(掲載日2012.02.02)
レポーター : 21世紀社会デザイン研究科 博士課程前期課程1年次 池永路代
中村 陽一 教授
グラミン銀行(バングラデシュ)を創設したムハマド・ユヌス氏がノーベル平和賞を受賞して「ソーシャル・ビジネス」という言葉は一躍脚光を浴びました。一般に、社会的課題の解決にビジネスの手法を用いて取り組む事業をソーシャル・ビジネスと呼んでいますが、多くの人が、その響きに問題解決への新しい可能性を感じるのではないでしょうか。日本では、「新しい公共」を打ち出した政府や産業界からもこの分野への期待が高まっているようです。この授業は、そのソーシャル・ビジネスとは何かという問いを出発点に、事例研究などを経て、受講者一人ひとりが起業プランを立てて発表し、互いに評価し合うところまでを目指しています。
今までの授業では、まず文献によって海外の事例も含めた全般的な知識を得、その後、日本における事例をビデオや有志による研究発表などを通して見ていきました。国内でもこういった取り組みが数多くなされていることに新鮮な驚きを感じると共に、外国とは違う日本なりの背景が少しずつ見えてくるようになりました。
そして今日の授業では、公益社団法人経済同友会が2010年に出した「市場を活用するソーシャルビジネス(社会性、事業性、革新性)の育成―日本的市民社会の構築に向けて―」を読み、企業経営者団体からの視点について考えました。起業家もいれば非営利部門の専門家もいる多彩な顔ぶれの受講生からは、いつも鋭い意見が出されます。また、実際に一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワークの常任顧問をなさっている中村先生から、先生の実体験に基づいたお話を伺えるのもこの授業ならではです。
今後は、卒業生からも助言をいただいて、自分で起業プランを立てることになります。資金調達の問題や制度などさまざまな要素を考慮していくと、現在の日本の社会が立体的に現れてくるのではないか、それによって、可能性や問題点も見えてくるのではないかと思っています。
自分のことはともあれ、皆さんの起業プランの発表を聞くのはとても楽しみです。このクラスから、将来の社会起業家が生まれるかもしれません!
| 取材日 | 2011年11月18日(金) 18:30~20:00 |
| 教室 | 池袋キャンパス 14号館D402教室 |
■ねらい・授業内容
日本でも注目され、議論から組織的実践の段階へと進んでいる国内外のソーシャルビジネス(SB)、社会的企業(Social Enterprise)、コミュニティビジネスの現状と課題、可能性を学び、受講生同士はもとより、外部ゲスト(アドバイザー)の力も借りながら、実際に起業プランを作成。検証と相互評価を行う。
授業の視点としては、社会的背景、NPO/NGOや当事者性との関わり、「社会性」と「事業性」の解明、社会的排除・格差と新しい貧困・雇用をはじめとした社会問題の創造的解決手法としての可能性、地域の課題発掘と解決への道筋としての有効性、「社会的経済」「連帯経済」などとの関わり、政府行政および民間企業との関係(CSR、社会貢献、CRM、BOPビジネスとの関係含む)、今後の社会デザインとの連関、など。
現在、本学とも協力関係にあるアジアの革新的組織(BRAC、グラミン銀行、希望製作所等)、英国のコミュニティビジネス、イタリアの社会的協同組合、そして日本の現状などを参考事例に、SBの全国的プラットフォーム&経済団体「ソーシャルビジネス・ネットワーク(SBN)」(常任顧問・中村)、経済産業省とのパートナーシップでSBの制度政策提言を行った「ソーシャルビジネス推進研究会」(座長・中村)での実践と提言、科研費共同研究チームによる研究成果(研究代表者・中村)、ゲストスピーカーによる報告などを活用し、映像資料も多用して最新の動向と議論を視野に収めていく。
演習の形式としては、私とゲストスピーカーによる講義や報告、共通の文献・資料・事例などをもとにした受講者による報告と事例研究および討議、私からの発題、そして受講者による起業プランの発表・その検証・相互評価等を複合させていくこととなる。
■授業計画
イントロダクション―映像で見るソーシャルビジネス
1.ソーシャルビジネスとは何か―文献・資料・映像による入門
2.日本における展開の現状―調査研究報告書等を読む
3.社会的企業をめぐる海外動向と研究―アジア(バングラデシュ、韓国など)、英国、イタリア
4.国内事例研究
5.起業プラン発表
6.検証および相互評価
*起業プラン作成、検証、相互評価については、ソーシャルビジネスの優れた実践家・専門家、そしてSBNから、ゲストスピーカーとしての報告とアドバイスによる協力も得つつ進める。