『社会を知る講座~金融のプロが教えるお金の教養~』(NewsPicks特別コラボ企画)の開催レポート

キャリアセンター

2023/12/20

キャリアの立教

OVERVIEW

立教大学キャリアセンターは、2023年11月28日(火)に『社会を知る講座~金融のプロが教えるお金の教養~』を開催しました。『社会を知る講座』は、ビジネス社会で起こっている変化やこれからの働き方をテーマに、その第一線で活躍する社会人から話を聞けるスペシャルプログラムです。

今年は【NewsPicks】とコラボ!

昨年はBSテレビ東京『日経スペシャル マネーのまなび』とコラボし『社会を知る講座~社会に出る前に知っておきたいお金の知識~』を開催。多くの学生が参加する大好評プログラムとなりました。金融教育プログラム開催2年目となる今年はさらなるパワーアップを目指し、株式会社ユーザベースが提供するソーシャル経済メディア【NewsPicks】と特別にコラボ。金融のプロフェッショナルからお金に関する知識が学べるスペシャル講座として、『社会を知る講座~金融のプロが教えるお金の教養~』を開催しました。

金融のプロフェッショナルであるプロピッカー2名が登壇!

馬渕 磨理子 氏

日本金融経済研究所・代表理事 経済アナリスト

京都大学公共政策大学院 修士課程を修了。トレーダーとして法人の資産運用を担う。その後、金融メディアのシニアアナリスト、FUNDINNOで日本初のECFアナリストとして政策提言にかかわり、現職。TV番組「フジ #LiveNewsα」「読売 #ウェークアップ」のレギュラーなど、メディア出演も多数。

清水 大吾 氏

『資本主義の中心で、資本主義を変える』著者

京都大学大学院を卒業後、日興ソロモン・スミス・バーニー証券(現シティグループ証券)、ゴールドマン・サックス証券で活躍。社会の持続可能性を高める資本主義のあり方を模索し、啓発活動を推進。 23年6月に同社を退職、9月に『資本主義の中心で、資本主義を変える』(NewsPicksパブリッシング)を出版。

高橋 智香 氏(モデレーター)

株式会社ユーザベース NewsPicks編集部 記者・編集者

早稲田大学政治経済学部卒。大学3年生から株式会社ニューズピックスで長期インターンを始め、NewsPicks編集部にて取材、執筆、編集を経験。2020年に同社へ新卒として入社し、広告事業部にてスポンサードコンテンツの編集を担当。2023年春から現職。

金融のプロが教えるお金の教養

まず、清水氏より「資本主義社会における投資の意義」についての説明がなされました。

資本主義の根本原理は[所有の自由×自由経済]だが、いつの間にかそこに[時間軸の短期化][成長の目的化][会社の神聖化]というオマケがついてきた。[時間軸の短期化]について、アワビを例に説明すると、アワビは3年かけないと成貝にならないが、誰かが固有のサイクルを無視して3年に満たない小さなアワビを獲ってしまうと、他の人も小さなアワビを獲らざるを得なくなり、最終的にはアワビを獲ること自体ができなくなってしまう。このように、本来待つべきものを待てなくなってしまっているのが[時間軸の短期化]である。[成長の目的化]については、資本主義の根本原理は[所有の自由×自由経済]であり、成長が目的だとは定義されていない。しかし、資本主義がもたらす競争原理と、人間の競争本能が呼応し合って成長が目的化し、いつの間にか成長が全ての問題を解決するかのような錯覚を引き起こしてしまったのではないだろうか。[会社の神聖化]については、会社の規模が大きくなり、社会に対して大きな影響を及ぼすようになったため、「会社のため」という美名のもとに個々人の幸福が搾取されている状況があるのではないだろうか?このように、さまざまな問題を抱えているのが現在の資本主義である。また、フランスの経済学者トマ・ピケティが唱えた不等式「r>g」からもわかるように「投資家の方が労働者よりも儲かる」という構造も、資本主義が持ち合わせている根本的な原理原則である。

※「r」は資本収益率、「g」は経済成長率を示す。
このような状況を是正するには「労働者であっても投資をする」、つまり、資本家の側面を持つことではないだろうか。 そのため、資本主義社会に生きる我々にとって「投資」は非常に重要な行為であり、「投資」をする理由もここにあると考えている。

