特集:地域連携から広がる可能性— 大学と地域の豊かな関係が具現化する教育理念

立教大学

2018/03/09

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OVERVIEW

2006年の教育基本法改正により、教育、研究に加えて「社会貢献」が大学の使命であることが明確に定められました。とりわけ「地方創生」が全国的に推進される中で、地域づくりの主体として大学に大きな期待が寄せられています。立教大学では、創立以来、時代の要請に応えうる独自のスタイルで、教育理念を具現化してきました。この記事では、立教大学ならではの地域連携の取り組み(一部)と、その基となる理念をご紹介します。

特集

高い市民性を備え、社会と共に生きる大学へ

立教大学副総長(社会連携担当)、図書館長、観光学部教授 豊田 由貴夫

立教大学副総長(社会連携担当)、図書館長、観光学部教授
豊田 由貴夫

キリスト教に基づく教育を実践する立教大学では、教育理念にある「世界、社会、隣人のために」という言葉が示す通り、身近な他者や社会のために行動する精神を伝統的に重視してきました。創立当初より、ボランティアやキャンプなどの正課外活動を通して絶えず地域社会と関わり続けてきたことにも、この理念が色濃く反映されています。

同時に、教育・研究の発展においても、隣人に寄り添うローカルな視点から、社会、世界へグローバルに視野を広げていくことが重要であると捉えてきました。こうした地域へのまなざしや貢献を重んじてきた伝統を踏まえ、かつ、社会の要請の高まりに応えるために、現在さまざまな地域連携を推進しています。

2010年に策定した「立教大学の社会連携方針」の中で掲げているのは、大学が一方的に知識や技術を提供するのではなく、地域社会のネットワークを形成し、その拠点としての役割を担う連携の在り方です。この方針を具現化した取り組みとして、2017年4月の「陸前高田サテライト」開設が挙げられます。復興に向けて共に歩むための支援、そして交流の拠点として、岩手県陸前高田市にサテライトキャンパスを設置し、陸前高田市・岩手大学との協働により活動を本格化させています。

連携を通じて大学の知を社会に生かすと同時に、現場での経験を学びや研究に還元することで、豊かな相乗効果が生まれます。地域社会との濃密な関わりの中で育まれる公共性への理解、倫理観などの市民性(シティズンシップ)は、本学が目指す「専門性に立つ教養人の育成」に不可欠なものです。こうした実践的な力を養う体験学習の機会をより広く提供するため、2016年に正課科目として設置した「立教サービスラーニング」(RSL)を、今後さらに拡充していく予定です。

地域において大学が担う役割が注目される中で、大学自らもより市民性を備え、地域社会に開かれた存在であることが求められています。立教大学が目指すのは、地域が抱える問題を共に分かち合い、「社会と共に生きる大学」です。全学的な体制のもとで地域連携をさらに推進し、社会的な使命を果たしていきたいと思います。
大学の地域連携の可能性
ESD研究所長、社会学部教授 阿部 治

現在約1億3千万人の日本の人口は約100年前には5千万人でしたが、このままいくと100年後には5千万人に戻るのではないかといわれています。このため政府も自治体も主に経済的な地域活性化による地域創生に取り組んでいます。

地域創生にとって最も重要なことは住民による地域への誇りの回復です。それは地元学などによる住民の主体的な学びによって地域の多様な資源(自然・歴史・文化・人材など)を見つけ出すことから始まります。そして、住民一人一人が地域の多様な資源と関わり、地域との関係性を深めていくことが環境・経済・社会・文化のトータルな視点で持続可能でかつ災害からの回復力(レジリエンス)が高い安全・安心な社会をつくるのです。

大学は地域の資源の発掘や活用を支援できる多くの研究者を擁するだけでなく、地域づくりに不可欠な若者(学生)の宝庫です。これらの大学の有する資源を地域創生に役立てない手はありません。一方、地域は学びの場、社会貢献の場、研究の場として大学にとっても極めて魅力的です。連携は広がっていくでしょう。

池袋キャンパス上空から望む景色

新座市イメージキャラクター「ゾウキリン」と立教大学ボランティア・パフォーマンスサークル「どりいむ・ぼっくす」

CASE1 立教大学陸前高田サテライト(岩手県陸前高田市)

