「コミュニケーション」という概念によって開かれる社会学的研究は、現在、大きな広がりを見せている。人と人との間の相互行為、そこで発生する葛藤や差別などの社会問題、メディアに媒介される情報行動・情報環境、携帯電話やインターネットなどの出現によるその現代的変容。こうした幅広いテーマの解明は、いま・ここで起こっている事象を鋭敏にとらえるとともに、それを歴史的な文脈に位置づける視座を必要とし、実践的な問題関心と理論的な分析枠組みの双方を備えた研究態度を要請する。本研究領域では、コミュニケーションと自己意識、ライフストーリー研究、情報行動論・会話分析・テキスト分析、メディアコミュニケーション論・情報環境論、オーディエンス・エスノグラフィーなどを専門とする専任教員によって、コミュニケーションをめぐる社会学的研究の基礎を習得する「コミュニケーション研究基礎論」から、それぞれの専門領域を扱う「コミュニケーション研究特殊講義・特殊演習」、各大学院生の問題意識を形にする「研究指導演習・論文指導演習」に至るカリキュラムが展開されている。こうした多様な授業のなかで、研究者として、またコミュニケーションをめぐるさまざまな専門分野における職業人として、その基盤となる視座と研究態度を獲得することを、本研究領域は可能にすることだろう。
コミュニケーション研究領域専任教員/研究テーマ
是永 論 教授 /情報行動論
(2011年度研究休暇予定)
情報行動論を専門とし、日本社会における情報行動の動態を計量的に把握する一方で、メディアコミュニケーションについて、相互行為的な視点から分析を行なっている。具体的な研究領域としては、前者についてはテレビ視聴と他のメディア利用の並行行動に関する量的な分析を行なっている。後者については、電子メールによるコミュニケーションを会話分析の手法で研究するほか、マスメディアにおける記事やトークについての言説分析を、エスノメソドロジーによるテキスト分析の観点から研究している。
成田 康昭 教授 /情報社会論・メディア論
メディアコミュニケーション論、情報環境論、記号論などをめぐる領域を研究してきた。マスメディア状況から、デジタル・ネットワーク環境までを縦貫する理論的な枠組みに関心をおいている。具体的には、「オンライン・ジャーナリズム」による社会的なジャーナリズム機能の変容、サイバー・コミュニケーションにおける信頼といった問題群を追求している。デジタル・ネットワーク・メディアに媒介されるとき、従来のメディア・カルチャーはいかなる変容を受けるのかということでもある。方法的には、記号論的方法を拡張しつつ、アフォーダンス理論などの助けを借りて、従来の情報環境論を組み替えるのを課題としている。
奥村 隆 教授 /コミュニケーション社会学・社会意識論
自己と他者との関係性を成立させる「社会的なもの」のあり方が、現在大きく変容しつつある。この変容を、アーヴィング・ゴフマンやR.D.レインなどの理論枠組みを参照しながら、ミクロなコミュニケーションの状況や人々の意識を示す質的データから解明するとともに、これを国家や階級といったマクロな社会構造との関係から把握するノルベルト・エリアスなどの成果を参考に、近代社会の変動過程に位置づけることを研究課題とする。また、こうした問題関心から、近代社会の自己意識として生まれた「社会学」と「社会的なもの」の関係の変化を文脈に置いて、従来の社会学理論を読み直し新たなインプリケーションを引き出すことを、試みつつある。
櫻井 厚 教授 /社会問題の社会学・ライフストーリー論
(2011年度後期研究休暇予定)
ライフストーリー研究法を方法論の中軸にすえながら現代社会における社会問題や歴史的事柄を中心にフィールドワークをおこない、人びとの生活世界を探求することによって社会的・歴史的現実とローカル文化の様態をあきらかにすることを研究課題にしている。これまでの主要な対象領域は、マイノリティ、環境、ジェンダー、医療などに関連しているが、これらへの接近には、インタビュー手法、語りの解釈、調査における人間関係、人権への配慮などについて方法論的な検討が要請されている。ライフヒストリー、オーラルヒストリー、ナラティヴ、インタビュー、エスノグラフィ、調査倫理などが方法論に関連するキーワードである。
高橋 利枝 准教授 /メディア論・オーディエンス研究
人々の日常生活におけるメディアとの重層的な関与から、現代社会におけるメディアの社会・文化的な役割を把握することを研究テーマとしている。グローバル化の進む現代日本社会において,ケータイ,インターネット,テレビなど日々進化し続けているメディアの役割について,理論的かつ経験的に考察する。研究領域は「オーディエンス論」「メディア・コミュニケーション論」「メディアとグローバル化」「複雑系のパラダイム」などをカバーし,エスノグラフィーの方法論を用いて、新しいメディアの登場によるコミュニケーションや人間関係の変容,自己アイデンティティの創造,新たな社会集団や文化の生成などについて探求していく。
コミュニケーション研究領域開講科目