リーダーシップ教育とアクティブ・ラーニング

経営学部国際経営学科教授 日向野 幹也

2015/05/01

研究活動と教授陣

VOL.10

OVERVIEW

経営学部国際経営学科 日向野 幹也 教授による研究室紹介です。

2006年4月に経営学部が開設されるのに合わせて、経営学科のコアプログラムとして「ビジネス・リーダーシップ・プログラム」(BLP)の準備を小生が始めたのは2005年であった。

それから10年近い時間が経過し、幸いにもBLPは経営学部の初年次共通教育、2・3年次教育科目として定着しただけでなく、その実績が認められて全学共通カリキュラム(全カリ)の中でも「立教GLP(グローバル・リーダーシップ・プログラム)」として展開されるようになった。またその過程でBLPは、文部科学省・日本学術振興会の「教育GP(質の高い大学教育推進プログラム)」(2008-10年度)に選定された上に、その成果審査(2011年)で、他大学に波及が見込まれる「イノベーティブな取組」として認定され(全国で15件のみ、首都圏の私立大学で唯一)、さらに文部科学省や経済同友会、他大学、出版社、新聞など学外の授業視察団・取材チームをしばしば受け入れたり、教員が他大学関係者の会合に招かれてその展開の秘訣を講演したりするに至り、新聞・雑誌での紹介も頻繁になってきた。また、毎年、BLP/GLPで計55クラス(必修を含む)、受講生延べ約1200名の規模で学部生のリーダーシップ教育を行っている教育拠点は、国内はもちろんのこと、リーダーシップ教育の本場米国にあっても類を見ない。

本稿では、その発足事情の一部と、最近になってますます明らかになってきたリーダーシップ教育の新しい意義についてご紹介したい。

経営学部のリーダーシップ教育

BLP クライアント企業に対するプレゼン テーション(池袋キャンパスタッカーホール)

経営学部では、2006年度の開設時に経営学科のコアプログラムとして、BLPが構想された。学部レベルで全員必修のリーダーシップ教育を行っている大学は他に存在せず、国内では現在以上に、学部生へのリーダーシップ教育の専門家が少ない状態であった。そのためか、ちょうど「金融論」の教員として採用プロセスにいた小生がBLPの立ち上げに「注力する」ことを打診された。実のところ正式なリーダーシップ教育の経験はなかったが、当時在籍していた東京都立大学(現・首都大学東京)のゼミで1995年くらいから(いまの言葉で言えば)プロジェクト型学習のようなものは行っていたので、それを学年全体に広げればいいのだろうと軽く考えて承諾した。これが結局は小生がリーダーシップ教育者にキャリアを変更する端緒となり、しかもその後、幸いにもBLPは成長して学部と大学に貢献できたので、素人の小生にコアプログラムを任せてくれた学部開設準備室教授会の決断に感謝している。

BLPのプログラム・ビルディングを始めてみると、対象を管理者に限定したリーダーシップ研修は米国では既に下火で、権限や役職のないうちからリーダーシップ教育を行わねばならないという考えが主流になりつつあることに気付いた。BLPについてもそうした米国での潮流に合わせるのが良いかどうかは、いわば賭けであった。しかし、権限がないときでもリーダーシップを取れる若者が、後に権限や役職を得たときには、部下が進んで付いてくる良いリーダーになれるであろうことは確信していたので、BLPの教育目標も「大学生版の管理者研修」から、「権限がなくても発揮できるリーダーシップの涵養」に変更することを決断したのである。

準備期間中、他にも大きな変更があった。当初の計画ではBLPの最初の科目は1年次後期から始まることになっていた。しかし、いくつかの私立大学で非常勤講師を務めた経験や見聞から、私立大の多くが1、2年次生に対して大規模教室での一方的なレクチャー型授業のみを行って、意欲をなくさなかった一部の学生だけが3年次からゼミに入れるような実態であったり、せっかく1年次に少人数の「基礎ゼミ」が導入されても、教員・学生ともに意欲が湧かない内容になっていたりすることに大いに疑問を感じていた。そこで、経営学部の「基礎演習」の内容を、BLPを前倒ししたものにすることを教授会に提案し了承してもらった。さらに、入学直後に行う「ウェルカムキャンプ」の主要な内容として、BLPのミニチュア版(1泊2日のプロジェクト型学習)を据えることも提案し了承された。後から見ても、この二つの変更の教育的効果は非常に大きかった。

