理学部の教員・卒業生・大学生による座談会その1

[大山 秀子 教授]理学部

2015/01/01

立教を選ぶ理由

VOL.18

OVERVIEW

理学部の卒業生、在学生、教員がその魅力について語りました。

立教大学 理学部 化学科について教えてください。

(先生)
理学部化学科は物理化学、有機化学、無機・分析化学という3つの研究領域に分かれており、私は主に物理化学を担当しています。実際の研究内容は高分子に関するものです。そもそも高分子が何かというと、たくさんの原子がつながった大きな分子のことで、皆さんの生活でもおなじみのプラスチックやゴムなどが代表的なものです。また、実は私たちの体もたくさんのアミノ酸がつながった高分子です。少し難しい響きの名前を持っていますが、実際はとても身近なものである高分子の構造と物性に関するさまざまな研究に、学生みんなで取り組んでいます。ちなみに高分子は金属とかセラミックスと並ぶ3大材料の一つなんですよ。

この分野の研究の面白さや手応えはどこにあるとお考えですか?

(先生)
私たちの研究室では石油を原料としない植物由来の高分子の高機能化・高性能化や耐熱性の高い高分子が金属の代替として使えないかなど、高分子材料の新たな可能性を開拓する研究をしています。そこでは高分子間の反応や相互作用を利用したり、さらに高分子と無機物質との複合化などの手法を用います。まずはそれぞれの物質の構造と性質を理解し、それらを組み合わせることによって、特性が大きく異なる材料が得られることが面白さといえるでしょうね。

(大学生)
それは僕も感じます。すでにある物質の強度を向上させる、あるいは柔軟性を持たせるなど、人の手によって性質が変わっていく物質の多様性や可能性にはとても魅力を感じています。

(卒業生)
私もそれについては同感ですね。実験によって、思わぬ発見や気づきがあることも醍醐味なのではないでしょうか。

特性を変えるとはどういうことでしょうか?錬金術のようなものですか?

(先生)
例えば高分子Aと高分子Bがあるとします。AとBはそれぞれ水に溶ける「水溶性」という特性を持っていたとしても、水素結合や電気的な相互作用をすることで、水に全く溶けないものになったりするのです。

(卒業生)
高分子の組み合わせや反応/相互作用により、機械特性、熱特性、電気特性、難燃性など様々な特性を変えることが可能ですよね。

(先生)
もっと身近なものでいうと、炭素繊維により強化されたプラスチック、つまり炭素繊維強化プラスチックというものがあります。英語にすると、Carbon-Fiber-Reinforced Plastic(以下CFRP)のことです。CFRPはそれこそ暮らしの中のいたるところで見つけられる材料です。ゴルフのクラブとかスキー板、他にもいろいろな分野に活かされています。CFRPの研究をしていた時、炭素繊維とプラスチックの境界を成す「界面」がCFRP全体の機械特性を支配するという実験結果を目の当たりにし、「界面」に興味を持つようになりました。現在も、「界面」に注目して研究をしています。

(卒業生)
私は在学中ポリフェニレンサルファイド(PPS)の研究に没頭しました。

(先生)
奈良さんは研究に夢中だったわよね。修士修了後はPPSでは世界をリードする企業に就職したのでいつかPPSと結婚しちゃうんじゃないかと心配するくらいよ(笑)。

(卒業生)
まさか!そんなことはないですよ(笑)。でも、とても面白い研究だったことは、否定しません。それくらい、奥の深い研究対象だったことを今でも思い出します。

(先生)
奈良さんが在学中に取り組んでいたのは、普通のプラスチックよりもさらに耐熱性の高いスーパー・エンジニアリング・プラスチックという部類のプラスチックの研究だったわけですが、物質と物質の組み合わせによって性質が変わることに、彼女自身も研究の醍醐味を感じてくれていたのではないでしょうか。後で在学生の岡田くんが話してくれると思いますが、植物や二酸化炭素を原料とする高分子から優れた材料を作り出すといったユニークなものをはじめ、私達の研究室ではさまざまな研究テーマに、学生たちは深い探究心を持ってチャレンジしています。とても頼もしいですね。

