公法系科目
- 教授 人見 剛

時に、犯罪や違法行為が横行する事態を指して、「この国は法治国家ではない」などという言説が流布することがあります。しかし、「法治国家」とか「法治主義」という観念は、元来、絶対主義国家の君主の権力を国民代表議会の定立した法律に服させるべきであるとする近代の自由主義・権力分立主義に依るものであり、国民が法律を遵守すべきことを意味しているのではありません。「人の支配ではなく法の支配を」の観念に由来する「法の支配」という概念も、為政者を統制する法の観念に基づいているのです。
このように国や地方自治体などの統治主体の活動を規律し、国民・住民の自由や権利を守るための法が「公法」であり、それが立法権力の担い手たる国会をも拘束する最高規範としての性格を持つものであれば「憲法」と呼ばれ、行政権のみを拘束する法律(その委任を受けた政省令等の行政立法、住民代表議会たる地方議会が定立する条例等も含む)であるときは「行政法」と総称されることになります。
「憲法」は、「公法」の一角をなすだけでなく、民事法や刑事法などの社会の基本法をも規律する上位法源であり、その内容は社会の全領域にわたります。「行政法」は、総務省、国土交通省、経済産業省、厚生労働省などの国の各省庁が所管している1000 を優に超える膨大な行政各部法を包括し、さらに全国1700 余りの地方自治体が制定・運用している無数の条例も含みます。
憲法・行政法という法分野は、このようにとりとめのない部分があり、学習しにくいという感想もあろうかと思います。しかし、何事も原理・原則、幹となる部分がしっかりしていれば応用が利くのであり、頑丈な土台と揺るがない柱を構築するよう心がけて公法の学習に取り組んで下さい。私たち教員も、しっかりサポートします。
民事系科目
- 教授 野澤 正充

インターネットで物を買って代金を支払ったのに、売主がその物を送ってくれなかったり、送られてきた物に傷があったら、どうすればいいでしょう。また、お父さんが亡くなったときに、その遺産は兄弟でどのように分けたらいいのでしょう。民事系科目の中でも民法は、このような私たちの日常生活に起こるさまざまな問題に対応します。そして、商法は商人との取引に適用され、民法でも商法でも、実際に紛争が起きたときは、最終的には民事訴訟手続に従って、裁判所の判決によってその解決を図ります。法科大学院に進学されるみなさんの多くは、将来は弁護士として活躍されますが、その仕事の多くは、これらの民事系科目において学んだことの実践や応用です。したがって、法科大学院ではしっかりと民事系科目を学ぶことが大切です。
本法科大学院の民事系科目は、他の法科大学院と比べても大変充実しています。たとえば、未修1年次には、法科大学院の発足当時から、民法基礎演習という演習科目を通年にわたって設け、単に講義で知識を修得するだけでなく、その実践や応用を、研究者と弁護士とが共に担当することによって、学生に身につけさせてきました。そして、既修1年次の民事法演習でも、同じく研究者と弁護士が協同して授業を担当し、法の現実の運用に注目しつつ、その理論を教えてゆきます。
ところで、民法は、日常生活の問題に対処するものであるため、その歴史は古く、沿革的には古代のローマにさかのぼります。また、日本だけでなく、どこの国でも同じような問題に対処しなければならず、多くの国において同じような制度が設けられています。そして、現代社会は、取引が国内だけでなく、グローバルなものとなっています。そこで、民法や商法を学ぶためには、広く世界に目を向ける必要があります。法科大学院のわずかな期間で学べることは限られていますが、わたしたちは、これからのグローバルな経済社会の中でみなさんが活躍するための視点も提供したいと考えています。
刑事系科目
- 教授 廣瀬 健二

有罪・無罪を決め、死刑も下す刑事裁判。法律実務家の活動が不適切なら冤罪・誤判すら招く。法曹には、犯罪に傷つき、不当な疑いに苦しむ人々の痛みに共感しつつも、冷静・公正に事案の真相を究め、正義を追求する高い志と厳しい自己規律、確かな法律知識・技量が求められる。その水準は国民参加でさらに高まる。
法科大学院生は、司法試験に合格すれば、1 年足らずの実務修習でその担い手となる。学ぶべきことは多いが、期間は十分ではない。本研究科は、定評ある研究者教員、中堅弁護士、裁判官・検察官出身の実務家教員が全クラスを共通担当し、1年次(未修):基礎知識を学ぶ「刑法(1)」、「刑法(2)」、「刑事手続法概説」、2年次:判例を学ぶ「刑事法演習(1)」「刑事法演習(2)」、3年次前期:刑事実務と理論を学ぶ「刑事実務の基礎」、同夏期:実践的に刑事訴訟を学ぶ「模擬裁判(刑事)」、同後期:総合学修の「刑事法演習(3)」「刑事実務演習」を順次開講し、「刑事政策」、「経済刑法」、「少年法」、「医療と法」を選択科目とする効率的かつ充実したカリキュラムで、その要請に応える。
私は、刑事・少年事件を東京地裁・高裁等で合計30 年担当し横浜地裁裁判長から母校に転身し、後輩教育に情熱を注いでいる。教える方も容易ではないが、意欲のある学生の成長は目覚ましい。諸君と共に学べることを心から期待している。