2017年4月、「学び」を通じて共に復興の道を歩む交流拠点を開設

立教大学と陸前高田市は、2003年から林業体験プログラムを通して友好関係を深め、東日本大震災の復興活動では「重点支援地域」として支援を続けてきました。さらに2012年には包括的な連携・協力協定を締結し、ボランティアにとどまらない多彩な交流活動を実施しています。
こうした交流・支援をより深化させるため、2015年に策定した将来構想「RIKKYO VISION 2024」においてサテライトキャンパス開設を掲げ、設置に向けた準備を進めてきました。2017年4月、岩手大学、陸前高田市との協働で旧市立米崎中学校校舎に開設した「陸前高田グローバルキャンパス」内に「立教大学陸前高田サテライト」を設置し、開かれた交流拠点としてさまざまな活動を展開しています。

市民向け公開プログラム 立教たかたコミュニティ大学

2017年11月~2018年1月、市民を対象とした公開プログラム「立教たかたコミュニティ大学」(全3回)を開催。立教大学卒業生のピアニストによるコンサートや教員等による公開講座・パネルディスカッションを実施し、多数の方々にご来場いただきました。2018年度も引き続き、立教ならではの多彩なプログラムを提供していく予定です。

陸前高田サテライト──視点と展望

陸前高田サテライト長、経済学部教授 池上 岳彦

陸前高田サテライトは、3つの視点から取り組みを進めています。
第1に、本学の学生が、郷土の歴史・文化、暮らしの知恵、そして東日本大震災の記憶を分かち合い、地域社会の未来について考えつつ、学びを深める学修プログラムを展開します。第2に、陸前高田市の経験と教訓を防災、災害対応、まちづくり等に生かす研究に取り組むとともに、自治体職員などの研修の機会を提供します。第3に、「立教たかたコミュニティ大学」をはじめとして、市民のための学びの機会を創ります。
これまでに、活動拠点としての「陸前高田グローバルキャンパス」を整備し、市民およびNPO等の間で認知度が高まり、国内外の大学関係者と交流を深めてきました。
今後は、大学本来の役割である教育と研究の場としての活用に重点を置いて、取り組みを進めていきます。
陸前高田市との協定
連携及び交流に関する包括協定(陸前高田市)
地域創生・人材育成等の推進に関する相互協力及び連携協定(陸前高田市・岩手大学)

CASE2 池袋キャンパス(東京都豊島区)

多文化共生の街、池袋の魅力創出・発信に貢献

豊島区や東京芸術劇場との連携を通して、池袋の魅力創出・発信に寄与する講座・イベントの開催や、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた取り組みを実施しています。
豊島区はアジア系を中心とした外国人の人口比率が高く、2017年には日本・中国・韓国の3カ国において文化芸術による発展を目指す都市を選定する「東アジア文化都市」の国内候補都市に決定しました。本学においても今後アジアとの連携を充実させ、多文化共生の街づくりを共に推進していきます。

東京オリンピック・パラリンピックプロジェクト 豊島区とオリンピック・パラリンピック協定締結

2017年7月、立教大学と豊島区が互いに人的・知的・物的資源を活用し、2020年東京オリンピック・パラリンピックおよびその後を見据えた取り組みを推進することを目的とした協定を締結しました。自治体と大学との単独での協定締結は東京都内初となり、今後多岐にわたる分野で連携を進めていきます。

「池袋」を知る、東京芸術劇場との連携講座 池袋学

2011年に東京芸術劇場と連携協定を結び、池袋に住む人、働く人、学ぶ人、訪れる人など誰もが参加できる公開講座「池袋学」を開講しています。町の由来や歴史、文化、商業、暮らしなど、さまざまな視点で池袋のルーツや魅力に迫り、これからの池袋について共に考える講座です。

豊島区と区内7大学が協働し特色ある講座を開催 としまコミュニティ大学

「街全体をキャンパスに!」を合言葉に、豊島区と区内の7大学が連携し、各大学の特色を生かした講座を開く「としまコミュニティ大学」を開催しています。立教大学の教員陣による多彩なテーマの講座を通して、豊かなコミュニティ形成や地域文化の担い手づくりに貢献します。

毎年5月開催のアートイベントに参画 新池袋モンパルナス 西口まちかど回遊美術館

昭和初頭から戦後にかけて芸術の街として発展した池袋の歴史にちなんで、毎年5月にアートイベント「新池袋モンパルナス西口まちかど回遊美術館」が開催されています。立教大学は2006年度の開催時より企画・運営に携わり、旧江戸川乱歩邸の特別公開や講演会などを実施しています。
豊島区との協定
豊島区と立教大学による教育連携の協定
豊島区と区内大学との連携・協働に関する包括協定
2020年東京オリンピック・パラリンピック事業における連携協力に関する協定 ほか

CASE3 新座キャンパス(埼玉県新座市)

