立教大学 文学部・経済学部100周年記念企画 立教人たちの履歴書

寄稿

学校法人服部学園理事長、医学博士

服部 幸應氏

僕の「負けん気」は立教のおかげ

 僕の中に「負けん気」が生まれたのは立教のおかげ。元来、あまり議論が好きではなかったが、僕の立教の友達はどういうわけか議論好きが多く、朝までよくやりあっていた。本当につまらないことでもすぐ吹っかけてくる友人がいて、そのうちに「そうだよね」っていうのがシャクで、「こういうことだからこうだ」と言い返さないと気が済まない人間に変わってきた。

 16年ほど前から食育をテーマにした活動を始め、これまでに76カ国を回ってそれぞれの家庭に泊まり、食文化の研究をしてきた。テレビをつけながら食事をするのは日本だけ。そのために日本の食卓では当然培われるべき躾や会話がなくなり、子供が一人で食事をする「孤食」、家族のめいめいが好きなものを食べる「個食」が蔓延し、家族の団欒がなくなっている。そうするとどんな現象が起こるかといえば、顕著な例がこれ。親を尊敬するかという問いに、「尊敬する」と答えた世界の平均が83%に対し、日本はわずか25%という惨憺たる結果だ。同様に先生を尊敬するかでは、主要国で80%以上が尊敬すると答えているのに、日本ではわずか21%。これらの数字が50を下回ると国家として危ないといわれてますから、これはもう危機的な状況といえる。残飯の量でも世界一、食料自給率の低さ、子供を一人立ちさせられずニートやフリーターが増大する社会。こうした状況をみれば「こういうことだからこうだ」「だからこうすべき」と声を大にして言わざるを得ない。

 8年前、当時厚生省の「21世紀の栄養と食のあり方検討会」の委員に選ばれた。21世紀の食はどうなると思うかという質問があったので私は自己紹介を兼ねて、「知育・徳育・体育という今の教育はうまく機能していないと思う。これに食育という教育をきちっと基礎的なところでやっていかない限り、日本の教育は崩壊すると思います」と生意気なことを言ったんです。その場に来ておられた当時の小泉厚生大臣が「おもしろいね」と言われて、それからさまざまな場所で「食育」に関して話す機会ができた。

 それから半年したころ、BSE問題が発覚。農水省に頼まれて「食と安全」というテーマで基調講演とシンポジウムのパネリストの依頼がきた。楽屋にいると、そこへ武部農水大臣が来られて、「きょうはよろしく頼みますよ。BSEの問題も今出てきているので、食のちょうどいいテーマだ。ただ、私は10分しかいられないのでよろしく」と。僕は「10分じゃ困ります、最後まで聞いて下さい。BSEにかかわる問題ですから。食育というのはそういうものです」と言ったら、「わかりました。じゃ、できるだけ」とおっしゃられて、結局、最後までいてくださった。そして楽屋に飛んで来られて、「いやあ、食育大臣が必要ですな、これでは」と。その1週間後に武部農水大臣から「これから伺っていいか」という電話が入った。「どうぞどうぞ」とお迎えしたら、総理と打合せて食育調査会というのをつくるのでアドバイザーで来てくれと言われたのです。

 これをきっかけに数年間、国会議員の朝食会やさまざまな行政機関に「食育」の重要性を訴え続けました。粘り強い議論を重ね、紆余曲折を経ていくうちに、有志も増え、「食育基本法」の制定に漕ぎ着けたのです。

 毎年、180回を超える講演を全国で展開しています。これからも「食育」を説いていろいろな方々と議論をしていく必要があると思っています。日本の「食育」にかかわる危機的状況は100年先でも改善されないかもしれない。簡単なことではない。でも言い続けないといけないと思っています。

「食育が日本を救う」と。(談)

(1970年社会学部産業関係学科卒)

2008-02-14 |
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