比較文明学とは

総合人間学としての比較文明学

比較文明学専攻は1998年、学部に所属する学科を基礎とする従来の大学院専攻とは異なり、学部(文学部)全体を基礎とする新型大学院専攻として設立されました。私たちの専攻が目指す比較文明学は、現代の新しい文明現象を細かく分類して分析するのではなく、人間という全体的存在者の性格に即してそれを理解しようとする新しい総合人間学です。

都市生活としての文明

人間は知的文化を持ち、言語を操り、それを文字に残して、自らの思考の営みを形にし、それを文字以外の媒体をも用いて具象化し、文化の歴史を形成してきました。そして、人間は文化を持ちながら自然の中で暮らすとともに、自然から離れて人工的な都市という空間を形成して、その中で文化を持って生活するという生き方をも進めてきました。それは一般に文明的生活と呼ばれているでしょう。文明概念には多くの定義があります。しかし概して、それは自然のままの状態から離れ、人工的文化を多く使用する生活のことを指すといって大きな間違いはないと思われます。現代社会では人間は都市的生活を基本とするようになりました。そうすると、我々が目指す総合人間学は、まさに「現代の文化水準に見合った都市生活を前提にした人間の生活を主題化する学」であることになります。

現代文明の人間生活すべてを主題に

それは、文明という言葉からすぐに連想される東アジア文明、エジプト文明といった歴史上の大きな地域ごとの区分概念とは異なる新しい文明の概念を提示することになります。すなわち、現代の都市的生活に特有な生活上の問題、とりわけ現代社会の抱える資本主義的力関係に基づく社会現象、欲望の解放が生み出す文化現象、また欲望実現のための技術の進歩による全く新しい人間現象、さらにはそれらを反省的に理解してその成果を多様な形式で表現し共有しようとする表現および受容行動などが、私たちによって文明として捉えられます。

比較の意味

この文明についての研究は、その対象として多くの具体的事象を含みます。そして、それらについての研究方法は従来の人文学や社会科学、自然科学などの分野で既に多様に開発されており、それぞれの学として行われています。しかしながら、私たちはそれらを新たな人間の学として扱おうとするのであり、その意味で複合的に分析すると同時に総合することを目指しています。このことを実現するための手だてが「比較」なのです。私たちの「比較文明学」は文明事象同士を単に比較することを必ずしも目指していません。むしろ、そのような比較をも含みながらも、その先に人間存在を見極めることが目的なのです。

比較の方法

それゆえに、二つの文明事象が比較される場合には、まず、その両者のそれぞれについて個別に、従来の研究方法からは十分に人間存在が明らかにできないと思われる限界、境界を見極めることが肝要になります。その上で、別の方向からそれと同様の性格を持った境界を接している相手の文明事象が比較対象として選択されます。それは、両者を重ねることで、片方からは曖昧にしか見えなかった人間像が、もう片方との比較によってより明確に見えるようになるからなのです。この比較がなされるためには、両方の文明事象が一つの観点から認識されなければなりません。しかし、それぞれの事象がそれぞれに認知され、その内容が具体的に認識されるためには、それぞれの事象に対して何らかの研究方法の枠組みが前提となっています。そもそも現状の学問では、違う事象については違う枠組みが前提とされるからです。したがって、私たちが言う意味での比較とは、それらの方法論的枠組み自体が相互に変形しあって融合し、一つの観点を形成することをこそ、必然的に含むものでなければなりません。

比較は現代文明研究にとって必然的

以上のように、私たちの言うところの比較文明学は、文明事象同士を並べて比較してその異同を論じることではありません。そうではなく、現代社会における人間存在を明らかにするために、その一つ一つの事象を徹底的に見極め、その結果それら既存の方法論による認識限界領域を解明し、さらにはそこから、これまで見えていなかった新しい人間存在の側面を具体的に認識するために別の領域の研究を必然的に要請するものなのです。そして、結果として比較文明学になるのです。

比較文明学研究の組織

私たちの比較文明学を研究するための学会には、立教比較文明学会があります。これは私たちの比較文明学専攻前期課程・後期課程在学者、比較文明学専攻前期課程・後期課程修了者、現授業担当者、元授業担当者が自動的に加入する関係者の団体です。これを拠点に研究を進めています。さらに、全国組織として活動する比較文明学会という団体もあります。この学会には加入は任意です。比較文明学を深く研究しようと志す人は、それぞれの文明事象を既存の方法論で研究する専門領域の学会の動きを追い、同時に文明同士の比較の意味を考えながら、多様な比較の実践を行っている立教比較文明学会および比較文明学会の活動について行く必要があるでしょう。

比較文明学研究に参加しよう

比較文明学は新しい学問ですが、現代の人間に関わる事象をその一側面に限定せず、そのものとして理解しようとすれば、必然的に行わなければならない学問なのです。人間を現代文明社会で生きた全体として扱いたいと思うならば、比較文明学研究に参加してみませんか。


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