立教大学 文学部・経済学部100周年記念企画 立教人たちの履歴書

寄稿

株式会社教育と探求社 代表取締役社長

宮地 勘司氏

夢の種

 私は、長崎港のちょうど入り江のあたりにある、神の島という町で、中学・高校時代を過ごした。神の島は、その名の通り、キリシタンの歴史を持つ町だ。高台には古くて小さな教会が町を見下ろし、近所の遊び仲間のほとんどがクリスチャンだった。私の父は、いわゆる敬虔なクリスチャンというのではなかったが、キリストの教えの深い部分を自らの体験に根ざした理解の上に、自分のことばでよく語ってくれた。それは今思い返しても幾ばくかの真理を含んだ、人生の本質に触れるようなものであったと思う。

 そんな私にとって立教大学のキャンパスは、故郷長崎を彷彿させる、ある懐かしさを持ったものだった。煉瓦造りの瀟洒な建物は決して大きすぎず、人を圧迫することのない落ち着いた佇まいは、生理的にもとても居心地のよいものだった。あまりの居心地の良さに、思わず5年間も大学に通うこととなってしまった。学校の成績はとてもほめられたものではなかったが、この時期、とにかく本を読みあさり、酒をはさんでは友と語り明かした。人は何のために生きるのか? その答えが知りたかった。しかし、何を読んでも、誰と話しても、確かな答えは得られなかった。本当は、人生のすべてが無意味なのではないのか。そのことを思うと怖くてしかたがなかった。しかし、卒業するまでにその疑いをぬぐい去ることはできなかった。

 就職は、まさにバブル真っ盛りの88年、日本経済新聞社に入った。飛ぶように過ぎていく日々の中で、いつしかそんなことすらも考えないようになっていった。しかし、入社して13年もたったある日、夢を見た。それは、日本を代表する経営者たちが、たくさんの高校生と車座になり、働くことの意味と人生について語っている夢だった。思わず飛び起きた。体中に電気が走った。何かができるに違いない。根拠はないが、確信があった。

 その夢から3年後、日経を退社し、教育と探求社という会社を設立することになった。現在、全国で1万人以上の中高生が学校の授業の中で、生き方、働き方を自ら探求する学習プログラムを提供している。教育が変われば、子どもたちが変わる。そして、子どもたちが変われば、日本の未来がきっと変わると信じている。

 起業して3年、寝る間もないような毎日だが、それでも非常に充実した日々を送っている。あの夢を見た日から、本当の自分の人生が始まったのだという気がする。そして、その種は、あの立教のキャンパスで過ごした日々のなかで、確かに埋められたものだと思っている。

(1988年社会学部観光科卒)

2008-03-13 |
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