公開講演会「さかなクンがみたESD — 『国連ESDの10年』最終年を迎えて」

若林 真希(社会学部現代文化学科3年次)

2014/08/01

イベントレポート

OVERVIEW

ESD研究所主催 Eco Opera! 公開講演会

日時 2014年7月8日(火)18:30~20:30
会場 池袋キャンパス 11号館地下1階 AB01教室
講演者 さかなクン(東京海洋大学客員准教授、ESDオフィシャルサポーター)
【略歴】
魚を通じて、漁業・魚食、環境問題や低炭素社会の実現に向けて全国各地で講演活動を行っている。2010年には、絶滅したと思われていたクニマスの生息確認に貢献。さらに海洋に関する普及・啓発活動の功績が認められ、「海洋立国推進功労者」として内閣総理大臣賞を受賞。現在、2014年11月に名古屋・岡山で開かれるESDユネスコ世界大会に向け、環境省有識者会議に出席。国連「ESDの10年」後の環境教育推進方策懇願会有識者メンバー、国連生物多様性の10年委員会(UNDB-J)地球いきもの応援団生物多様性リーダー(環境省)、お魚大使(農林水産省)、日本ユネスコ国内委員会広報大使も務める。『朝日小学生新聞』『家庭画報』『月刊ローソンチケット』でコラム連載中。

阿部 治(本学社会学部・異文化コミュニケーション研究科教授、ESD研究所所長)
 

レポート

環境問題、社会的問題、経済的問題などさまざまな問題を抱えている今の社会。ESDは「持続可能な開発のための教育」(Education for Sustainable Development)の略称であり、今の持続不可能な社会のあらゆる課題を解決し、持続可能な社会を創造するための活動です。今回の講演会では、東京海洋大学客員准教授でありESDオフィシャルサポーター(文部科学省)のさかなクンと、立教大学社会学部・異文化コミュニケーション研究科教授でESD研究所所長である阿部治教授のお話、対談が行われました。
まず前半は、さかなクンが自ら描いた絵とともに、クイズも交えて魚についてお話をされました。たくさんの魚の話がありましたが、共通して言えることは、海の中の魚や生物たちは、お互いに生きるために他の命をもらい、そして海に何かを還元しながら共生しているということだと感じました。例えば、アサリやホタテなどの二枚貝は海の中の栄養を吸って成長し、そうすることで海の中もきれいになるそうです。クイズでは、ウナギとキンキカサゴの二種類が登場しました。さかなクンはそれぞれの特徴を述べ、私たち人間は魚には獲れる産地や時期があることを理解しなければならないと話されました。そして、現実問題として生じているクラゲの過剰増加とごみだらけの海の問題について言及します。クラゲの増加の原因は、水温上昇やクラゲの栄養源となるプランクトンを捕食する魚を人間がとりすぎてしまうため、敵がいなくなったことだそうです。また、人間が海に捨てたごみを魚たちが食べてしまい、胃袋の中からごみが発見される現実があります。人間によって海の中は汚され、生態系が壊されている現状を、私たちはもっと知る必要があると思いました。
後半は、さかなクンと阿部先生の対談形式で、魚を通じたESDについて、そして「国連ESDの10年」の最終年を迎えるにあたっての今までの振り返りと、今後の課題についても話されました。さかなクンは、2048年には食卓から魚が消えてしまうという学説を防ぐために、そもそも活動を始めたそうで、私たちができることをいくつか述べています。消費者として責任を持ち、正しい漁法で穫った魚を買うために商品に貼ってある「MSC」というマークが目印になるといいます。「MSC」とは、魚をいつまでも食べ続けることができるように、海洋の自然環境や水産資源を守って行われた漁業方法です。また、日本には4200種以上の魚が存在し、その半分以上は食べることができるのに、スーパーではおよそ30種類の魚しか販売されておらず、特定の種ばかりに負担がかかっていることを指摘しました。商店街の鮮魚店で買い物をする時代は、お店とお客さんのコミュニケーションがありましたが、今はスーパーでパック詰めされた商品が並んでいるだけということについて触れ、地域におけるコミュニケーションがESDには大事であると述べられました。
最後に阿部先生は、ESDの今までの10年は助走であり、環境省などと協力しながらESDを広げるしくみづくりを行ってきて、今ようやくESDの認識も広まってきたといいます。そして、ESDはひとりでできるものではなく、持続可能な地域づくりをするために「みんなで」実現しなければならないものであると締めくくりました。
今回の講演会では、「さかなクンがみたESD」ということで、魚を通じてESDについて考えました。これは、ESDが本当にさまざまな分野に関わるものだということを示していると思います。私たち人間が自然の恵みと他の命をもらいながら生きているのと同じように、魚や他の生き物も生きています。しかし、環境を壊し生態系を破壊しているのは人間だけ。無責任な行動を取り続けてしまった私たちは、海の中の魚たちから学ぶことがたくさんあるのではないでしょうか。人びとのコミュニケーションも軽薄となってしまった今の時代、もう一度地域のコミュニティを立て直し、未来に向けて顔向けできる社会をつくる必要があるのだと思います。

※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。

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