寄稿
キユーピー株式会社 代表取締役社長
鈴木 豊氏
私の宝物
私が入学した頃は、70年安保や大学立法で全国の大学が喧騒だち、比較的ゆったりとした校風の母校さえも、その波間にあって大きくキャンパスが揺れ動いていた時期でした。
故郷から離れて、都会の大学を志望した理由の一つは、大袈裟に言えば「脱皮」。幼い頃からの自分を知っている環境から離れることによって、新しい自分を創ることができると考えたからでした。
そんな私にあって大学の環境はというと、政治的主張の立看板が立ち並び、デモあり、オルグの集会ありというもので、否応なしに刺激を受ける様相を呈していたことになります。自ずと、「自分は、どんな主張を持っているのか」「自分の考えの現在地はどこなのか」等々を考え至ることになり、これまで自分の生き方について、どれだけ等閑視していたのか痛感させられた訳です。
幸いにも、そんな自分を支えてくれたのがクラスの友人(座席指定制の有難さ!)であり、史学研の先輩や同輩の方でした。
授業活動には不活発な私でしたが、このような人達との議論や勉強会などから、むしろ「学ぶ」刺激と「考える」おもしろさを体得したように思います。なにせ議論で負けたくない為に勉強し、それを確認する為に議論するといった具合でした。観念論・唯唯史観など哲学に触れた時の新鮮さも忘れられませんが、文学好き、映画好きの友人からの「それなりの論」を聞く度に妙に感心したり、大いに奮起させられたりしたものです。
そんな仲間と出会える場所。それがモダンでクラシックな第一学食であり、蔦の絡まる時計台が見下ろす芝生だったでしょうか。他愛のないことでも口角泡を飛ばして議論し合う、そんな素敵な時間を持てたこと、そして、それが大きな節になったことを感謝しています。
「人の考えを借りて済ますことなく、時間がかかっても自分の頭で考える。」私が学生時代を通じて得た、この宝物もずっと大切にしています。
(1973年経済学部経営学科卒)
-題字は本人直筆-


