2023年4月、スポーツウエルネス学部開設——すべての人の生きる歓びのために——

立教大学

2023/06/20

トピックス

OVERVIEW

立教大学は2023年4月、コミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科を改組し、スポーツウエルネス学部を開設しました。本学では15年ぶりとなる新学部。「すべての人の生きる歓びのために」を理念に掲げ、豊かで価値のある生き方の実現を目指します。

特別対談 学部開設によせて

(左)スポーツウエルネス学部 学部長 沼澤 秀雄、(右)立教大学 総長 西原 廉太

新学部はいかにして設立に至ったのか。新学部で展開される学びとは。
学部開設に深く関わってきた西原廉太総長と沼澤秀雄学部長に伺いました。

スポーツ系学部の設置は立教として必然の流れ

——学部新設に至った背景をお聞かせください。

西原 2014年頃から本学におけるスポーツの位置付けについて考える勉強会を沼澤先生たちと実施しており、その中で立教大学の礎である聖公会とスポーツとの関係について考えてきました。聖公会の司祭で、イギリスの名門ラグビー校の校長も務めたトマス・アーノルドは、キリスト教に基づいて人格を陶冶とうやすることを目指していて、それに資するものとして団体スポーツに注目します。そして同校が発祥の「ラグビー」のルール作りに取り組み、近代スポーツの基盤を確立するのです。そこから、フェアプレイやノーサイドの精神が生まれてきました。聖公会とスポーツは歴史的に深い関係があるのです。

沼澤 聖公会の先人が人間教育としてスポーツを重んじていたのであれば、本学がスポーツやウエルネスの考え方を取り入れた学部を設立するのは必然のことだと感じたのです。ここから、学部新設に向けて計画が具体的に進むことになります。

建学の精神を体現し地域・社会に奉仕する

——学部の理念についてお聞かせください。

沼澤 心身の健康だけでなく、価値観や生きがいを含んだ多元的な健康観が「ウエルネス」です。しょうがいの有無やジェンダーの違いなどにかかわらず、ベストな状態でより良く生きるにはどうすれば良いのか。この考えのもとに定めた学部の理念が「すべての人の生きる歓びのために」です。スポーツを基盤にして、生き方にスポットを当てた学びを展開する。これが本学部の独自性だと考えます。

西原 立教大学の建学の精神を表す「Pro Deo et Patria」というラテン語を直訳すると「神と国のために」となりますが、本学では「普遍的なる真理を探究し、私たちの世界、社会、隣人のために」と捉えています。「すべての人の生きる歓びのために」という理念は、まさに建学の精神を体現するものといえるでしょう。大学は教育・研究の場であると同時に社会貢献も担う場です。スポーツウエルネス学部は社会としっかり関わり、地域、そして世界に奉仕できる組織になってほしいと思います。

沼澤 コロナ禍によって、身体を動かすことやコミュニケーションの重要性を多くの人が再認識しました。このような経験を生かした教育も実践していきたいと考えています。

3つの領域を柱として現代に不可欠な学びを提供

——カリキュラムや人材育成の特徴を教えてください。

※2022年度までにコミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科に入学した学生も、スポーツウエルネス学部の学部共通科目・専門科目の履修が可能です。

沼澤 本学部では「アスリートパフォーマンス」「ウエルネススポーツ」「環境・スポーツ教育」の3つの領域を展開しています。競技スポーツの技術向上のみならず、高齢者や子どもの健康教育、環境問題などにも携わることができる人材の育成に取り組みます。また、学生には、ルールを守る、相手を思いやるといったスポーツマンシップを必ず身に付けてほしい。そのため、「スポーツマンシップ論・スポーツリーダーシップ論」を学部の必修科目としています。スポーツ科学とウエルネス科学の2つの科目群を設けていることも特徴です。さらに、情報を目的に合わせて使いこなすデータサイエンス科目群、世界の人々とコミュニケーションを取るための英語科目群といった現代に不可欠な学びを用意しています。

西原 データサイエンスも英語もあくまでスキルでありツールです。スキルを身に付けることが目的ではなく、それを使って何をするかが大切なのです。コロナ禍を例に挙げると、パンデミックが社会や人々の心身にどのような影響を与えるのかを研究する上で、データサイエンスや英語のスキルを持っているとアプローチの幅が格段に広がります。新入生たちにはそうしたスキルも十分身に付けることを期待しています。

新座キャンパスには、400mトラック×6コースを備えた全天候型の陸上競技場「セントポールズ・フィールド」(左)や50mの室内温水プール等のスポーツ施設が揃う。スポーツデータの収集や解析を行う設備も充実(右)

