小島 今日の主役は若者。でもそのようにひとくくりにとらえず、それぞれ「私」という主語で問題を提起してもらい、われわれ大人が一緒に考えていきたいと思います。お招きした石田さんは、ここ池袋を舞台にした作品「池袋ウエストゲートパーク」の作者で、この作品に感銘を受けた本学教員も大変多く、ぜひ学生に生のお声を聞かせたい、「本物」が持つ力を実感させたいと思っていました。そして1年越しで、ようやく念願がかないました。
第一部は、学生たちが、今自分に必要だと考える「力」について発表、それを受けて石田さんと私が対談する形で進めていきます。
「主体性」和田
主体性には、自分の意思で判断し、それに基づいて行動し、そのことに対して責任をとるという3つの要素が不可欠です。常に主体性を意識し、それを養う機会を積極的に利用し、とった行動を反省することで身についていくと思います。
「心を動かす力」金
感受性は私たちをはぐくむ「土」のようなもの。耕さずにいると、固まって肥料すら受け付けなくなります。でも実は、私たちの周りは感動させてくれる出来事や人々であふれているのです。積極的に出会いを求めて、自分の可能性も広げていきたいと思います。
石田 率直に感想を言わせていただくと、最初の「主体性」の発表は、今一つ主体性が感じられませんでした(笑)。言葉を正確に使う努力はわかりますが、オリジナリティも大事。「心を動かす力」は確かにすごく大きいですね。どうしたら身につけることができるか、学校で学ぶだけでなく、恋愛でも地域活動でもいい、いろいろ体験して掘り下げてほしいと思います。
小島 授業の中で学生に、どんどん恥をかくように言っているんですが、今日は石田さんから直接厳しいコメントをいただけて、彼らも喜んでいると思います(笑)。
「バカになる力」駒井
「利口」な人の人生には意味のあることしかないけれど、「バカ」な人の人生には思ったことすべてがある。そしてその方がずっと楽しいし、学ぶことも多いはずです。「バカ」になって、意味など考えずに何事にも挑戦し、楽しく生きていきましょう。
石田 大賛成です。でも、「利口」と「バカ」は対立項にせず、「バカ」な人が「利口」になったり、「利口」な人が「バカ」になるという往復ができるともっといいですね。
小島 彼の話はとても正直でストレート。思ったことをそのまま言葉にするとやはり伝わりますね。
「回り道する力」大藤
忙しい現代社会で、私たちはつい効率ばかりを考えて行動しがちです。でも、回り道をして苦手なことにもチャレンジすれば、視野も可能性も広がります。大切なのは、未知の領域に足を踏み入れ、失敗しても後悔しないでいる「勇気」だと思います。
石田 僕自身も、大学を出てすぐには就職したくなくて、20代は棒に振っても視野を広げようと思っていました。でも口で言うほど簡単ではなく、当人にはすごくプレッシャーがかかります。そのつらさに耐える力も必要です。
小島 道を歩きながら「よそ見をする力」もあるといいですね。行く先がわからず立ち止まっている若者をよく見るのですが、とりあえず歩いて周りを見れば、いろいろ見つかるはずです。
石田 自分の将来を考えるのはとてもしんどいけれど、バタバタしているうちに何となく形がついてしまうものでもあります。ですから、皆さんのお話には理想がたくさん入っていますけど、そうでないカッコ悪い自分を受け止めてあげることも大切だと思います。
「現実的に夢を見続ける力」安松
なりたい自分になるのに、半年程度の就職活動期間は短すぎます。将来について考え続けることで、夢を追いかけつつも視野や選択肢が広がり、結果的にそれを実現できるのでは…。小中高大と一貫してそのための時間を設けてほしいと思います。
石田 そのまま文部科学省に言ってもらったら(笑)。ただ全体を通して一つ気になるのは、大学生だからでしょうけど、就職がゴールととらえられていること。就職はスタートラインで、その後も夢を見続けてほしいですね。大学での勉強はつまらないかもしれませんが、仕事の中で自分を伸ばす勉強は、びっくりするくらい面白い。とくに20代での勉強は将来を左右しますからがんばってください。
「内面からの喜びを感じる力」広部
今の若者の行動は、成績や評価といった外的要因に左右されすぎている気がします。学ぶこと、働くことの本質に立ち返り、その成果だけでなく過程を重視することで、やりがい、充実感といった内面の喜びを感じることが大切だと思います。
石田 この問題はかなり深刻。担当している人生相談でも、人を好きになることがわからない、仕事の意味がわからないと、自分の気持ちを全く読めなくなっている例がとても多いんです。情報が氾濫する中、こう生きるのが正しいと頭ではわかっているけれど、心が動かない。
小島 人間の行動の前には、感情、思考という二つのステップがありますよね。でも親は子どもに、つい行動だけを命令してしまって、内面の過程を待つことができないでいます。
石田 そもそも日本の社会全体が、流通をはじめとして、中間の過程をとばして効率を上げようという傾向が強い。ものを調べるのもネットを使えば一発。
小島 だから私は、学生に問いかけるのに「思う」という言葉を大切にしているんです。「どう思う?」それから「どうしたい?」と、事実・感情・未来という手順をふむ。そうすると結構本音が出てきます。実はみんな内面をもっているんだけど、笑われるとか恥ずかしいとか、抑えてしまっています。
石田 うちの子の学校のクラスなどを見ると、今の子どもは自分が傷つくことと、損をすることにとても敏感なんです。そんなこと、もういいじゃないかと思いますけどね。
「対話力」諸沢
ネットや携帯電話を通したコミュニケーションは、感情や思いが伝わりにくい。面と向かうと言いづらいこともあるし、会うには労力も必要ですが、表情や身振りの見える対話だからこそ伝わることも多い。とくに聞き方が大切だと思います。
石田 恋愛においても仕事においても、モテる条件はコミュニケーション力。だから、どちらか一方だけがモテるということはありません。
小島 対話の際、「察する力」も持っていると、さらに会話が面白く、心地よい空間になりますよね。
さて、7人の発表をお聞きになっていかがですか。
石田 自分の内面に、より深くおりていこうという方向性を感じました。それは、外の情報にあまりにも振り回されているという不安からきているのかもしれません。
小島 ありがとうございました。 |