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教員紹介

先住民族サーミを伝えること
~伊勢丹クリスマス・キャンペーン2014『Life is a Gift』に協力して~

(1) サーミ文化の<特質>を伝える

 百貨店のクリスマス・キャンペーンですから、最大の「売り」は (a) のウインドウ・ディスプレイで、サーミのヨイク歌詞を気鋭の絵本作家ミロコマチコさんが絵に描き、それを三次元に作り上げたものが伊勢丹新宿店本館のウインドウ12面のうちの11面を飾りました。下の【写真1】は1つ目のウインドウで、ガラス面にはヨイク歌詞の日本語訳が手書きされ、ウインドウ右下の小プレートには私が小エッセイ風の解説「サーミのお話 [vol.1]」を寄せています。

© 2014 ISETAN MITSUKOSHI 写真1-1:ウィンドウNo.1(全景)

© 2014 ISETAN MITSUKOSHI 【写真1-1:ウィンドウNo.1(全景)】

© 2014 ISETAN MITSUKOSHI 写真1-2:ウインドウNo.1(アップ)

© 2014 ISETAN MITSUKOSHI
【写真1-2:ウインドウNo.1(アップ)】
© 2014 ISETAN MITSUKOSHI 写真1-3:ウインドウNo.1(遠景)

© 2014 ISETAN MITSUKOSHI
【写真1-3:ウインドウNo.1(遠景)】

  「サーミのお話 [vol.1]」
トナカイを遊・放牧するサーミは、
トナカイを1つの群れにまとめて一緒に世話をする仲間たちの集団をシイタと呼ぶ。
群れがいる放牧地の場所もシイタ、トナカイの群れもシイタと呼ぶ。
人も、場所も、トナカイも、シイタという言葉1つでつながり、わざわざ区別はしない。
サーミ語のシイタスタッランは、直訳すると「シイタにいること」だが、
「仲間たちと一緒に、放牧地に立って、トナカイの群れのなかで生きること」
を意味し、トナカイ遊・放牧民としての誇りを伝える。

 このようなディスプレイと「サーミのお話」の1つだけをお見せすると、サーミの文化を商品化していると批判する方が少なくないかも知れません。サーミ以外の人たちがサーミに関して勝手に創り上げ流布してきた「ヨーロッパ最後の遊牧民」といったステレオタイプの拡大再生産にも見えるからです。文化人類学研究の領域では、こういった「本質化」や「他者の他者化」への批判は至極当然かつ不可欠なことで、そういった批判に私はできるかぎり謙虚でありたいと考えています。

 しかし、「サーミについて何を、どのように広く社会へ伝えるか」という課題を前にして、私は意識的に、まず最初に「シイタ」「シイタスタッラン」というサーミ語(北サーミ語)の言葉とその意味を伝えることを選びました。それは、トナカイ遊牧の姿が外から見ての(遠くから私たちが眺めて物珍しがる)「サーミらしさ」だからではなくて、サーミ自身がサーミ文化・社会の<特質>を語り伝えようとする時に大切なキーワードとして用いるものだからです。

 この「シイタ」「シイタスタッラン」に関しては、(b) のサーミを伝える小冊子と、(c) のサーミを伝えるウェブサイトで、以下のような説明も加えています。

  [スペシャルメッセージ]
SIIDA:Sámemusea ja Luondduguovddáš
シイタ:サーミ博物館と自然センター
1998年、フィンランドのイナリ村にサーミ博物館と自然センターとが併設された「シイタ」が完成しました。
EUの資金援助で造られた国立の施設ですが、サーミの人々が中心になって運営しているのが特徴です。
ここのガイドブックの名前は『SIIDDASTALLAN(シイタにいること)』で、その「まえがき」では、
博物館の完成とガイドブックの発行とを「サーミ文化の発展とサーミ人の自尊感情の強化における重要な一里塚」と述べています。
今回のキャンペーンにあたって、「シイタ」からメッセージをいただきました。
(以下、メッセージは省略)

 実は、今回のキャンペーンの準備を進める過程で、私が主催者側に強く提案し希望したのは、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドといった関係諸国家の大使館からの正式な後援よりも、むしろ、サーミからの協力、具体的には「シイタ」からの協力(理解・同意)でした。(d) のサーミを伝えるパネルの多くは、「シイタ」からの協力を得て、ガイドブック『SIIDDASTALLAN(シイタにいること)』内の図版を数多く用いて作りました(これらの図版はイナリ村の「シイタ」でも展示されているものです)。

 

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