酒井順子氏講演 「あの震災で独身は何を考え、どう動いたのか~今、振り返るさまざまな震災体験~」

武 彩花(コミュニティ福祉学部福祉学科2年次)

2014/07/17

イベントレポート

OVERVIEW

ボランティアセンター主催 酒井順子氏講演

日時 2014年6月19日(木)18:30~20:00
会場 新座キャンパス 4号館2階 N421教室
講演者 酒井 順子 氏(エッセイスト)
【略歴】1989年本学社会学部観光学科卒。卒業後、広告会社勤務を経てエッセイ執筆に専念。2003年に刊行した『負け犬の遠吠え』はベストセラーとなり、講談社エッセイ賞、婦人公論文芸賞を受賞。他の著書に『29歳30歳のあいだには』『枕の草紙REMIX』『都と京』『女子と鉄道』『金閣寺の燃やし方』『ユーミンの罪』、『地震と独身』など多数。

<インタビュアー>
逸見 敏郎(本学文学部教授、ボランティアセンター副センター長)
 

レポート

東日本大震災が起きた直後、「絆」という言葉が注目されメディアでも家族の絆が多数取り上げられました。しかし、あの震災を体験した人の中には世帯のある方だけでなく多くの独身の方たちがいたはず…。そのような独身者から見た震災に注目し『地震と独身』の著者である酒井順子氏の講演会が立教大学新座キャンパスで開かれました。酒井氏はベストセラーとなった『負け犬の遠吠え』でも知られているエッセイストで、立教大学の卒業生です。

今回の講演は、酒井氏と立教大学文学部教授(ボランティアセンター副センター長)の逸見敏郎先生との対談形式で行われました。まず、この本を書くきっかけとなったのは震災後、独身者はどうしていたのかという疑問を感じたことだったそうです。酒井氏はこの本を書くために震災を体験した独身の男女約50人にインタビューをしました。インタビューでは辛い経験を聴くことになるので緊張されたそうですが、実際に話をしてみると震災に対して感覚に違いは無い事に気づき自然と会話が出来たそうです。また、被災者にとって、酒井氏のように実際に震災を体験していない人との方が話しやすい話題もあり、それを話すことで心の整理をつけることができた方も多くいたといいます。お話を聞きながら、震災は家族や恋人との関係まで変えてしまう力を持ち、私たちは何も知らないからこそ傾聴することが大切なのだと感じました。
またインタビューを重ねる中で酒井氏はある発見をしました。それは独身者は自身の感覚に従ってすぐに行動できるということです。この発見は、独身者の行動を考える上で重要なポイントです。

『地震と独身』には独身者の話がいくつか出てきますが、そのうちの数人のお話が講演の中でも出ました。地元紙の新聞記者として働いているある女性は、震災後仕事に対しての意識が変わったそうです。被災者であり報道者であるという事実と、いつまでも被災者でいたくないという思いから、報道の意味をあらためて考えました。そして、同じ新聞でも地元紙ならではのスタンスがある事に震災を通して気付きます。そこに地元紙の記者としてのプライドをより強く持つようになったとのことです。またITを使ってボランティア情報を流通させるシステムを作った男性や、このようなITからボランティア情報を手に入れ被災地で活動し、そのまま被災地に引っ越すことに決めた女性もいます。
震災直後にボランティアとして駆けつけた人、そしてボランティアとして長期滞在した人は、独身者が多かったといいます。この事実には独身者には既婚者に比べて「ほだし」がないから自由に動けた事が考えられるといいます。興味深いことですが「ほだし」は絆と書きます。絆(ほだし)がない独身者は震災によりどう行動するかという人生における選択を迫られました。自由に動けることを利用してボランティアに動く独身者もいれば、家族の絆を求めて婚活をした人もいます。そして何も動かなかった独身者もいます。動いた独身者と動かなかった独身者には大きな違いはありません。彼らにとって震災は自分の大切な物は何なのか、自分の根っこはどこに繋がるかを見つめ直すきっかけであり見つめ直した結果で行動に違いが出ただけなのです。
この講演を聴き当時の日本の状況を思い出しました。「絆」があらゆる場面で多用されましたが、これは行動が出来ない代わりに心は繋がっているという事を強調しすぎた結果だと思います。また、私たちは震災により家族や友人・恋人とのつながりの大切さを認識しました。この認識を認識のままで終わらせるのではなく新たなつながりを形成しようとすることも大事なのではないでしょうか。社会が一人でも生きやすい環境になっているからこそ、大変な時には互いに助け合おうとつながる事が求められるのだと思います。次にほだしの無い独身者だから出来た事も多かったことにも気づかされました。しかし彼らの行動が報道で全て取り上げられるわけではありません。だからこそ私たちは報道の裏にある多くの声を聴こうとする姿勢が必要であると思いました。
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。

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