研究計画・方法(平成16年度)


1.研究分担者、および、予定している研究協力者を中心としたシンポジウムを開き、当該テーマに関する研究の現状とその成果と達成度について整理する。

 

2.上にもとづいて、それぞれのフィールドに関するデータの集積と分析をおこなう。調査地は、海外9箇所、国内10箇所を予定している。特に各地でおこなわれていた伝統的捕鯨についての情報は、まだまだ未発掘の状態にある。この研究の作業によって新たな事例が発掘されることも十分予想されるので、この作業は4年間継続する必要がある。この作業の継続性を保障するためには、それにふさわしい人材ができるだけ継続して従事する必要があり、そのための研究補助者の人件費と器材や図書の購入費は確保したい。

 

3.国内と海外の現地調査をおこなう。学際的な調査なので、特に研究分担者のグループ分けはせず、それぞれの調査には、かならず複数の分野の研究分担者が参加できるようにする。異分野の分担者でひとつの対象を観ることの重要さは、「歴史的前提」の調査で実証済みである。国内調査には1回に78名ほど、海外調査は56名を想定している。

 

4.調査の結果は、研究会などを通じて研究分担者全員で共有するとともに、多角的に検討しつつまとめる。その成果は年度ごとに本学日本学研究所の年報に掲載するほか、その概要を同研究所のホームページにも載せて、広く公開することとする。こうした定例の研究会のほか、国際シンポジウムや公開講座を開き、積極的に成果の公開に努める。

 

5.シンポジウム開催に当っては、本学のアジア地域研究所や、東アジア地域環境問題研究所などとの共催なども念頭においている。

 

6.全体の成果については、まず報告書を作成し、資料提供者などにはその成果をフィードバックする。それとともに、成果自体が個性的で興味深いものになると想定されるので、別に、論文集などの形で出版することも考えたい。

 

7.研究分担者の役割分担は次の通り。

千石英世は海洋小説『白鯨』の翻訳・刊行で知られており、当然のことながら、英文の捕鯨関連資料や文献の収集を行う。山浦清・後藤明・藤田明良は、それぞれ、考古学・民族学・歴史学の分野において漁具や漁業に関わる研究を進めつつ、資料や文献など収集もおこなう。

古代東アジア史の研究者である深津行徳は、古代史・資料から捕鯨に関するデータ集積を行う。中世史研究者の高橋公明と蔵持重裕、中世文学を研究する小峯和明は、それぞれ歴史と文学で研究分野を異にしながらも、海洋民や遊行する人々など移動を生業の基礎とする人々の実態や、庶民の間で流通する情報などについての調査研究を進めるなかで、近世捕鯨の先駆的形態とされるイルカ漁が、中世においてすでに、かなり行なわれていたことを、史料に基づいて把握している。また、近世史の渡辺憲司と荒野は、「歴史的前提」に関わる調査以外でも、近世の捕鯨に関する史・資料(絵画史料を含む)にしばしば出会っている。特に渡辺の前任地の山口県下関市は、捕鯨の基地としても知られており、その頃から彼はこのテーマに強い関心を持ち続けてきた。日本の捕鯨は近世初頭に、和歌山県太地附近から始まるという通説は、かならずしも実証的に確定されたものではないと思われるが、これも中近世移行期の問題として、あらためて検討してみるべきテーマである。これも2つの時代の研究者たちの共同作業によって、より確かなものとする。

 

 研究計画・方法 (平成16年度(つづき))

日本の幕末から維新期にかけて、捕鯨は、東アジア海域に進出してきた欧米の捕鯨船団を通じて、重要な国際問題の一つとなった。また、明治期に入ってからの、ノルウエー式の、新しい捕鯨技術の導入によって、在来の捕鯨業は深刻な打撃を受けた。横山伊徳と保谷徹は、前者のような問題を、おもに幕末維新期の政治問題の一環として、捉えなおそうとしている。また、経済史家老川慶喜は、その経済史的側面からこの問題に取り組もうとしているが、その際に彼が培ってきた企業の歴史や自治体史の編纂の経験などが役に立つほか、近代社会と捕鯨との関わりにも、強い関心を寄せている。

また、上田信・真栄平房昭・弘末雅士・豊田由貴夫は、それぞれの研究対象から当研究に関わる。

以上の研究全体の総括を代表者荒野が行う。

 

以上の分担を一覧すると以下のようになる。

 

文学資料調査(小峯<日本・中国・韓国・北米>・千石<英語>・渡辺<日本・中国・韓国・北米>)

文献史料調査・日本(荒野・上田・老川・藏持・高橋・深津・藤田・保谷・真栄平・横山)

文献史料調査・韓国(荒野・上田・藏持・高橋・深津・藤田)

文献史料調査・中国(荒野・上田・藏持・高橋・深津・藤田・真栄平)

文献史料調査・北米(荒野・高橋・深津・保谷・横山)

文献史料調査・ヨーロッパ(荒野・弘末・保谷・横山)

経済・商業史料調査(老川)

民族資料調査(後藤・豊田)

考古資料調査(山浦)

 

 

 

16年度研究計画日程

 研究会(5回程度)

 6月上旬 立教大学東アジア環境問題研究所との合同シンポジウム

 6月以降 文献と史資料の目録作成。併行して、史資料収集とそのデータベス化とその逐次公開。

 7月下旬 ハワイ調査

 9月上旬 アメリカ西海岸調査

 10月下旬 太地(和歌山県)調査

 1月下旬 対馬(長崎県)調査

 3月中旬 能登(石川県)調査

 3月中旬 研究成果とりまとめのための研究会

 3月下旬 日本学研究所年報発行





 研究計画・方法 (平成17年度以降)

 

ひきつづき上述の7段階をそれぞれのフィールドで継続する。

 

平成17年度

 研究会(5回程度)、引きつづき、文献と史資料の目録作成。併行して、史資料収集とそのデータベス化とその逐次公開。

 6月上旬 研究打ち合せのための会議、6月下旬 シンポジウム

7月下旬 インドネシア調査、9月上旬 ロシア調査、10月下旬 生月(長崎)調査、1月下旬 見島(山口県)調査、3月中旬隠岐(島根県)調査、3月中旬 研究成果とりまとめのための研究会、3月下旬 オーストラリア・ニュージーランド調査、3月下旬 日本学研究所年報発行

 

平成18年度

研究会(5回程度)、引きつづき、文献と史資料の目録作成。併行して、史資料収集とそのデータベス化とその逐次公開。

6月上旬 研究打ち合せのための会議、6月下旬 国際シンポジウム、7月下旬 ノルウエー調査、9月上旬 中国調査、10月下旬 五島(長崎)調査、1月下旬 対馬(長崎県)調査、3月中旬 研究成果とりまとめのための研究会、3月下旬 日本学研究所年報発行

平成19年度

 研究会(5回程度)、引きつづき、文献と史資料の目録作成。併行して、史資料収集とそのデータベス化とその逐次公開。

6月上旬 研究打ち合せのための会議、7月下旬 アメリカ東海岸調査、9月上旬 韓国調査 10月下旬 沖縄調査、1月下旬 小笠原調査、3月中旬 研究成果とりまとめのための研究会、3月下旬 日本学研究所年報発行

 




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