では、投資家の仕事とは何なのか?私は「相手(企業)を信じて自分の大事なもの(お金)を賭け、相手を信じて待ち続けること」であり、社会にとっても重要な仕事だと考えている。しかしながら、日本では「売った、買った」「FXだ、ビットコインだ」といった投機のことを投資だと勘違いしている人が圧倒的に多い。また、投資には不確実性が含まれるため「絶対に儲かる」という話は存在しないが、このことの理解が浸透していないため、あらゆるところで金融詐欺が勃発してしまっている現状もある。そして、この不確実性には幅があり、何に投資するかによって幅は変わってくる。例えば、銀行預金は不確実性は低いがリターンは小さく、株式投資は不確実性は高いがリターンは大きい。この不確実性の高さから株式投資をギャンブルと呼ぶ人がいるが、そうではないという正しい認識をしていただきたい。

改めて、資本主義社会に生きる我々にとって「投資」は非常に重要な行為であり、投資とは「相手(企業)を信じて自分の大事なもの(お金)を賭け、相手を信じて待ち続けること」だということを、みなさんには是非覚えていただきたい。
続いて、馬渕氏より「資産をつくるとは?時代を生き抜くための金融リテラシー」というテーマで説明がなされました。
現在、日本を含む先進諸国は成熟した資本主義社会に入ってきており、経済的豊かさと幸福度がリンクしなくなっている。このように、資本主義社会の限界が問われるようになってきたのが現代社会であり、サステナブルな考え方であるSDGsが幸福度と親和性を持ち始めたというのが、最近のトレンドである。このような社会においては、「努力してしか得られない時の達成感」や「積み重ねた先にしかない信頼関係」といったものをビジネスにできた企業こそが、GAFAに代わる次なる覇者になるかもしれない、そんな風に経済動向を観察している。

ここからは、そもそも金融とは?ということについて話をしていきたい。金融とは何か?それは、お金を融通するということ。臨機応変にうまく対処できるという意味で「融通が利く」という言葉があるが、お金をうまく融通してあげるというのが金融の役割であり、お金の余っている人がお金の不足している人に、お金を貸したり投資したりすることが、金融の基本である。金融は経済を発展させていくうえでも必要不可欠な存在であるが、その根底には何らかの投資家が必ず存在しているのである。
続いて、世界の金融市場に目を向けてみたい。米アップルの時価総額が約340兆円であるのに対し、日本企業が数千社も含まれる東京証券取引所の時価総額は約700兆円である。つまり、米アップルはたった1社で東京証券取引所の半分の時価総額を有しているというのが、世界の金融市場である。では、時価総額が大きいと何ができるのか?例えば、攻めの企業買収や経済圏の拡大を図ることができる。つまり、世界の金融市場では時価総額が武器化(時価総額資本主義)しているのである。冒頭で成熟した資本主義社会という話もしたが、「資本主義社会の限界を問う考え方」と「時価総額資本主義」という、相反する2つの価値観を内包しながら進んでいくのが金融市場なのである。

もう一点、「なぜ金融市場においてアメリカが最強なのか?」という根底の説明もしていきたい。その答えは「ドル基軸通貨」の世界が構築されているからである。アメリカ以外の国は必死にドルを稼ぐ。ドルがなければ輸入の際にドルを支払うことができず、国は破綻するからだ。しかし、各国が必死に稼いだドルで行っているのは「米国債の購入」であり、最終的には、世界中の資金がアメリカに還流する流れとなっている。この「ドル基軸通貨」の世界においては、アメリカは世界の銀行であり、それ以外の国はただの企業と同じ位置付けになる。それは、イデオロギーの異なる中国やロシアであっても同じである。アメリカに戻ってきたドルは、アメリカの経済と企業の繁栄に寄与し続け、GAFAといった企業が成長していくサイクルができ上がる。その企業にしっかりと投資をしているのがアメリカ国民であり、ここが今の日本との大きな違いである。つまり、経済や企業の拡大とともに国民も成長をしている社会がアメリカなのである。

いま22歳なら、資産形成何から始める?

