キャリアを支える「生きた学び」と「人脈」

プリンスホテル執行役員、1986年社会学部観光学科卒業  徳永 清久 さん

2016/08/04

立教卒業生のWork & Life

VOL.30

OVERVIEW

グランドプリンスホテル赤坂の再開発プロジェクトに携わったプリンスホテル執行役員、徳永清久さんにお話を伺いました。

ホテルマンとして30年。

「赤坂プリンス クラシックハウス」として 新たにオープンした旧「赤プリ旧館」の前で。 左奥はオフィス・ホテル棟

「赤プリ」の愛称で親しまれたグランドプリンスホテル赤坂の跡地に7月27日、話題のランドマーク「東京ガーデンテラス紀尾井町」が誕生した。オフィスや商業施設、住居で構成される複合市街地で、その中核をなすのがホテル「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」だ。

「複合市街地という環境の中で、自然とアートが感じられるデザインと先進機能を活用したサービスを提供しながら、都指定有形文化財の旧グランドプリンスホテル赤坂旧館も保存して歴史を継承していく。新しさと伝統を両立させた唯一無二のホテルを目指しています」

青空にそびえ立つオフィス・ホテル棟を見上げてこう語るのは、再開発プロジェクトに携わったプリンスホテル執行役員の徳永清久さんだ。現在は、東北、長野、群馬エリアで同社が運営するホテルや、スキー場、ゴルフ場などの統括として采配を振るっている。

実習でベルボーイ、ホテルマンの意識調査…… ホテルの「リアル」を垣間見た

箱根プリンスホテル(当時)にて (大学3年次/右端)

この道に進んだきっかけは高校時代のアメリカ留学だった。図書館でホテルマネジメントについての本に触れ、観光学科OBとの話により、観光に興味を持った。そして立教の社会学部観光学科(現観光学部観光学科)へ。すぐさま名物サークル「ホテル研究会(ホテ研)」に入会する。

「活動が盛りだくさんで、とにかく忙しかった。あのころのホテ研は、体育会系文系サークルなんて言われていたほどでした(笑)」

夏休みは、ホテ研の活動の一環でホテルでアルバイトを兼ねた1カ月間の実習に参加。箱根プリンスホテル(現ザ・プリンス箱根芦ノ湖)で3年間にわたりベルボーイとして汗を流した。

「話題の人物が次々とやってきて刺激的だった。箱根という国内屈指の観光地の魅力をどう発信し、どう集客につなげるのか、その手法を間近で見られたのは、かけがえのない経験になりました」

ゼミは原勉教授に師事。印象深かったのは、ホテルで働く人の意識調査だ。実際にさまざまなホテルに出向いてアンケートを回収する中で、それぞれのホテルの企業風土のようなものを垣間見ることができた。

ゼミに、サークルに。真面目な学生だったかと思いきや「ほかの授業はあまり出てなかったなぁ」と苦笑い。しかし、興味をかき立てられる授業とあれば欠かさず出席したという。

「なぜ観光なのかという基礎を学んだ『観光概論』は興味深かったし、後に多摩大学長になられた野田一夫先生の『都市問題特講(都心論)』は、外国大使館がどの区に多いかを調べる課題を通して、街の成り立ちを体験できる授業でした。そして、『ホテル会計論』で学んだ基礎は、今も仕事をしていて頭をよぎることがあります」
そして、こう続ける。

「観光業界の現場に詳しい先生が多かったので、学問としてだけでなく観光やホテル事業のリアルを見ることができた。この『生きた学び』は、今も私の糧になっています」

誰もが気軽に楽しめるホテルを── その思いを胸に、プリンスホテルへ

ホテル研究会、新入生歓迎パーティ (後列右)

徳永さんが社会へ出ようとしていたまさにそのとき、世はバブル前夜で内需拡大が騒がれていた。とはいえ勢いがあったのは重厚長大な業種や産業技術といった分野で、観光業は「世の中からは一段下に見られていたかもしれない」と徳永さんは振り返る。そんな中で、プリンスホテルを擁する西武グループは、観光事業の拡大を標榜していた。

