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理学部物理学科の村田次郎教授が原発事故災害復興支援のための放射性ストロンチウム非破壊検出法を新規開発

2014.04.25

立教大学理学部の村田次郎教授を中心とする研究チームは、放射化学分析を用いる通常の方法では計測の難しい放射性ストロンチウムを、化学分析の不要な簡便な方法で計測できる、新しい計測方法の技術開発に成功しました。

放射性ストロンチウムは化学的性質から放射性セシウムよりはるかに体外に排出されにくいため、内部被ばくの影響が懸念される一方で、ガンマ線をほとんど放出しない性質による計測の難しさから、原発事故に伴う環境中の汚染状況の情報が極めて乏しい状況が続いています。この状況を打破すべく、研究チームでは、セシウム137などを大量に含む土壌中に含まれるストロンチウム90の放射能強度を、土壌の化学処理のプロセスを経ずに物理的に非破壊で計測できる、新しい測定器の開発を行いました。

本技術は、感度において放射化学分析に及ばないものの、放射性ストロンチウムが大量に含まれているかどうかを確認する目的などにおいて、非常に短時間に低コスト(1サンプルあたり、放射化学は1ヶ月・10万円単位であるのに対し、本研究は1日単位・電気代程度)で貢献できる能力があります。既に、高濃度の蓄積が懸念されている野生動物の調査にも実際に応用され始めているなど、今後の災害復興計画に貢献する事が期待できます。

この研究成果は、昨年6月にイタリア・フィレンツェで開催された原子核物理学の最大の国際会議であるInternational Nuclear Physics Conference (INPC2013)、および同7月の第50回アイソトープ・放射線研究発表会、9月の日本物理学会で発表しました。また、英国の学術雑誌『European Physical Journal (ヨーロピアン・フィジカルジャーナル)』が刊行するオンライン科学雑誌『Web of Conferences』に2014年3月20日(木)から掲載されています。

■論文情報
タイトル:Nondestructive measurement of environmental radioactive strontium
著者:Shuntaro Saiba, Tomohiro Okamiya, Saki Tanaka, Ryosuke Tanuma, Yumi Totsuka and Jiro Murata
誌名:European Physical Journal Web of Conferences 66, 10014 (2014)
URL:http://www.epj-conferences.org/articles/epjconf/pdf/2014/03/epjconf_inpc2013_10014.pdf

■研究概要
2011年3月の東日本大震災に伴う原発事故発生直後から、研究チームは環境中の放射線・放射能計測活動を開始し、また、文部科学省の大規模土壌調査にも立案時から現地調査、大学でのサンプル分析まで貢献してきましたが、これらの環境計測に関連する活動は既存技術を直接適用する形での貢献でした。

そこで、本研究では、立教大学学術推進特別重点資金(立教SFR)「東日本大震災・復興支援関連研究」の助成を受け、既存技術では実現のできない放射性ストロンチウムの簡便な計測方法の開発を本格的に開始させました。

ストロンチウムは、骨に蓄積しやすい化学的性質を持つことから生物学的半減期がセシウムよりもはるかに長く、内部被ばくへの不安から放射性ストロンチウムの定量評価への社会的ニーズが少なくありません。一方で、放射性ストロンチウムは放射性セシウム等と異なり崩壊時にガンマ線をほとんど放出しない性質があるため、放射性セシウムの測定で用いられるゲルマニウム検出器などを用いたガンマ線分析方法を用いる事ができず、現状では放射化学的処理が必要で大きなコストと時間を必要とする問題点があります。そのため、放射性ストロンチウムの調査数は、放射性セシウムと比較しても圧倒的に少ない状況が継続しています。

本研究では、測定精度、感度は劣るものの、放射化学的手法を用いない、短期かつ簡便に放射性ストロンチウム(ストロンチウム90)の定量評価が可能な物理的計測方法の開発を進めました(図1)。ストロンチウム90は崩壊時に比較的高いエネルギーのベータ線を放出するため、これを捉えることで放射能の評価を行う原理です。ただし、純粋なストロンチウム90に対しては容易なこの計測法は、桁違いに存在量が多い放射性セシウムを大量に含む福島第一原発事故由来の放射能を含む土壌に対しては、検出器の応答が放射性セシウムの放出するガンマ線由来の信号に埋め尽くされる問題があります。そこで、本研究ではガンマ線の寄与を実測・評価してこれを差し引き、さらにサンプル等の物質内部での散乱・吸収を考慮したエネルギー分布を用いた統計解析を行う事で有意にストロンチウム起源の信号を捉え、シミュレーションを用いたサンプル・検出器応答の評価を経て放射能強度の定量評価を可能としました(図2)。その結果は同じサンプルに対して行った放射化学分析の結果と明瞭な相関を示し、放射能強度の絶対値の較正が必要であるものの、放射性ストロンチウムの濃度に比例した結果を得る能力がある事が確認されました(図3)。

本技術は、感度において放射化学分析に及ばないものの、放射性ストロンチウムが大量に含まれているかどうかを確認する目的などにおいて、非常に短時間に低コスト(1サンプルあたり、放射化学は1ヶ月・10万円単位であるのに対し、本研究は1日単位・電気代程度)で貢献できる能力があります。既に、高濃度の蓄積が懸念されている野生動物の調査にも実際に応用され始めているなど、今後の災害復興計画に貢献する事が期待できます。

図1 立教大学ストロンチウム測定器装置概略図

図2 ストロンチウム起源事象の抽出方法(ベータ線スペクトル)

図3 立教大学ストロンチウム測定器と放射化学分析の相関

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