公開シンポジウム「宗教の再創造—人間の精神性の根源を考える」

INFORMATION

  • 2017年11月25日(土)14:00~18:00
  • 池袋キャンパス マキムホール(15号館)2階 M201教室
    ※会場が変更となりました

現代は不安な時代である。我々の生きる日本社会は見えざる不安に満ち、また不安は形あるものとして確実に具現化している。すでに人口の激減が始まり、高齢化社会、縮小経済が本格化している。ここで優れた政治的、社会的ヴィジョンがあれば不安はかなりの程度に軽減されよう。だが実際には抜本的改善への妙案は何もなく、すべてはかなわぬ夢である。声を大にして叫んでも現実は遅々として動かず、未来の扉は閉じてしまっている。こうした時代では当然人々は内的な、スピリチュアルなものに救いを求める。そしてあたかもそれを裏付けるかのように、意識調査によれば、ここ数年スピリチュアルなものへの関心が大きく高まっている。
だがそれでは宗教そのものはどうなのか。宗教はその期待に応えているのか。答えは否定的である。戦後日本において何度か宗教が台頭した時代があった。終戦直後の混乱期、60年代後半の高度経済成長期、そして80年代末のバブル期である。だが現代日本において宗教は嫌悪すべき存在でしかない。これはオウム真理教事件の影響もあるが、その結果人々は心を閉ざして、ひたすら日常の小さな幸福の中に埋没しているかのように見える。宗教はかつての活力を失い、忘れられようとしている。新宗教はおろか、既存宗教でさえも。仏教は無残な葬式仏教に堕落し、またキリスト教は結婚式のファッションと化した。
対照的に、世界に眼を向けるとイスラームの台頭がある。ここでは宗教は大きな役割を果たしているかのように見える。だが本当にそうなのか。その背後に救いようのない政治的、経済的、また文化的破綻が存在しないだろうか。この破綻はグローバリゼイションによって世界中に拡大しつつある。そしてそれが台頭の理由であるとすれば、決して幸福な役割ではない。イスラームはその成立において革新的な教えであった。だが現在では原理主義的傾向のみが注目され、常にテロリズムと同一視される。そうした時代背景なのだ。
以上は目に見える形での宗教の現状であるが、さらにその奥には我々の中で起きているより深い人間存在の変容と精神の危機があるように思われる。かつては、政治・経済・文化の行き詰まりに対して救いを授ける宗教・思想が登場することがあった。だがいまや状況はより複雑である。今日、人間社会を取り巻く問題は、生態環境やヴァーチャル・リアリティーを含む、より深い次元にまで達している。地球の生態環境を破壊する張本人が種としての人間であったことが暴き立てられ、「人新世」という地質年代が新たに提唱された。他方で、来るべき人類の絶滅を視野に入れて、人間が電脳空間に移住し、身体を持たない不死の意識体の出現が技術的に模索されている。こうした人類を取り巻く状況を視野に入れるならば、人間による超越性を含めた思想としての宗教について、その根源に遡って今一度考える時期に来ていると考えられる…
宗教は何故発生したのか。その根源とは何なのか。これまでどういう役割を果たしてきたのか。翻って、現在ではどうなのか。果たして宗教は正常に機能しているのか。人間の精神生活にとって役立つ存在なのか。すでに形骸化し、堕落しているのではないのか。宗教は現代人にとって本当に必要なのか。もしそうだとすればどうあるべきなのか。どうすれば宗教は本来的なものとして再生できるのか。このシンポジウムにおいて現代の宗教に根源的な批判を加え、その本質と役割を考察して、未来への道を模索したい。
このシンポジウムは5人のシンポジストの発言とディスカッションにより進行するが、前回と同様に学生の参加を歓迎する。また本学内外の一般参加者へも開かれたものとする。

講師

東京基督教大学准教授・本学兼任講師
加藤 喜之 氏

現職:東京基督教大学准教授、本学文学部キリスト教学科兼任講師
研究分野:宗教哲学、西欧初期近代の思想史
学位:2013年、米国プリンストン神学大学院大学で博士課程修了(Ph.D取得)。

大正大学綜合佛教研究所研究員
平林 二郎 氏

現職:大正大学綜合佛教研究所研究員、唯識院仏教心理学研究所研究員
研究分野:仏教文献学
学位:2010年3月、大正大学仏教学研究科仏教学専攻博士後期課程梵文学満期退学。2013年3月、博士号(仏教学)取得。

上智大学アジア文化研究所客員所員
小村 明子 氏

現職:上智大学アジア文化研究所客員所員
研究分野:宗教人類学、異文化におけるイスラーム、とくに、日本のイスラームについて研究。
学位:2011年3月、上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科地域研究専攻博士後期課程単位取得満期退学。2012年3月、博士号(地域研究)取得。

本学兼任講師・宗教情報センター研究員
佐藤 壮広 氏

現職:本学コミュニティ福祉学部、明治大学大学院情報コミュニケーション研究科ほか非常勤講師、宗教情報センター(CIR)研究員。本学大学院文学研究科組織神学専攻博士後期課程満期退学。(財)国際宗教研究所・宗教情報リサーチセンター研究員を経て、都内諸大学にて非常勤講師。
研究分野:沖縄本島、青森県下北半島ほか日本国内のいわゆる民俗社会を中心とした宗教人類学、比較宗教学、表現文化論を専門とする。1997~1999年に沖縄県那覇市に居住し民間巫者「ユタ」の調査・フィールドワークに従事。
学位:文学修士(本学文学部)。

本学異文化コミュニケーション学部/研究科教授
奥野 克巳

司会

本学名誉教授
実松 克義
本学異文化コミュニケーション学部教授
細井 尚子

詳細情報

名称

公開シンポジウム「宗教の再創造—人間の精神性の根源を考える」

内容

I. 趣旨説明 実松 克義 氏
  発題1 加藤 喜之 氏
  発題2 平林 二郎 氏
(休憩)
Ⅱ.発題3 小村 明子 氏
  発題4 佐藤 壮広 氏
  発題5 奥野 克巳
(休憩)
Ⅲ.シンポジストによる討論
(休憩)
Ⅳ.学生・一般参加者からの質問に答える

対象者

異文化コミュニケーション学部生、本学学生、教職員、校友、一般

申し込み

  • 事前申し込み 不要
  • 参加費 無料

主催

異文化コミュニケーション学部

お問い合わせ

学部事務4課 異文化コミュニケーション学部担当

お使いのブラウザ「Internet Explorer」は閲覧推奨環境ではありません。
ウェブサイトが正しく表示されない、動作しない等の現象が起こる場合がありますのであらかじめご了承ください。
ChromeまたはEdgeブラウザのご利用をおすすめいたします。