2009年度 第5回 連続公開シンポジウム 未来の声を聴こう

よりよい日本のために声を上げよう

勝間 和代氏

本日の大きなテーマは、「日本を変えるために、みんなで声を上げよう」ということです。

最近、政治家や官僚の方とお会いする機会が多くなり、それで気づいたのは、彼らは私たち国民の声を聞いて動くということ。だから私たちが声を上げ続ければ、ゆっくりではあるけれど、政治も行政も変わっていくはずです。

さて、「国民負担率」という言葉をご存じですか。国民や企業がそれぞれの所得のうち、国・自治体に納める税金と社会保険料などが占める割合のことです。日本の場合これが約40%。つまり大ざっぱに言えば、家計の約40%を国や自治体に支払っているわけです。私たちにとって一番高い買い物は、家でも車でもなく、日本という国だとも言えます。

そうだとすると、自分たちにとって快適な国であってくれなければ困りますよね。でも、現実の日本はどうでしょう。

自殺する人は年間約3万人で、自殺率の高さは世界で9番目、OECD(経済協力開発機構)加盟30カ国すなわち先進国の中では最悪です。一方、幸福であると感じている国民の割合は、調査によってばらつきはありますが、大概真ん中より少し下の順位で、これも先進国中最悪です。

海外から見た日本の評価もひどいものです。海外のコラムを読むと、「日本は破滅への道をたどっている」とか「壁に向かって突進している」といった言葉が並んでいます。現実に、アメリカをはじめ世界各国の株価が回復しつつある中で、日本の株価だけが低迷しているのは、日本経済が海外の投資家から見捨てられている証拠です。また、日本の国債の評価も、先進国の中で極端に低い。それだけわが国の財政は、破綻する危険性が高いと見られているのです。

だから、私たちは声を上げなければいけません。自分たちが支払ったお金の使い道、再配分の仕方を望ましいものに変えてもらわなければなりません。そして子どもや孫の世代に、もっと住みやすい、幸せを感じられる日本を残すことが、私たちの責務なのです。

対策を怠ってきた少子高齢化

現在の日本が抱える最大の問題は、「少子高齢化」です。

日本の出生率はご存じの通り1.37。つまりこのまま進めば、私たちの子どもの世代には人口がおよそ7割に、2世代先には半分になってしまう計算です。

さらに問題なのは、年齢構成です。人口が再び1億人まで減少すると予想される2050年ごろには、65歳以上の高齢者が3分の1を超える。しかもその割合は、地方ではさらに高くなります。そうした地域の自治体は税収は減り、社会保障費などの支出は増える一方ですから、行政サービスを維持できず、確実に財政破綻します。

このような事態を迎えた最大の原因は、国が子どもに対してあまりにもお金を使わずにきたことです。先進国になると、家計の中で子どもにかかる費用が増えるため、放っておくと少子化は自動的に進みます。この点の認識が甘かったのです。

日本経済が好調だったころ、介護保険など高齢者向けの制度は、かなりの予算をかけて整備しました。これに対し、「エンゼルプラン」など出産・子育て支援策も打ち出しはしたものの、予算規模は欧米諸国の3分の1から5分の1でした。麻生内閣当時でも、家族政策費はGDP(国内総生産)の0.7%程度、これは諸外国が1~4%であるのに比べて、極めて低い数字です。残念ながら、これでは子どもは増えません。

少子高齢化の問題を解決するためにやるべきことは、大きく2つあると思います。1つは若年層への過少投資を改めること、もう1つは男女共同参画を進めることです。

若者にチャンスを与える社会を

勝間 和代氏

今、若年層の雇用がひどい状態になっていることはご存じのとおりです。デフレはその大きな要因。なぜなら、売り上げが落ちた企業は、それを人件費の削減でカバーしようとしますが、給与の引き下げには限界があるので、新規採用を減らして頭数で調整する。そのしわ寄せが女性と、とりわけ若年層にいくからです。

その結果、多くの若者が非正規雇用に甘んじざるを得ません。わが国の場合、最低賃金が平均賃金の25%と、諸外国の40%に比べて非常に低く設定されているため、正規雇用と非正規雇用との賃金格差が極めて大きい。しかも、昇進や大幅な昇給は期待できず、むろん社会保険もありません。

このような若年層への過少投資は、企業だけの問題ではありません。日本の教育予算はGDPの3.4%で、諸外国の平均5%よりかなり低い。例えば国立大学の授業料は年間約50万円ですが、ヨーロッパでは5万円程度が普通ですから、これは異常とも言えます。

1世帯あたりの平均所得(正確には中央値ですが)は460万円ですから、これだけ学費が高いと、子どもに、ましてや兄弟姉妹に高等教育を受けさせるのは容易ではありません。たとえ優秀な子どもでも、親の経済的事情で大学に行けないとなると、大卒と高卒の生涯賃金には大きな差がありますから、貧困の連鎖が起こることになります。

努力しても報われない……。こんな状況では、若者はがんばりたくてもがんばれません。アンケートをとると、4割の若者が、自分たちの時代は親の時代より悪い、そして子どもたちの時代はもっと悪くなる、と答えます。恐ろしいほど暗いのです。

未来に希望を持てない若者が、子どもを産みたいと思うはずがありません。そして、少子化が進めば、ますます未来は暗くなる、という悪循環になっています。

中高年はよく、「今の若者には覇気がない」と言いますが、若者の覇気を奪うような社会システムを作ってしまったのは、私たち中高年です。国も企業も、直ちに若者への過少投資を改め、彼らにチャンスを与えるような社会に変えていかなければなりません。

社会の成長力を生み出すのは、言うまでもなく、新しいものにチャレンジする若者たちなのですから。



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