「地域に開かれたキャンパス」として、学生参画による地域連携を推進

新座キャンパスは開設当初より「地域に開かれたキャンパス」を標榜し、学生団体によるボランティアなどの地域連携が盛んに行われています。さらに、学園祭などのイベントを通した地域住民との交流や、室内温水プール「セントポールズ・アクアティックセンター(SPAC)」・新座図書館といった施設の地域開放も推進しています。
株式会社武蔵野銀行、株式会社西武ライオンズなど、埼玉県内の企業との連携を通して、周辺地域にとどまらず、県全体の活性化や産業振興に貢献している点も特色の一つです。

市民の生涯学習を支援する 新座市民総合大学

新座市の生涯学習推進の一環として、市内3大学が連携し、2000年に「新座市民総合大学」を開校しました。立教大学では、コミュニティ福祉学部の支援により「健康増進学部健康づくり学科」を開講し、健康な体づくりに関する講義や実技など全16回のカリキュラムを実施しています。

【科目例( 2017年度)】
●正しく歩いて健康長寿!~栄養と健康ウォークについて学ぼう~
●笑って、動いて、脳も健康!~脳リフレッシュ体操~

地域で地域の子どもを育てる 子ども大学☆ふじみ 子どもスポーツ大学☆ふじみ

富士見総合グラウンドが立地する富士見市の「子ども大学☆ふじみ」「子どもスポーツ大学☆ふじみ」の運営に参加しています。地域の大学や市民団体と連携し、子どもの知的好奇心を育み、学ぶ力をのばしていくことを目的としています。

【開講科目(2017年度)】
●立教大学キャンパス散策!ガイドマップを作ろう~私だけのオリジナル地図~
●高さ2.5mから見る景色!~馬とお友達になって背中に乗せてもらおう~
●ドキドキわくわく車いすバスケット!
 ~ターン&ダッシュその迫力とスピード感を体験しよう~

生活困窮世帯の生徒の学習をサポート アスポート学習支援事業

新座市をはじめ埼玉県内の自治体が主催する「ASUPORT(アスポート=「生活困窮者自立支援法」に基づく学習支援事業)」に協力し、生活保護受給世帯や生活困窮世帯の子どもを対象とした高校進学のための学習教室を開講しています。指導は学生ボランティアが担当し、立教サービスラーニング(RSL)科目として「自立と社会福祉:生活保護世帯を含む生活困窮者への埼玉県アスポート学習支援」を設置しています。

埼玉県内の地域活性化を推進する 武蔵野銀行×立教大学 産学連携プロジェクト

2007年7月に武蔵野銀行と産学連携にかかる業務連携・協力に関する協定を締結。観光学部生によるまち歩きマップの作成やイベントを開催する「埼玉地域交流フットパスプロジェクト」のほか、現代心理学部生による映像作品の制作など、埼玉県の魅力を発信するプロジェクトを実施しています。
埼玉県内での協定
埼玉県と立教大学との相互協力・連携に関する協定(埼玉県)
新座市と立教大学との連携協力に関する包括協定(新座市) ほか 

キャンパスの外に広がる連携

池袋・新座キャンパスの周辺地域にとどまらず、学部・研究所のプロジェクトや正課外活動などを通して、日本各地で多彩な地域連携を実施しています。ここではその一部をご紹介します。

7自治体と就職支援協定を締結 U・I・Jターン就職支援

地方出身学生の地元へのUターンをはじめ、Iターン※1、Jターン※2といった就職活動の多様化に対応するため、7つの自治体と「Uターン就職支援協定」を締結。「U・Iターン就職相談会」を開催するなどサポートを行っています。

※1 出身地域とは別の地域に移り住む
※2 出身地域とは別の地域の大学に進学し、さらに別の地域に移り住む

【協定を締結している自治体】
栃木県/熊本県/福島県/福岡県/福井県/札幌市/長野県
※2017年12月1日現在、締結日順

実践を通してシティズンシップを磨く 立教サービスラーニング(RSL)

「立教サービスラーニング」は、社会と連携した体験学習を行う全学部生対象の正課科目群です。講義系科目と実践系科目の2種類があり、実践系科目では、実際に現場に出て「体験」を知識や理論と関連付けながら学びます。

2017年度全学共通科目
【講義系科目】
大学生の学び・社会で学ぶこと/シティズンシップを考える/市
民活動の組織とマネジメント/デモクラシーとリベラルアーツ

【実践系科目(国内)】
RSL-コミュニティ(埼玉)/RSL-ローカル(南魚沼/陸前高田)/
RSL-プロジェクト・プランニング

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