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黒岩教授のグループなどが細胞内社会の新たな支配関係を発見
―葉緑体がパラサイト・シグナルで細胞核を制御―

2009.01.16

千葉大学大学院園芸学研究科の田中寛教授と小林勇気東京大学博士研究員が中心となり、立教大学理学研究科極限生命情報研究センター黒岩常祥特任教授のグループなどが共同研究し、葉緑体が出すMgP分子(パラサイトシグナルと命名)が細胞核のDNA合成及び増殖を制御していることを発見しました。この成果は、従来の細胞核ゲノムがミトコンドリアや葉緑体を制御するという概念とは逆の画期的な知見であり、米国科学アカデミー紀要(Prc.Natl.Acad.Sci.USA,106: 803-807,2009)に発表され、一部は朝日新聞、読売新聞、毎日新聞など及びオンラインの記事として掲載されています。

ミトコンドリアと葉緑体は細胞内でエネルギーやアミノ酸などを作り出す、必須の小器官として働き、活発に分裂増殖しておりますが、もともとは独自のDNA(ゲノム)を持つ別の生き物であったバクテリアが、太古の昔に宿主細胞の中に入り込み、誕生したと考えられています。従って細胞核と葉緑体、ミトコンドリアは宿主とパラサイトの関係にあり、細胞社会を円滑に動かすためには、お互いをつなげる何らかのシグナルがあるものと予想されていました。これまでそれを解明しようと高等動物や植物を使いましたが、これらの細胞内には、多数のミトコンドリアや色素体があり、しかもそれらがランダムに分裂増殖するため、解析が困難でした。

そこで、本研究では小林勇気博士が中心となり、細胞核、ミトコンドリアそして葉緑体を各1個ずつ含む原始紅藻(シゾン)を用いて、それらの分裂を同調化するとともに、これらの小器官のそれぞれ1個のDNA合成を測定する技術を開発し、細胞内の超微量なDNA合成を調べることに成功しました。その結果、細胞が増える際には、ミトコンドリアと葉緑体がDNA合成を終えると、必ずテトラピロール合成中間体(MgP;パラサイト・シグナル)が合成され、これがシグナルとなって細胞核のDNA合成が誘導(支配)され、細胞分裂が起こるという、新たなシグナル伝達経路を発見しました。

このシゾンで発見されたシグナル伝達経路は、タバコのような陸上植物でも観察されていることから、小器官と細胞核との間の類似のシグナル伝達経路は、全ての植物や動物にも存在する共通原理であると考えられます。また癌細胞でも類似のことが起きている可能性は高いと考えられ、将来、癌細胞の増殖をパラサイト・シグナルによって制圧する研究も重要になってくると思われます。

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