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マリアナ海溝の底に生きる深海生物の酵素タンパク質の耐圧性のメカニズム~たった1個のアミノ酸の違いで酵素の耐圧性が変わる ~

2016.02.19

立教大学大学院理学研究科生命理学専攻の濱島裕輝特別研究員、山田康之教授らは、国立研究開発法人海洋研究開発機構との連携大学院の枠組みの中で、同機構の加藤千明シニアスタッフ(立教大学客員教授)、名古屋大学シンクロトロン光研究センター、広島大学との共同研究チームによって、世界最深のマリアナ海溝のチャレンジャー海淵(水深10,898 m)で発見された絶対好圧菌シュワネラベンティカ(DB21MT-2株)の生育に必須なタンパク質であるイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素(IPMDH)について、水深1万メートルの水圧(1,000気圧)でも機能を失わない耐圧性のメカニズムを解明しました。

深海の高水圧に耐えて生息する生物は、耐圧性タンパク質を保有していることが知られていましたが、そうしたタンパク質の圧力耐性のメカニズムは不明でした。今回共同チームが研究したIPMDHは、生物に必須なアミノ酸であるロイシンの生合成過程で働く酵素タンパク質です。アメリカのオナイダ湖で分離された常圧菌シュワネラオネイデンシス(MR-1株)と絶対好圧菌シュワネラベンティカのIPMDHでは、両者のアミノ酸配列や立体構造はほとんど同じですが、前者は1,000気圧では活性が70%程度まで減少するのに対して、後者は95%以上の活性を維持します。

共同研究チームでは、常圧菌のIPMDHについて、高圧装置(ダイヤモンドアンビルセル)とシンクロトロン放射光の高エネルギーで強いX線を用いて構造解析を行い、圧力によってIPMDHの活性部位の裏側に水分子がクサビのように割込んで行く様子を発見しました。その水分子の場所を比較すると、266番目のアミノ酸が常圧菌ではセリンであるものが、絶対好圧菌ではアラニンに変わっていました。そこで常圧菌のIPMDHのセリンをアラニンに置き換えた人工変異型IPMDH(S266A)を作製して耐圧性を調べたところ、深海生物並の耐圧性を獲得していました。また、逆に深海生物のIPMDHのアラニンをセリンに置き換えると耐圧性を失いました。すなわち、IPMDHの全体で364個のアミノ酸のうち、たった1つのアミノ酸の違いで深海型酵素が陸上型酵素になり、逆に陸上型酵素が深海型酵素になる事が明らかとなりました。これまで、深海生物のタンパク質の耐圧性の獲得は複雑な要素が絡み合って実現されていると考えられてきましたが、意外なことにたった1つのアミノ酸の違いのレベルで実現されていることが分かりました。

これらの結果は、深海生物のタンパク質の耐圧性の不思議の解明のみならず、例えば有用酵素の工業利用のための高耐圧性付与などの利用への展開が期待されます。本研究成果は、科学雑誌「Extremophiles」(2月8日付、電子版)に掲載されました。

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