立教大学

研究科委員長メッセージ

21世紀社会デザイン研究科 研究科委員長 萩原なつ子 教授

「社会デザイン学への招待」

 21世紀に入り,環境や地域紛争など前世紀からの宿題に加えて,新しい形の貧困や社会的排除(social exclusion)が世界と日本の大きな課題となっています。その解決のため,政府行政・企業・NGO/NPO等の組織はそれぞれどのような役割を担うのか。また,近年,重視されることの多いセクターの垣根を越えた「協働」は,どこまでの有効性と可能性を期待できるのか。異なる価値観を持つ人々が共生していくための知恵や仕掛けや仕組みとしての社会と,そこでの人々の参加・参画の仕方を,これまでの常識にとらわれず,根底的という意味でラディカルに革新(イノベーション)していくことが,いま求められ始めています。そうした思考と実践のありようを,私たちは「社会デザイン」と呼んできました。

 そもそもdesignとは,日本において考えられてきたような製品やサービスの単なる設計や絵を描くことに留まるものではありません。それは,先に述べた社会の仕掛けや仕組みを大胆に組み替えていくことであり,「いまここではないどこかとなにものか」を求め続ける一連のプロセスでもあります。それは,まだ十分に可視化されてはいないものの,確かに存在感を強めているネットワーキングとかシナジー状とかリゾーム状といったイメージと深く結びつくと同時に,何より「市民社会」の創造という長年の「宿題」とあらためて向き合い続ける問いでもありました。

 本研究科は,一方でこうした社会デザインをめぐる「鳥の眼」を確実に育んできました。他方,非営利・公共分野と関わる社会的な活動諸組織の運営・経営人材を輩出する日本初のビジネススクールとして,NGO/NPO・危機管理・ネットワークはもとより,コミュニティデザイン・平和構築・安全保障,さらには,CSRやソーシャルビジネス(コミュニティビジネス,社会的企業)など事業性豊かな領域にも及ぶ具体的課題へのアプローチを通じた「虫の眼」もまた,国内外の多様なネットワークを活かして実践的に展開しています。

 流行の兆しを見せ始めているちょっといいアイデアやスキルやマニュアルに留まることなく,変化を課題の解決へ向けて前に進め続け,その変化を現実のものにしていく粘り強いプロセスを歩むため,理論的・構造的な追究はもとより,現場と往復し,当事者性と内発性をそなえた実践的な研究を重視したいのです。他者(の生活)と出会い,交信し,関係性を編み直すなかで当事者性にも出くわす。そんな更新作業(対象化)の連続はダイアログとしてのデザインであり,デザインをデザインし直すことなのではないでしょうか。


 いうまでもなく,本研究科の知的営為の根底にあるものは,地域や生活といった足元,根元からの人びとの営みです。夢を現実のものにしたいと格闘する人たちが,「後戻りできない市民」として,多様な経験を「継承」しつつ担ってきた歴史をふまえ,新たな方法論と表現を獲得していくことこそ,大学の社会的責任(USR)でもあるはずだと思っています。


 皆さんには,おそらく他に類を見ない場として展開しつつある本研究科のコミュニティをまずは回遊していただき,教員とのやりとりや院生同士の関わりのなかから,具体的ながら決して単純なスキルにとどまることのない実践的研究力と新たな職能を自らのうちにぜひ育てていただきたいと思っています。研究科のリソースはそのためにあるのですから。

21世紀社会デザイン研究科委員長 中村陽一

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