講義に引き続き、モデレーターの高橋氏を加えて「いま22歳なら、資産形成何から始めますか?」というテーマでトークセッションが行われました。

トークセッションの様子

清水氏 とにかくやってみることが大事だと思っているので、まずはNISAの口座を開設する。では、何を買うのか?本当は頑張っている日本企業の株を買いたいが、22歳だとまだ企業のことをよく分かっていないので、代わりに頑張っている日本企業の株を買ってくれる投資家にお願いをする。つまり投資信託を購入するという選択をすると思います。その際、リターンなどの表面的なところを見るのではなく、誰がどんな哲学を持って企業を選んでいるのかという点に着目し、「この人に託したい」と思える人を見つけて、その投資信託を購入すると思います。

高橋氏 「NISA」という言葉が出たので、「そもそもNISAってなんだろう?」という説明をさせてください。NISAとは少額投資非課税制度のことで、日本における株式や投資信託の投資金における売却益と配当への税率を一定の制限の元で非課税とする制度です。来年から導入される新NISAでは、年間投資枠の拡大や、非課税保有期間の無期限化などが図られます。金融のプロであるお二人から、NISAに関する補足はありますか?

清水氏 投資をするのであれば使わない手はない、そういう制度だと思います。


馬渕氏 今、紹介があったように、投資を普通にやっていくと、出た利益に対して20%の税金がかかってしまうんですね。それが投資をするうえでの足枷になってしまうので、「出た利益分もしっかりと自分のものにしてください」というのがNISAです。ですので、なんらかの投資を始める際には、NISAの口座で行うというのが、まずは良いと思います。
本日は、65歳までに3,000万円作るためにはという資産データを作成してきたので、みなさんと一緒に見ていきたいと思います。みなさんは若い世代なので、時間を味方につけましょう。例えば20歳だと65歳になるまで45年間あるので、実はすごく時間を味方につけることができます。投資にはさまざまな利回りがありますが、例えば利回り7%の場合には、月々7,910円の投資で65歳までに3,000万円を作ることができます。「月7,000円もキツイな」と思った方もいるかもしれませんが、今は100円からでも投資信託を購入することができるので、「まずは少額でも良いので始めてみる」というのが、みなさんのためになるのではないかなと思います。

Q&Aセッション

Q&Aセッションの様子

その後の質疑応答では、「30代までの限られた収入の中で『資産形成のための投資』と『将来の自分のスキルのための自己投資』とどちらにお金をかけたほうがいいか」や、「日本政府がNISAで海外投資を推進してしまうことで、日本企業への投資が減るのではないか。日本企業の投資も『企業期待』の意味を込めて投資を行うべきか」といった内容まで、会場から約70もの質問が寄せられました。


参加満足度は【91.6%】!

学生のプログラム参加満足度は91.6%と、難しい内容にもかかわらず非常に高い結果となり、学生からは「日本経済が危機に陥る中でも、清水さんのように日本を応援する行動は大事だと思いました。」「馬渕さんの新NISAの説明が非常に分かりやすく、実際にNISA口座を開設してみようと思いました。」といった感想が寄せられました。

株式会社ユーザベース NewsPicks事業から

200名超の学生が参加

今回は「お金の教養」をテーマに講座を企画させていただきましたが、高校生から大学院生まで多くの方にご参加いただき、また講座内でも多くのご質問を頂戴し、テーマに関する学生のみなさんの関心の高さを感じました。「お金」について学ぶことは、それを通じて自分の生活や社会について、深く考えるきっかけにもなります。講座内ではプロピッカーから「自分をバランスシート(貸借対照表)で考える」というお話がありました。直接的なお金の投資だけでなく、将来の自分のスキルや知識のための勉強などの自己投資も含め、ご自身の「資産」をどう活用していくか?今回の講義が、これからの学生生活の過ごし方や卒業後のキャリアについて考える一助になれば幸いです。

※本プログラムには立教大学関係校の高校生も参加
立教大学キャリアセンターから
キャリア、人生を考える上でお金について知ること、理解を深めることが必要だと考え、昨年度は日経新聞様、今年度はNewsPicks様とコラボレーションし専門家をお招きした講座を開催しました。来年度以降も、大学内外の様々なリソースを活用しながら「キャリアの立教」ならではのキャリアとお金にまつわる講座を実施し、学生の視野を広げるきっかけにしていきます。


『社会を知る講座』は、就職支援にとどまらず、学生一人ひとりのキャリア形成を本気で考える “キャリアの立教” だからこそ実現できるプログラムです。

※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。

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