持続可能な未来へ向けて
リサーチワークショップの基本理念本研究科が目指す研究者像 連続公開講演会
 
「リサーチワークショップ」の基本理念、そして新たな取り組みへ

「リサーチワークショップ」とは?

 異文化コミュニケーション研究科では、創設時より、分野横断的なカリキュラムの提供をめざし、「異文化」「環境」「言語」「通訳翻訳」の4つのコミュニケーション領域において、それぞれ「リサーチワークショップ(RW)」科目を展開してきました。一般に、「リサーチ」は「理論」を、「ワークショップ」は「実践」を扱うものであると、分けて考えられていますが、本研究科の核となる科目名を「リサーチ & ワークショップ」とせず、「リサーチワークショップ」とすることの根底には、「臨床の知」という基本理念があります。中村雄二郎(1992)によれば、「臨床の知」とは、「個々の場所や時間のなかで、対象の多義性を十分考慮に入れながら、それとの交流の中で事象を捉える方法」です。そこでは、実践は「理論の源泉」であり、理論は現実からの挑戦を受けて鍛えられることになります。つまり、「リサーチワークショップ」とは、理論と実践を分離して考えるのではなく、実践と理論の間を架橋し、問題や出来事が起こる「コンテクスト」を常に考慮に入れた、往還的な思考と行動力を育成する場にほかならないのです。

新たな理念、新たな取り組み

 今年度より、これまでも異文化コミュニケーションを広い視野から捉え直す場としての役割を果たしてきたRW科目は、「持続可能な未来社会を構想する」という新たな理念の下、「リサーチワークショップ・システム」として再編・体系化され、本研究科におけるより組織的な教育課程の中心的担い手として、本格展開されます。

具体的には、「実践リサーチワークショップ(Research Workshops, Practice: RWP)」「理論リサーチワークショップ(Research Workshops, Theory: RWT)」「ドクター・リサーチワークショップ(Doctoral Research Workshops: DRW)」の3つのワークショップを新設し、専門性に自足することのない複眼的な視野、および実践的関心を基盤とする理論形成能力の育成を目標としながら、学生の新たな「問題の発見」=創発性を積極的に支援していきます。



実践リサーチワークショップ

 「実践RW」は、実践に根ざした総合的な研究能力の涵養を目的とし、「フィールドワークRW」と「領域横断RW」の2種類によって構成されています。
「フィールドワークRW」は、授業等で学んだ理論を基礎にした、領域別のフィールドワークです。例えば、「異文化コミュニケーション」領域では、アジアからの研修生と寝食を共にし、国際共通語としての英語を使用しながら、多文化共生社会について模索する参加型学習、「環境コミュニケーション」領域では、知床、屋久島、水俣、白神など日本各地を実際に訪れ、環境問題の具体的な姿と課題を体験するワークショップ、「通訳翻訳」領域ならば、コミュニティ通訳現場での体験学習などが挙げられます。

 また、「領域横断RW」の具体的な内容としては、学会運営、紀要編集、出版企画、国際会議主催などを通してプロジェクト運営能力を高める「プロジェクト・マネジメント」、企業やNGO活動など、国内外におけるコミュニケーション現場での実務体験から学ぶ「インターンシップ」、海外の大学や研究機関と連携し、海外研修の場を提供する「海外研修」などが挙げられます。いずれのRWにおいても、自らが基盤とする領域に立脚しつつ、その枠組みだけにとらわれない、柔軟な思考力と実践力を育成することがねらいとなっています。

理論リサーチワークショップ

 研究能力の修得とその基礎となる知の内実化を培うことを目的とした「理論RW」は、基礎理論を集中的に学ぶ「理論研究RW」と、調査分析法・論文作成法などを学ぶ「方法論研究RW」の2種類によって支えられています。
「理論研究RW」は、各学問分野の基礎理論を理解するだけでなく、それらの批判的解題を軸にしながら展開されます。

「方法論研究RW」では、これまで共通専門科目として設置されていた「社会調査法1・2」「論文作成法」の授業内容が統合・再編され、質的分析方法、量的分析方法、論文作成法の習得から、データ収集・分析、レポート執筆に至るまで、具体的な研究方法の基礎を学びます。研究の段階を丹念に辿り、それをミニリサーチとして結実させることで、目の前の事象を多角的に捉え、その成果を学術的な論文に仕上げていくための、どの分野の研究者にも必須の能力を養成します。

ドクター・リサーチワークショップ

 社会人が70%を占める本研究科では、後期課程へ進む院生においても社会人が大きな割合を占めます。「ドクター・リサーチワークショップ」は、多彩な現場に身を置きながら、先端研究を含む知識面を補強しつつ、経験知の理論化を図る院生のサポートを研究科として組織・体制化したものです。実践の場から理論へ接近し、実践へ向けた理論の再構成を思考するアカデミック・トレーニングを、先端的理論研究、国内外でのフィールドワーク、国際学会での発表など、様々な場において支援し、世界的に活躍する資質と能力を備えた研究者を養成します。