情報過多の時代に求められる生きる力──メディアリテラシーとは

立教大学

2017/11/20

研究活動と教授陣

OVERVIEW

「フェイクニュース」「炎上」といったワードがいま、インターネットの世界を中心に、しばしば取り沙汰されています。メディアを取り巻く環境が大きく変化した現代社会では、どういった意識や態度が求められるのでしょうか。社会学部の砂川浩慶教授に伺いました。

インターネットの普及が与えたメディアへの影響はどのようなものでしょうか。

20世紀以降、大量生産・大量消費の時代の到来とともに、広告の需要が高まったことで、新聞、テレビ、雑誌、ラジオといった「マスメディア」が発達しました。インターネットが登場する以前は、メディアと言えばこれらのマスメディアを指すのが一般的でした。しかし、デジタルネイティブと呼ばれる小さい頃からインターネットに慣れ親しんでいる、ちょうど現在の学生世代にとっては、スマートフォンやPCを媒体にして、四六時中、情報とつながったインターネットが、最も身近なメディアとなっています。
かつては、テレビや新聞を通して、自ずと幅広い情報に接触していたのですが、インターネットでは、自分で情報をカスタマイズし取捨選択できるようになりました。無意識に自分にとって都合の悪い情報や興味のないものを排除する、情報の〝偏食〟が進んでいると言えるでしょう。

新しいメディアとどのようにつきあっていくべきなのでしょうか。

ポータルサイトのヘッドラインやまとめサイト、誰かから拡散されてきたツイートなど、インターネットを介した情報はあふれています。アメリカのトランプ大統領の度重なる発言で話題となった「フェイクニュース」という言葉が象徴するように、これらの情報の真偽や価値をまずは自分自身で判断する必要があります。
簡単に情報が手に入るいまだからこそ、メディアが発信するニュースを批判的に読み解き、情報の質を見極める能力が求められ、これを「メディアリテラシー」と呼びます。現在、小学校のカリキュラムにも導入されるなど、小さい頃からメディアリテラシーを身に付ける必要性が言われていますが、真偽が定かではない記事を自分の頭で考えることなく鵜呑みにし、さらに他者にシェアしてしまうといった無責任な行動もしばしば見受けられます。
私のゼミでは学生に、知っている(と思っている)キーワードについて改めて調べる経験をしてもらいます。事実を徹底的に調べ、他者に伝える。一つのニュースを発信するためには、どれだけの根拠(エビデンス)が必要なのか。このことを実感することで、情報に対する態度が大きく変容します。

自分の考えを持ち、情報を批判的に読み解くにはどうしたらいいでしょうか。

最近の学生を見ていると、さまざまな問いの答えはすべてスマホの中にあるかのように、何でもすぐに検索し始めます。このように情報を外部化していると、ネット上の情報だけで自分自身が形成され、自分はどういう人間か、と悩む体験がほとんどないまま、毎日を過ごしてしまいます。そのため、自身を語る上で人と違う特別なエピソードが必要だと思いこんでいる節があります。
情報の真偽を判断するには、たくさんの情報に触れ、さまざまな体験をすることが大切です。世の中にはスマホでは検索できないこと、正解のないこと、未知なことがたくさんある。それを確かめに自分の足で現場を訪れてみる。そうして得たリアルな体験を、自分の言葉でありのままに伝えることで、自分の中に血肉化することができるのです。
実はこの体験、つまりメディアリテラシーを身に付けることは、大学で学問をしっかり修めることで養成されるものなのです。文献をじっくり読んだり、海外で異文化と出合ったり、新たな価値観に触れたりといった学びを通して物事を批判的に見る力を養うことができます。自分の考えを持ち、それを論理的に語る。大学はいま、そうした訓練を行う場であることが改めて求められていると思います。
砂川教授の3つの視点
  1. メディア環境は急速に変化している
  2. 情報を疑うことがメディアリテラシーの向上につながる
  3. 現実世界での実体験が人をつくる

プロフィール

PROFILE

砂川 浩慶

社会学部メディア社会学科教授

1986年3月、早稲田大学教育学部卒業。
1986年4月~ 2006年3月、社団法人日本民間放送連盟企画部(放送制度・地上デジタル放送)、著作権部、広報部など20年勤務。
2006年4月、立教大学社会学部メディア社会学科助教授。
2007年4月、同准教授。
2016年4月より現職。

※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。

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