「これからの時代のホテルは、誰もが気軽に利用できるように間口を広げることが求められるはず──。そう考えた僕にとって、ホテル、旅館、リゾートなど多角的に事業を展開するプリンスホテルはとても魅力的でした。それに授業やサークル活動を通じ、大学にいながらにしてホテルビジネスのこれからを実感できたのは大きかった」

入社後は高輪、軽井沢、広島のプリンスホテルに勤務し、各ホテルの総支配人といった要職を歴任。2010年からは執行役員として経営陣に加わった。ホテルマンとして突っ走ってきた30年で、日本の観光事業を取り巻く環境は様変わりした。景気の動向や大災害で大きな打撃を受けたことも少なくない。仕事で疑問があったとき、壁にぶつかったとき、徳永さんはホテル業界で活躍する立教の諸先輩や同輩の元を訪ね、アドバイスを請うてきたという。

「立教出身というだけで会社の垣根を超え、話を聞いてくれる。ありがたいですね。この素晴らしい人脈が、立教で得た一番の財産です」

リゾート地など、まだ知られてない 「日本の魅力」を発信し、観光大国を目指す

卒業式の日に池袋キャンパス本館前で (左から2番目)

現在は軽井沢を拠点に、統括エリアの総支配人らと連携し、数年後に施設やサービスがどうあるべきかというグランドデザインを描き、検証し、実行に移す。それが徳永さんのミッションだ。

「目指しているのは、社員と共に考え抜いたサービスをお客さまに喜んでいただくこと。こうして生まれたサービスや施設が形となって残っていくことは、ホテルマンのやりがいであり、喜びでもあります」

2019年にラグビーワールドカップ、そして翌20年には東京五輪開催と、観光業界にはこれまでにない追い風が吹いている。だが、実は五輪が終わったその後に、日本が観光大国になれるかどうかが試されるという。

「東京はもちろん、いわゆる『Greater Tokyo Area』と称される首都圏、そして大阪、名古屋、札幌、広島、福岡といった地方都市や、軽井沢をはじめとするリゾート地もその魅力を広く発信し、ファンを増やして継続的な集客につなげていく。それが観光事業のトップランナーである当社が掲げるビジョンであり、私自身の課題でもあります」

先輩として学生たちにメッセージは?と言葉を向けると、「遊んだほうがいいよ!」と少しおどけながらこう続けた。

「SNSなどのバーチャルな世界だけでなく、リアルの場で誰かとフェイス・トゥ・フェイスで向き合うことから得られる体験は貴重。それはきっと、若い皆さんが社会に出てから糧となり財産になるはず」

最後に一言。「語学はしっかり勉強しておくべき。私自身の反省も込めてね(笑)」

プロフィール

PROFILE

徳永 清久さん

株式会社プリンスホテル 執行役員
東北エリア統括総支配人、長野・群馬エリア統括総支配人

1986年3月、立教大学社会学部観光学科卒業。
同年4月、株式会社プリンスホテル入社。
1993年より広島プリンスホテルの開業準備に携わり、2002年、広島プリンスホテル支配人。
2006年、軽井沢プリンスホテル・軽井沢浅間プリンスホテル総支配人。
ザ・プリンスさくらタワー東京・グランドプリンスホテル高輪・新高輪の総支配人を経て、2010年、プリンスホテル執行役員就任。
2014年から紀尾井町プロジェクト開業準備室にて、東京ガーデンテラス紀尾井町のホテル開発に携わり、2016年より、現職。

※写真:自然あふれる軽井沢プリンスホテル。 今後は「スキーやゴルフなどの時間を つくり、リアルなリゾートを 体験しようかな」という徳永さん。 3年前、中型バイクの免許も取得したそうだ

※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。

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