このように仕事の範囲を拡大してしまったものの、2006-7年度の2年間は、助手・嘱託職員などの事務スタッフがいないのはもちろんのこと、作業・備品貯蔵スペースは小生の個人研究室しかなく、授業の多クラス同時並行での提供や産学連携に伴って発生する作業のほぼ全ては、週1回来学する兼任講師の1人と私とで行っており、そのために2008年春に、私は体を壊しかけた。しかし、2008年に「教育GP」に運良く選定されたことでBLP事務局が設置され、助教の採用も許されることになった。それからの3年間の事業期間に挙げた成果によって、学内外での評価が急上昇したのは冒頭に記した通りである。「教育GP」の終了後も「立教GP(立教大学教育活動推進助成)」による資金援助をいただけることにもなった。

立教学院全体のリーダーシップ教育

GL101 班単位で作業中

米国の大学でのリーダーシップ教育の現場を何度も見て学んだことの一つは、リーダーシップ教育の盛んな大学では教育対象は1学部にはとどまらず、例えば副専攻のような形で全学学生をカバーしていることが多いこと、もう一つは、職員のリーダーシップ教育も行われていることが多いことであった。

そこで経営学部での成果をもとに、大学総長室に対して「全学対象のリーダーシップ教育の開始」を提案した。この提案は迅速に採択され、2013年4月に全カリ科目「立教GLP」として開講した。受講者は定員に対して約3倍の応募倍率を得ており、手応えを感じている。

また、もう一つの職員対象のリーダーシップ教育についても、2014年2月と5月に実行することができた。さらに、立教新座高校教職員や、体育会部員学生についてもリーダーシップ研修を開始した。

アクティブ・ラーニングとの関係

GL101 班単位でディスカッション

最後の論点として、アクティブ・ラーニングとリーダーシップ教育の関係について述べておきたい。BLPが学外の高い評価を得るようになったきっかけが、実はBLPの(産学連携の側面と並んで)アクティブ・ラーニング的側面であった。つまりプレゼンテーションやプロジェクト型学習を重視し、グループワークを多く採り入れて学生の深い学びを促している点である。リーダーシップ教育はアクティブ・ラーニングにならざるを得ない面を持っている。しかしそれ以上に、リーダーシップ以外を教育目標にしている場合でも、学生がある程度のリーダーシップを持っていないと、そもそもアクティブ・ラーニングは成立しない。教員がいかにお膳立てしてもそれだけでは意味がなく、学生が乗ってきて初めてアクティブ・ラーニングが可能なのである。この点は、経営学部の専門ゼミの多くが活性化していることや、学部混在の授業で経営学部の学生がグループワークに特に積極的であること等で例証されている。

言い換えると、リーダーシップは、学生が大学を卒業してから企業等で要求されるスキルでもあるが、それ以前に、在学中に教室でアクティブ・ラーニングを効果的に行うために学生に必要なのであって、その意味で入学直後から基礎的教育として行う十分な価値がある。次のステップは、こうした全学対象の基礎科目としての展開かもしれない。

補記:本稿第1、第2節について詳しくは、拙著『大学教育アントレプレナーシップ』(ナカニシヤ出版、2013年)をご参照いただけると幸いである。

プロフィール

PROFILE

日向野 幹也

経営学部国際経営学科教授、BLP主査

【略歴】
1954年生まれ、東京大学経済学部卒、東京大学大学院博士課程修了、経済学博士
1983~2005年3月 東京都立大学経済学部勤務
2005年4月 立教大学教授
2006年 経営学部で学生のリーダーシップ開発の少人数クラス多数並行プログラム「BLP」を立ち上げから担当し、2013年度からは全学対象にも拡大(立教GLP)

【専攻】
リーダーシップ開発論

【近著】
大学教育アントレプレナーシップ─新時代のリーダーシップの涵養
日向野幹也著
ナカニシヤ出版(2013年)/ 1,296円(税込)

※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。

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