持続可能な未来へ向けて
リサーチワークショップの基本理念本研究科が目指す研究者像 連続公開講演会
 

「持続可能な未来」にむけて:異文化コミュニケーション研究科の挑戦

はじめに

 今日、人類は、史上類を見ない物質的豊かさを手にしたかのように見えます。しかし、そのことが、経済格差、人権、平和、環境といった緊急の問題を引き起こしていることも、また事実です。これらの問題の解決には、自らの文化や、人間の利益のみをただやみくもに追求するような、偏狭な思考からの脱却が不可欠ですが、それに加えて重要となるのが、「異なる者同士をつなぐ」という意味での、「異文化コミュニケーション」です。
上に挙げた諸問題は、個々に独立して起こっているのではなく、それぞれが密接に関わり合っています。そして、これらの問題が実際に起こっている世界の各地域には、それぞれの地域における長年の歴史や民族性によって蓄積された「文化」が存在しています。すなわち、異文化への理解と想像力、そして、そこに生きる人々とのコミュニケーションを欠いたまま、貧困、人権、平和、環境といった現代社会が抱える諸問題の解決を図ること自体、大きな矛盾を孕んでいると言えるのです。

 今後、異質な他者同士が共存していくためには、文化の重要性を強く認識し、各地域の政治的、社会的、歴史的、そして文化的な文脈の中で、広く問題を捉え直していくことが必要となります。また、このような視点に立つならば、これまで「人間のための資源」として認識しがちであった自然環境を、「異文化」の重要な構成要素として捉え直し、「人と自然とのコミュニケーション」という新たな方向性を追求することも、環境問題について考える上での大きな糸口となっていくはずです。

「持続可能な未来」

 2002年のヨハネスブルグ・サミットにおいて、日本政府がNGO/NPOと共同提案し、実施が決議された「国連持続可能な開発のための教育の10年(ESDの10年)」が、2005年度よりスタートしました。今日、「持続可能な開発」という課題は、環境のみならず、経済、政治、社会の4側面を包括するものとして提起され、環境保全、適切な開発、民主主義、多文化共生、平和・平等・人権といった広範な要因を視野に入れた、地球の未来を総合的に検討する課題として捉えられています。
「持続可能性」という課題にとって、狭く人間同士の関係にとどまらず、自然と人との関係性までを含んだ「異文化コミュニケーション」が大きな役割を果たすことは、言うまでもありません。言い換えるならば、自然環境をも含めた〈異質な他者との相互作用〉に関する学問分野としての「異文化コミュニケーション学」は、「持続可能な未来」という視点を獲得することによって、21世紀の地球社会に貢献することができるものとなります。
2002年に立教大学に誕生して以来、異文化コミュニケーション研究科では、「学際性」「理論と実践の統合」「分野横断性」をキーワードに、「異文化」「環境」「言語」「通訳翻訳」の4つのコミュニケーション領域を設け、多岐にわたるコミュニケーション現象を視野に入れた「異文化コミュニケーション学」の再構築に挑んできました。同時に、本研究科は、これら4領域をつなぐことのできる理念を模索してきたといえます。

  このたび、本研究科は、「持続可能性」という、最も先進的な課題を、研究・教育課題の中心に据えることで、「異文化」「環境」「言語」「通訳翻訳」の4領域をつなぐ一本の糸を得ました。そして、平成17年度、本研究科による教育プログラム「持続可能な未来へのリサーチワークショップ ─ 異文化コミュニケーション学構築をめざして」が、文部科学省『「魅力ある大学院教育」イニシアティブ』に採択されました。これを受けて、本研究科の研究・教育課程は、「持続可能な未来へ向けた異文化コミュニケーション学の創生」を新たな目標として、「リサーチワークショップ(Research Workshops: RW)」科目群を核としながら、大きく整備・改編されることになります。