多文化共生の現場で、日本語も 言語の一つとして学び、教える

異文化コミュニケーション学部教授 池田伸子・丸山千歌

2014/01/01

研究活動と教授陣

OVERVIEW

異文化コミュニケーション学部の日本語教員プログラムについてのご紹介です。

留学生に日本語教育を行う 実習で知る言語を教える難しさ

立教大学の異文化コミュニケーション学部は「英語+1」という母国語と英語以外の第3言語を学ぶ「複言語主義」と2年次に全学生が経験する「全員留学」が有名だ。しかし、「学部の柱は、日本語力を磨くこと」と話すのは同学部の学部長で、言語教育領域を担当する池田伸子教授だ。

「学部として外国語を学んでいくにしても、基礎となる日本語は大切です。日本語で論理的に考え、自分の考えを発信することが重要だと考えています。学生の多くは、日本語を母語とするネイティブですが、日本語を特別視するのではなく、世界の数ある言語の一つという観点で、母語である日本語を再度捉え直すことから始めます」

同学部が日本語を大切にするのは、日本語教員養成プログラムがあることも大きく影響しているのだろう。日本語も言語の一つとして見た時に、どんな特徴があるのかを考え、日本語を母語としない人たちに教える時にどのようにすれば効果的に教えられるかを学ぶという。

実習を担当する丸山千歌教授は「自分が当たり前のように理解している日本語を、学習者にどう習得させるか、自分で出したアイディアについて学生同士で話し合い、模擬授業を行います。それぞれのステップで、学生たちにはいろいろな発見があるようですよ」とにっこり。

実際に授業を行った学生が特に苦労するのが、1コマという限られた時間の中で授業をどう構成するかだ。導入に何をもってくるか、全体のどこに重きを置くのか、課題は尽きない。

日本の本当の姿を伝えることが日本語教師の役割のひとつ

同学部では、さらに地域と連携して「立教日本語教室」を立ち上げた。これは、立教大学のある豊島区を生活圏とする日本語を母語としない人たちに、日本語を教えるボランティア活動だ。「立教日本語教室は、まさに異文化コミュニケーションの世界。一つの教室に、いろいろな文化をもった生徒がいるので、そのことをまず認識することがスタート」と池田教授。

日本語教師が求められる背景は、時代とともに変化している。池田教授は「これからの日本が真に異文化共生の社会を築きあげるためには、日本語教師の役割は大きい。最近は、介護現場で外国人の方の手を借りたり、日本のアニメなどサブカルチャーが好きな外国の方も増え、そこから日本語を学びたいという人も。日本語教育を通じて、日本の本当の姿を伝える役割が日本語教師にはあるのかなと思いますね」。

丸山教授は学生たちに「クリエイティブな日本語教師になってほしい」と期待する。「これまでの日本語教育で培われた財産、たとえば教材などを使いまわすのではなく、問題点を見つけ、新しく生み出してほしい」。

最後に池田教授は「日本語教師に興味のある高校生には、自分とお母さんの使う日本語の違いなど日本語を言語として意識して聞いてほしい。そういう習慣によって、課題や問題点を見つけ、日本語教育の実践に結びつける力が身につきます」とメッセージをくれた。

先輩に聞く!

異文化コミュニケーション研究科言語科学専攻 博士課程前期1年
日本語教員プログラムを履修したものの、最初はあまり関心ありませんでした。けれど、留学したドイツで日本語を教える機会があり、もっと知識を深め、日本のことをもっと好きになってもらいたいと思うように。模擬授業では、限られた時間の中で、自分なりの授業をどう組み立てるのか試行錯誤しましたね。将来はもちろん、国内外を問わず、日本語教師としてやっていきたいと思っています。

異文化コミュニケーション学部4年
日本語教室では第2外国語も活躍します。ドイツ語、フランス語、スペイン語、中国語、朝鮮語で対応できる学生が揃っているのは強みです。フェイスブックを活用して、日本語教室の活動報告をしています。先日、「いいね!」が100人を超えて…うれしかったですね。大学は、自分さえ動けばいろいろなことができます。異文化に触れると楽しいことがいっぱいなので、高校生の皆さんも自分から新しい世界に飛び込んでみてください。

「高校生新聞7・8月号:学び最前線」より

※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。

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