新座キャンパス活性化の核となる新棟

——学部新設による他学部への波及効果や、2025年竣工予定の新棟についてお聞かせください

スポーツウエルネス学部の拠点となる新棟のイメージ図(2025年1月、新座キャンパスに竣工予定)

沼澤 23年度は教員数が昨年度の約2倍に増え、全学共通科目においてスポーツ系の科目が拡充されます。他学部の学生も学びを通してスポーツに関わる機会が増えることでしょう。また、スポーツウエルネス学部ができたことで、新座キャンパスは4つの学部を擁するキャンパスになります。スポーツ施設が充実していて、地域の方々と交流できるイベントも多く、池袋キャンパスとは異なる雰囲気があります。新棟についてもそうした魅力を生かした、にぎわいのある施設にしたいと考えています。例えば、ヨガ教室やスポーツ観戦のパブリックビューイングなど、新棟で健康やスポーツに関するイベントを日常的に開催することで、学生同士が授業後も交流できる場所になることを期待しています。

西原 新棟はスポーツウエルネス学部の立ち上げに伴って計画されたものですが、他学部の学生も活用できる新座キャンパスの核として機能してくれると期待しています。環境への配慮はもちろん、インクルーシブやダイバーシティといった要素も重視したいと考えており、建物自体がSDGsの教材になるのではないでしょうか。
沼澤 新座キャンパスは「ヒューマンキャンパス」というキャッチフレーズが最適ではないかと思っています。スポーツ、福祉、アート、観光など、人間の幅広い営みに寄与するキャンパスとして、新棟を起点に更なる活性化を推進していきます。

学びのリソースを全ての学生に活用してほしい

——読者へのメッセージをお願いします。

沼澤 スポーツビジネス、スポーツ医学、スポーツ心理学など、スポーツは学際的な研究が可能な領域です。応用の利く学問ですが、その分、本質をしっかり学ぶことが重要になります。実験室レベルの基礎研究やデータ分析などの量的研究を進めるとともに、映像・言語・観察に基づいて行う質的な研究によって真理の探究を目指す研究者を学部をあげて育てていきたいと考えています。
西原 本学には「RIKKYO Learning Style」という全学部共通の学びのプラットフォームがあります。一つの学部が提供するカリキュラムだけでなく、他学部のリソースも存分に活用することができます。スポーツウエルネス学部の学生も新座キャンパスだけでなく、池袋キャンパスを利用することもできます。ぜひ本学が提供するさまざまなコンテンツに自由自在にアクセスして、学びのリソースを満足がいくまで使ってほしいですね。

立教大学スポーツウエルネス学部開設記念講演会

立教大学のスポーツにゆかりのあるゲストを招いた講演会を開催しました。

全学部に展開するスポーツ関連科目

全学部生が履修できる「全学共通科目」のスポーツ関連科目がさらに拡充。その一部をご紹介します。

スポーツスタディ1(アダプテッドスポーツ)

実技を通してアダプテッドスポーツ(しょうがい者スポーツ)への理解を深め、しょうがいの有無にかかわらずスポーツを楽しむ能力・見識を養う。同時にコミュニケーションスキル、自己表現、リーダーシップ等の能力も身に付ける。

スポーツスタディ1(はじめての器械運動)

マット、跳び箱などを通して、身体を操る力を身に付ける。入門者・初心者対象は「スポーツスタディ1(はじめての柔道)」「スポーツスタディ4(はじめての和太鼓)」「スポーツプログラム1(はじめてのバレエ)」など。

スポーツスタディe(オンデマンド)

体調管理や健康の維持・増進を基本に、年齢や性別、体力、運動技術に関係なく、自宅で楽しむことを重視したトレーニングを実際に体験。実技と講義で構成される授業は全回オンデマンドで行う。

身体科学からの学び

「ジェンダー・スタディーズからの学び」「身体動作を力学的に解釈するためのバイオメカニクス」「からだとスポーツ・身体活動」「サプリメントと日本人」といった多彩なテーマ・サブタイトルで科目を開講。

スポーツの科学

スポーツ科学の視点から、世界で活躍するアスリートの心・技・体に焦点を当て、「競技スポーツ」の全貌に迫る。競技スポーツで展開されるプレーをさまざまな視点から「みる」ことから、人生を歩いていくための“ヒント”を見つける。

スポーツとメディア

スポーツ記者を長く務めてきた毎日新聞論説委員が、スポーツとメディアの関係や報道の役割について、自らの経験も踏まえて講義。SNSの発展でメディアが変革期を迎える中、スポーツジャーナリズムの将来も展望していく。

アウトドアの知恵に学ぶ

狩猟、漁労、採集などを源流とする、人が生きるために見いだしてきた生活技術。こうした「アウトドアの知恵」を知ることで自然と人間の本質的な関係を振り返り、持続可能な社会の在り方を考えるヒントとする。

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