寄稿
俳人
大高 翔氏
守られていた幸福な時代
高校卒業と同時に、句集を上梓し、上京した。立教大学入学生活が始まった頃、俳句の世界へ本格的に足を踏み入れた。田舎の女の子にとっては、華やかでくらくらするような毎日。原稿が活字になり、テレビに出たり、新聞に取材を受けたり…。でもその一方で、実力があるわけじゃない、と自分で分かっていたから、苦しくもあった。もっと確かなものが自分の内側になければ、流されてしまう、と不安だった。
だから、大学にいると安心したのかもしれない。授業を受けたり、食堂や図書館で時間を過ごす、ありふれた大学生の生活が、わたしには、「居場所の確認」だったのだろう。小さい発見でもいいから、自分の手で見いだすことで、自信を積み上げていこうとしていた。
そんな大学生活で、一番心に残っているのは第一食堂の前の藤棚。最新刊の句集に、ここでの作を収録した。
藤棚の真昼間吾を幽閉す
暗いところから、明るいところはよく見える。
ここにいると世界はたやすい。
だからしばらく安心して、
強い香りと陰に、匿われている。
俳句集『キリトリセン』(求龍堂)より
キャンパスにいる時間は、不安定なあの頃のわたしを、守っていてくれたのだろうと思う。立教大学のキャンパスで、季節を存分に感じ、自然の息づかいを感じていた。立教大学だからこそ、の経験だと今にして思う。今も、大学を訪れると、俳句という道を選び、歩き始めた頃の自分がいるような気がする。わたしには、かけがえのない宝物。いつまでも緑の美しいキャンパスであってほしい。そこに宿る立教の自由の精神もまた、確固たる器のなかで、守られていくのだと思うから。
(2002年文学部日本文学科卒)
-題字は本人直筆-
2007-12-27 |


