知っているけど知らない単語 法律英語とアメリカ法の基本を学ぶ

法学部 国際ビジネス法学科教授 溜箭 将之

2014/01/01

研究活動と教授陣

OVERVIEW

溜箭 将之教授の授業紹介です。

陪審員が女性だけでは問題か 実際の裁判をもとに学ぶアメリカの法

講義が始まると、さっそく先生から「今日は教科書のケース7です。まず、文章を読んでください」と指示が出る。途端に教室は静まり返り、学生たちは真剣に教科書を読み始める。この「英米法」の講義では、教科書にある裁判の実例を毎回一つずつ学ぶ。どれもアメリカでは有名な裁判ばかりだ。たとえば、ハンバーガー店でテイクアウトしたコーヒーを車の中で膝にこぼして火傷をしたと女性が店を訴えた裁判や、スマートフォンの特許を巡る裁判などさまざまな実例を取り上げる。
 この日のケースは、「未成年の女性が、子どもの養育費の支払いを求めて交際相手を訴えた際、陪審員が女性だけになってしまった」というもの。陪審制度においてこの状況は果たして認められるのか。陪審員とは、アメリカやイギリスで行われている陪審制において、刑事訴訟や民事訴訟の審理に参加し、一般市民として裁判官とともに判断を下す人のことだ。民間人から無作為に選ばれた33人の陪審員候補者の中から、原告、被告はそれぞれ10人ずつその裁判の陪審員になってほしくない人を除外できる。「では、なぜ陪審員が女性だけになってしまうと問題なのか?」と、制度の説明の後、先生から質問が学生に投げかけられた。 ある学生が、「女性は女性に、男性は男性に有利な判決を出すだろうという懸念があるからです」と発言した。すると先生は、「男性が必ず男性の味方をすると思う? 裁判になってみないとわからないよね」と次々と質問を重ねていき、学生たちに更に考えさせる。

この単語にそんな意味が? 知らないとチンプンカンプンな法律英語

英語では、日常生活で使っている単語が法律用語として別の意味を持つことがある。例えば「act」という単語。これは中学校で学習する単語だが、法律英語では、まさに「法律」という意味になる。同じく「action」は「訴訟」だ。こういう法律で使われる単語の意味は普通の英語の講義では取り上げられないことが多く、専門書には当然知っていることとして説明がない。
 「この講義では、法律英語と普通の英語の橋渡しをするという目的もあります」と先生。これから3年生、4年生になって英米法を原書で学ぶためのトレーニングを兼ねているのだ。教科書にも用語集が掲載されているが、講義の中でも教科書に法律用語が登場すると、先生は一つひとつ黒板に書きながら丁寧に説明していく。「challenge」は「忌避」。原告や被告が陪審員候補から自分にとって好ましくない人を除外することを指す。
 このように、普段よく使う単語が法律の分野では全く違う意味で使われており、英米法を理解するには必要不可欠だ。こうした単語の意味の違いのほかにも、判例などでよく使われる言い回しや、重要な法律用語なども先生は書き出し、学生たちは真剣なまなざしで聞く。

賛成か反対か 自分で考えて答えを出すことで法律のおもしろさを実感

講義が後半に入ると「What do you think?」という議論のパートになる。原告、被告、それぞれの当事者の立場から、今回の裁判の争点について学生たちが自分の意見を主張する。陪審員が女性だけになってしまったことに対して、法の下の平等という合衆国憲法の大原則に反するのではないか、という意見や、そもそも裁判では人種や性別に関係なく、証拠に基づいて判断がなされるべきものなので、陪審員の性別の偏りを問題視することがそもそもナンセンスなのではないか、など双方の立場から白熱した意見が交わされる。受講者が100人を超えるような大教室の講義では珍しい活発な議論。裁判の問題点を当事者の立場になって「自分だったらどう判断するか。その根拠は?」と考えることで、教科書を読むだけではわからない気づきがある。議論を通して、「自分で考える楽しさを体験してほしい」、と先生。また今後の講義では英語でのディスカッションを行う計画もあるそうだ。アメリカの法律と法律英語を同時に学ぶことのできる、またとない講義といえるだろう。
溜箭 将之先生
2000年3月 東京大学法学部第一類卒業 2002年5月 ニューヨーク大学 スクール・オヴ・ロー(アメリカ合衆国)法学研究科修士課程修了 米国ニューヨーク州弁護資格取得。 東京大学助手などを経て、2005年より立教大学で教鞭を取る。英米法を、憲法・民事訴訟・裁判所制度・信託法を中心に研究している。

VOICES of University Students 学生の声

この講義は先生からの一方的な講義ではなく、学生も発言してどんどん参加できるところが魅力です。来年は留学して経営学を学ぶ予定ですが、現在学んでいる国際ビジネス法と、留学先で学ぶ経営学を生かして、卒業後はビジネスの分野で活躍したいと思います。

世界で戦える法学部生となるために必要な英語力とアメリカの法制度の2つを学ぶことができることがこの講義の魅力です。語学を学ぶことが好きなので、先生が解説してくれる法律英語はとても勉強になります。将来は大学で学んだことを生かしてアフリカで起業したいと考えています。

立教大の素晴らしいところは、学生の自主性を尊重してくれるところです。自由に授業を組むことができ、ゼミを通して先生との距離も近いので、興味のある分野についてとことん学ぶことができます。私はこれからマイノリティの問題について研究していきたいと思っています。

「TOSHIN TIMES」より

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