高分子の研究がもたらした、暮らしや社会の変化について教えてください。

(先生)
ほとんどの身の回りで高分子が使われていない材料はないと思うんですね。さらにいうと、いわゆる純粋な一つの高分子からできている物よりも、いろいろな物質が入っている高分子材料が世の中に溢れています。

(大学生)
授業を通じて知った、生活の中にある高分子の幅広さには驚きました。

(先生)
今から約100年前の1920年代に高分子という概念が受け入れられるようになり、そこから多くの研究者が研究を重ね、ナイロンを始め様々な高分子が開発されてきました。今の暮らしや社会の便利さと豊かさの実現に貢献してきたといってもいいのではないでしょうか。

(卒業生)
新しい物質の誕生に研究者達は立ち会ってきたわけですね。

(先生)
ええそうね。岡田くんにも必ずそんな日がくると思いますよ。

(大学生)
とても楽しみですね。実際にそんな瞬間に立ち会えたら、とても緊張するかも(笑)。

(先生)
新しいものを生み出すことももちろんですが、既存の高分子を使って、どう新しい特性を出すかということも大事なアプローチになっています。より軽くなる、より強くなる、より柔らかくなるなど、これまでの物質が変化することで、その応用先はどんどん広がり、それは暮らしと社会に大きく寄与することになるでしょう。
いい例が飛行機です。現在、ボーイング787は飛行機の機体の約50%がCFRPで構成されています。これまでは金属を使用していたものが、先ほどのCFRPのような高分子を使った材料に置き換わり、軽くて強くてそして錆びない材料へと進化したということですね。頑丈で軽いので、燃費も大幅に向上したと言われています。次世代の車にもCFRPが使われることになるでしょう。

研究のスタンスあるいは指導にあたっての先生のモットーを教えていただけますか。

(先生)
私自身の学生時代に話はさかのぼりますがよろしいですか?(笑)。

(卒業生)
先生の学生時代ってどうだったんですか?イメージがわきませんよ(笑)。

(先生)
私がそもそも高分子と出会ったのは大学4年の卒論の時、高分子の研究室に入ったのがきっかけでした。与えられた課題に取り組んでいた時、もっと違う角度から検討したいと思い、自ら新たな実験を計画し、当時の先生に「こういう実験をしたいのですが、先生、やらせてください!」と言いに行って…。研究を自分で組み立てて、装置を使わせて頂くためにいろいろ走り回りました。そして、結果が出た時は、大変だけどすごく楽しかったんですね。他大学まで実験をしに行きました。

(大学生)
すごくパワフルな学生!

(先生)
自分の力とか考えで成し遂げた時や何か謎を解いたときの感動は、その当人だけが得られる喜びです。そして、それらの成功体験は次のステップや苦難を乗り越える力へと繋がっていきます。私はそのワクワク感や成功体験を学生たちに教えたいといつも思っています。だからこそ、「こうやりなさい」「ああやりなさい」という上からの教育はできるだけしないつもりでいます。なぜなら、そのやり方では、その感激する瞬間や、成長する機会を奪うことになってしまうからです。
もちろんテーマはある程度こちらで出しますけど、その達成に向けてのプロセスは人によって違って良いわけです。例えば登山を例にすれば、登り方は色々あるわけで、それをどう登ろうかと考えていく姿勢というのは大事です。それは、化学の知識や研究だけではなく、社会に出た時に最も役立つ力となるでしょう。学生たちに「失敗を恐れてはいけない。ただし、失敗したらそこから学びなさい。」と言うのはそういったことが理由です。ここにいる二人はよく知っていると思いますが(笑)。

インタビューに答えてくれた方々

(先生)大山 秀子先生
(卒業生)奈良 早織さん
(大学生)岡田 拓巳さん
「Z会 TEIDAN 学問と職業のカンケイから、大学進学を考える本」より
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。

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