダペシュトにて《アヴェ・マリス・ステッラ》の複数の異稿(1998年、1999年、2001年)、バイロイトにて《祈り》の異稿(1998年)、ヴァイマルにて《婚礼》の編曲譜(2004年)、ヴァイマルと東京にて《ブロンドの小さな天使》の異稿(2004年)、ブダペシュトにて《夜》の室内楽稿の手稿パート譜(2009年)、東京にて《墓と薔薇》の版下用手稿譜(2012年)と多数挙げられる。なかでも、管弦楽伴奏付き合唱曲として知られてきた《聖フランチェスコの太陽賛歌》のトロンボーンとオルガン(またはピアノ)のための異稿の発見は大きな注目を集め、イギリスのリスト・ソサエティから福田氏の校訂による世界初版楽譜が近日刊行される予定である。

福田氏の研究は、未踏の資料の探索に終わらず、他の関連諸資料との系譜のなかで作品成立史を詳細に解き明かし、創作の意図を明らかにするものである。たとえば、さまざまな稿が存在する理由のひとつに、リストがカトリック音楽の一般家庭用普及を意図していたとの指摘は意義深い。ロマン派音楽における聖と俗の豊かな交わり、また、「音楽はそれ自体、本質的に宗教的である」と考えていたリストの多面性を浮き彫りにするべく福田氏は努められ、着実に成果をあげられてきた。音楽家リストのあくなき自己表現の追求と、キリスト教による救済への関心を結ぶ福田氏の研究は、芸術と宗教の関係を考える際の視野を拡げる点で、広義のキリスト教芸術研究に寄与するものである。

授与式 2014年2月1日(土)11時から
立教学院諸聖徒礼拝堂(池袋キャンパスチャペル)
レセプション 同日 12時15分から
池袋キャンパス セントポールズ会館2階
問い合わせ先  立教学院総務部総務課 03-3985-2253
 

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