修了生紹介

細野 茂子さん(2010年修了)

細野 茂子さん

立教大学文学部英米文学科卒業後、商社に入社。大企業での女性の仕事の理想と現実に直面し、もっと自分の頑張りが目に見える仕事がしたいと一念発起。それまで趣味でしかなかった写真を生業にするために東京写真専門学校夜間部に入学。初めて働きながら学ぶハードな2年間を経験。
念願のフリーランスフォトグラファーとなり、雑誌、広告、CDジャケットなどで、人物撮影を手掛ける。その後、個人事務所を法人化し、撮影専門のレンタルスタジオの運営事業に芸能界に特化したニッチな写真館業務も加わり、今年で20期を迎える。
仕事の100%がフィルムからデジタルに移行したことを契機に、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科に入学。再び働きながら学ぶ日々の末、2010年MBA取得。大学院で修了研究として発表したビジネスプラン『わんにゃんスターフォト』を実現するべく2011年に新たに株式会社トップオフハートを起業。http://wannyan-photo.com/

大学院進学を決めた理由、動機

私は、写真撮影の個人事務所を法人化した段階で、照明設備、カメラ機材を増やし、レンタルスタジオも始めていました。その時点ではカメラ機材は一生使えるものと思っていましたが、写真界でもデジタル化が進むと、それまでのフィルムという記録媒体は一気に衰退し、フィルムやカメラのメーカーはもちろん現像所、印刷会社の劇的なイノベーションを目の当たりにしました。

写真撮影の会社においても、それまでと全く同じ仕事をするには、すべてのカメラ機材の入れ替え、容量の大きい最新版のパソコン、ソフト導入が必要不可欠となりました。同業他社も含め、私の事務所でも設備投資か、撤退かという選択を迫られる状況に直面しました。
「同じ仕事をするための投資」の是非の答えが出せないまま、目の前にある仕事をこなすためには、ただちに決断しなくてはなりませんでした。結果的に設備投資を選択したことがきっかけで、私は解らないことをそのままにしないためにも、一からビジネスを学び、思い切って自分自身もチューンアップをしようと、進学を決めました。

Q 立教大学大学院ビジネスデザイン研究科を選択した理由

立教大学の出身ということもあり、働きながら学ぶハードな日々を送るなら、懐かしい図書館やチャペルのある池袋キャンパスで学びたいと思い資料を取り寄せました。 研究科の募集パンフレットには「アントレプレナーシップを重んずる」という文言が書かれていましたので、同じ志を持った同期生の中で自分の起業家精神の素養がどれだけあるのか、その度合いを測ってみたいと感じました。

またビジネスデザイン研究科の修了要件には、修士論文以外にビジネスプランも設けられていましたので、私は受験する前から、ビジネスプランで修了したいと決めていました。

一番不安だったのは、仕事をしながら学業を修められるかどうかという点でした。私の仕事はスタートが朝5時からのこともありますし、終了時間が深夜25時と表記されている場合もあり、毎日のスケジュールが非常に不規則であり、これが心配の種でした。ですが、ビジネスデザイン研究科には昼間受講できる科目や、夏冬休み直前に数日間の集中講義もありましたし、必修科目の曜日が選べるなど社会人院生に非常に配慮がありました。こうした科目を上手に組み合わせて履修すれば、学校に行かなくてもよい曜日も作れることがわかり、これなら通えると判断をしました。

本研究科で何が習得できたか、何を得られたか(知識、スキル、その他大学院生活から得られたもの)

私が研究科で得られたものの一つ目は、ビジネスの「共通言語」が理解できるようになったことです。最初の2カ月は言葉の通じない外国に来てしまったかと慌てましたが、それぞれの科目で学んだ知識が次の科目の理解を深めることになり、次第に共通言語が何たるかを学びました。ビジネスの理論や言葉の意味を知るだけでなく、発言や提案には、必ず根拠が必要で、その根拠には確固たるデータの裏付けなくてはならないという大原則も叩き込まれました。

二つ目は、「企業の常識から取り残されている』という不安の解決です。

IT化に限らず、中小企業では、大企業では当たり前の新しい方法を取り入れてないような企業も多いと思いますが、授業の中でも、同期生の話からも便利なITツールや、最新の経営方法などを学ぶ機会に恵まれ、実務にいかすこともできました。

三つめは、年代、職業の異なる同期生との出会いです。グループワークも多く、自分の得意分野を教えあったり、出張で忙しい人の分をフォローしたり、時には本気の議論が白熱することもありました。2年間という短期間とは思えないほどよく学び、よく飲み、よく語り合った濃密な院生生活を過ごせました。遠慮なくビジネスの相談ができる新しい友人が大勢できたことは、私にとって最大の収穫でした。

大学院での勉強は現在の仕事、今日のあなたにどのように役立っているか。

私は、大学院の修了研究のビジネスプランでは写真の新規事業をテーマとして研究し、その過程で集めたデータや資料を活かして、修了後、提出したプランをもとに実際に新会社を起業しました。
大学院で学んだすべての知識とスキルを使って、いわば私のビジネスプランが現実の社会で通用するのかどうか実験中ということになります。

さらにこのプランの実行にあたり、大学院の同期の仲間たちがアドバイスをしてくれています。それはまるで院生室でのグループワークが今でも続いているかのように夜中にメーリングリストで意見が交換され、毎週末に集まっては、それぞれ得意ジャンルの知識を提供してくれています。このような状況は、私がビジネスデザイン研究科を受験した時に、思い描いていた理想の形にほかなりません。

また、大学院での学びの経験で「変えないこと」と「変えるべきこと」とが自分の中で明確になりました。例えば、右脳型の湧き出る発想を実行することは「変えないこと」。自分が何でもやってしまおうという独りよがりのクリエイター型のビジネス感覚は、経営者として「人を巻き込むこと」に「変えること」、というように、大人になって実現できた自分自身チューンアップを素直に今後のキャリアに生かしたいと思っています。

今後のキャリアプラン、展望

長年取り組んできた写真という表現手段は、デジタル化により画像コンテンツとして、容易に送信できたり、複製や加工したりも可能になりました。こうして便利になった一方で、死後50年認められている写真の著作権の不正利用される危険も多くなり、権利を守るのか、権利を有効利用するか、写真業界団体も個々の写真家も決めかねている現状があります。今のところ音楽著作権のように厳しい管理はまったくできていません。

今回ビジネスデザイン研究科で発表したビジネスプランは、その著作権の有効利用をテーマに構想した事業で、構想した通りに本当に新会社を起業できたことは、まさに私のキャリアプランの実現にほかなりません。これがビジネスとして良い結果を出せるのか、さらに写真家発の著作権有効利用ビジネスが業界に受け入れられるのか、両方の実験でもあります。

もちろん、良い結果を出してビジネスとして成功させることが目標ですが、結果だけでなく、ビジネスの過程を楽しみながら、まずは3年この実験的企業に注力していくつもりです。そしてこのビジネスの経験を通して、写真著作権のよりよいスタンダード作りに寄与できれば幸せです。