チャプレン長メッセージチャペル

建学の精神

チャプレン長 広田 勝一

皆さん、まず昨年からの新型コロナウイルス感染症により、逝去された方々、今も困難な中にある方々を覚えてお祈り申し上げます。立教大学は、感染拡大防止対策を考慮しつつ、今年の入学式を行いました。昨年は残念ながら対面での入学式は中止となりました。しかし1年遅れましたが、2020年度入学者対象の入学式が4月24日に行われ、改めて喜びの時を持つことができました。こうした入学式を通して大学の思いを伝えることができたことを嬉しく思います。立教大学にようこそ、心から歓迎します。

私たちの立教は、今から162年前に、聖書の教えに従って、真理と愛の道を伝えるためにアメリカから、日本に来られた一人の宣教師によって、創立されました。この宣教師の名は、C.M.ウィリアムズと言います。米国聖公会の聖職で、後に主教となりましたので、私達はウィリアムズ主教と呼んでおります。築地居留地の一角に「立教学校」が誕生したのは1874年、147年前です。もうすぐ創立150周年を迎えます。当初生徒は5名とも8名とも言われ、聖書と英語を教える小さな私塾でありました。しかし生徒は徐々に増えていくことになります。この小さな学校が「立教学校」と呼ばれました。創立者ウィリアムズ主教は、学校のみならず日本聖公会という教会の礎を築いた人です。その生涯は、「道を伝えて己を伝えず」と称され、出会った人々はその謙虚さと高潔な人格に感銘を受けてきました。聖公会とは、英国国教会、イングランド国教会を源流として米国を含め世界に拡がるキリスト教会です。世界の聖公会の大学連盟もあり、約120大学の加盟があります。

皆さんにとって立教の建学の精神は、まず入学式において感じられるかもしれません。例年、立教大学の入学式では十字架そして校旗を先頭にプロセッションがあります。校旗をみれば、紫に白地で十字が描かれています。まさにこの十字はイエス・キリストを指し示す十字架です。イエスが歩まれた道、それは苦しみ、困難の中に生きる人と共に歩む愛の道であります。さらにイエスは、最後まで神への信頼を貫き通す正義の道を示されたお方です。こうした愛と正義の道を歩み続け、私たちに本当の自由の道を開こうとされたお方が、イエスであります。私たちの校旗は、私たちに様々な困難、苦しみにぶつかっても、しっかりとそこに踏みとどまりつつ、愛と正義の道を歩むように求められています。私たちの立教の創立者であるウィリアムズ主教は、こうした「道」を伝えることを使命としていたのであります。
ここで立教の公的な楯のロゴマークにも注目してください。学生証、パンフレット、封筒を含め多くのものに用いられています。このマークの中心には本があります。この本は学問の象徴にも捉えることができますが、本の中の本、つまりそれが聖書であります。その聖書が開かれており、そこにラテン語で「PRO DEO ET PATRIA(プロ デオ エト パトリア)」と記されています。訳せば「神と国とのために」となります。この標語はライフスナイダー主教に負うものですが、「神と人々、世界のために愛を持って仕える、それが立教です」と言わんばかりであります。こうした本の上に、「立」という言葉があります。聖書の上に、聖書を土台として立教は存在するわけです。換言すれば立教の使命は、普遍的真理を探究し、この世界、社会のために働く者を生み育てることにあります。

90数年前、ある学生が母校の立教を紹介する一文を受験雑誌に次のように投稿しています。「立教の校舎前の芝生を囲む図書館とチャペル、この二つこそ知識の母、魂の母である。立教の自由の扉は常に開かれている」と。90数年前の先輩の言葉が今年も思い起こされます。この知識の母と称された図書館は、7年前、展示館として生まれ変わりました。そこにも脈々と流れる「建学の精神」を見ることができます。そして魂の母は、まさに建学の精神の具現化のチャペルの存在にあります。

新座キャンパスに入ると、まずチャペル(立教学院聖パウロ礼拝堂)が皆さんを迎えています。礼拝堂の正面の大きな十字架は、あたかも天と地が一つに結びあわされている思いを抱かせます。そして池袋キャンパスにあるチャペル(立教学院諸聖徒礼拝堂)は、キャンパスの中でも本館、そして旧図書館に次いで建てられています。昨年で竣工100年となりました。このように両キャンパスに入れば、まずチャペルがあります。そこでは日々、世界の正義と平和のため、そして立教学院のため、そして皆さんのために祈りが捧げられています。これが立教です。

最後になりますが、入学された皆さんは人生の目的をどこにおくのでありましょうか。どうぞこの数年間の学びの中で、それが神を知ること、つまり普遍的真理探究にあるということを学び取ってもらいたい。イエスは「わたしは道であり、真理であり、命である」と言われました。この道、真理、命を知る。ここに私たちの目的を見出したいのであります。創立者ウィリアムズ主教の心(思い)もここにあります。どうぞ真理探究の場、時として、与えられた大学生活を過ごしてください。「真理があなたがたを自由にします。」

(2021年4月)

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