フィールドワークは、自分の頭と身体をフルに使って、人びとの生きている現場から社会や世界について考える方法論です。調査をする「フィールド」は、みなさんの家庭や学校から、異国の地まで、ありとあらゆる場所が対象になります。自分がぼんやりと興味や関心を抱いている人たちや現象について、自分の五官で感じとり、自分の言葉で考える。そのプロセスは、自分(たち)自身を知ることでもあります。
フィールド演習紹介
演習では、まずフィールドワークという手法の可能性と限界について、みんなで本を読み、議論を重ねながら、理解を深めていきます。とくに文化人類学や社会学の参与観察型の質的調査が、どのように「問い」に向き合っているのか、ほかの方法論とは何が違うのか、みんなで考えていきます。「参与観察」とは、自分の知らない「他者」と時間をかけて信頼関係を築き、コミュニケーションを重ねながら、できるだけ人びとの日常の姿に向き合おうとするやり方です。
こうしてフィールドワークについて学んだあと、学生が自分が興味や関心をもっているキーワードを出し合い、その関心を実際の調査に結びつけるために、関連した文献を読みながら問題意識を掘り下げていきます。フィールドワークをするためには、具体的な場所と対象を定める必要があります。同じような関心をもつ人とグループをつくって議論や相談を重ねながら、ぼんやりとした興味関心を「かたち」のあるのにしていくことを目指します。
このように、この演習では、学生が自分たちで調査テーマを設定し、調査計画をつくりあげていきます。自分の関心といっても、最初からはっきりと言葉にできないかもしれません。でも、誰もが何か気になっていることや問題だなと思っていることはあると思います。演習では、それぞれの好奇心の芽を大切に育てながら、具体的なフィールドワークに結びつけていくプロセスを学んでもらいます。それは、自分自身を知る作業でもあります。
また、この演習では、魅力ある調査の「企画書」を作成し、それを説得力ある言葉で他の人に伝えるための「プレゼンテーション」を重視しています。自分の問題意識を具体化し、それをきちんと自分の言葉で説明する。それは、フィールドで調査を進めるときにも、社会で生きていくうえでもとても重要なことです。調査の成果そのものよりも、どんな小さな疑問/興味であれ、それを実際の現場で具体的に把握できるような企画にまとめ、その魅力を他の人に理解してもらえるようになることを目指します。
2010年度のゼミには、異文化コミュニケーション、日本の文化、会話分析、ボランティアやNGO、マイノリティ、マンガやメディアといったさまざまな興味関心をもった学生が集まっています。まだはっきりとは言葉にできないけど、なんとか自分の頭と身体で問題意識を深めていきたいと考えている学生のみなさんをお待ちしています。