(掲載日2010.7.01)
レポーター : ビジネスデザイン研究科 博士課程前期課程2年次 高野 雅巳
山中 伸彦 准教授
どれほど優れた戦略が計画されようともそれを実行する組織がなければ意味がないし、競争優位な資源を獲得しようともそれを活用する組織がなければ意味がない、さらには自社にとって大きな機会となる市場環境が存在しようともそれに適合した組織がなければこれも意味をなさない。今日のグローバル化、情報化、多様化などといった不確実性の高い経営環境の中で効率的かつ競争優位な源泉となりうる組織をデザインし、マネジメントすることは企業にとって極めて重要な課題の一つであろう。また一方では、組織に属する個人にとっても、集団や組織におけるジレンマや限界、コンフリクトも日々遭遇している共通のテーマであろう。
この講義は、A期間(4~5月)については伝統的及び近代組織論から学説史に沿って、批判を通しながらの発展過程を理論的に考察する。組織構造の変革における分析を通じて現在の企業組織に対する理解を深めるわけだが、いずれの学説や理論にも批判が存在し、答えがないのが答えといったところも“おもしろさ”の一つかもしれない。
B期間(6月~7月)については日本の企業組織のあり方を講義テーマとし、事前に指定された現代の日本型経営組織に関連した研究論文を批判的に読み込み、講義の前半で論点を整理し、後半にディスカッションを行うという方法で進められる。組織論は、社会学、心理学、政治科学など多面的なアプローチが存在し、理解を深めるには論点が幅広い。しかしながら、受講生である大学院学生の多くが現在も企業組織に属しているか、または属した経験がある。それゆえに、自身の日常や経験と照らし合わせて理論を考察し理解を深めることが可能である。日々遭遇する問題や事象、それらが発生した原因や組織のメカニズムが学んだ理論に合致すると、結果は必然であったと妙に納得をしてしまうことも少なくない。加えて、組織論特有のアカデミックな用語に多く触れることができるのもこの講義の特徴である。
この日は「日本企業と知的熟練」がテーマであり、事前に指定された研究論文をもとに講義が進められた。「オートメーション化が進むほど変化と異常への対処能力が重要となる、すなわち知的熟練の重要性が増大する。知的熟練の形成と発揮には長期選抜型の仕組み、すなわち長期の競争が不可欠であり競争を一層促進させる。」などの、日本企業の雇用行動を説明する変数である「長期的競争」と「知的熟練」をキーワードとした、非常に興味をそそる議論が展開された。案の定、最後まで多くの批判、議論が絶えず続いていた。
MBAホルダーにとって必須と言える「人と組織」についてより理解を深めるには、ビジネス・オーガニゼーション3、4を半期通して受講することをお勧めしたい。また、この講義で触れる多くの組織論研究論文で、問いを明らかにする際に用いられる特有の尺度設定と操作化の方法は、修士論文を執筆する上でも大きな手助けになるであろう。
| 取材日 | 2010/06/14(月) 18:30~21:30 |
| 教室 | 池袋キャンパス10号館 X105教室 |
■ビジネス・オーガニゼーション3
「ビジネス・オーガニゼーション」とは、ビジネスを行う組織、すなわち企業組織のことを指している。組織を定義することは実はそれほど簡単ではないが、有名なものとしては例えばバーナードが、「ふたり以上の人々の意識的に統括された活動や諸力の体系」として定義し、「相互に意思の疎通を図ることが出来、達成すべき共通の目的を認識し、相互に努力・貢献しようとするとき組織は成立する」と述べている。しかしここではより一般的に、ビジネスという目的を実現するために人為的に形成された「分業と調整による協働の仕組み」として定義しておきたい。
今日のグローバル化の進展と技術革新、規制緩和といった動きを背景として、いかに効率的かつ競争力ある組織を創り上げるかは極めて重要な戦略的課題となっている。組織が人間の協働の仕組みであると考えれば、組織の競争力にとって組織を担う個々の人間の問題も当然等閑にすることはできない。
この講義では、組織について、その原理や原則に立ち戻って理論的に考察することを通じて今日の企業組織の現状を検討してみたいと考えている。
■ビジネス・オーガニゼーション4
グローバリゼーションの進展と絶えざる技術革新、「豊かな社会」の実現と消費の高度化、少子高齢化や社会的な価値観の変化といった動向を背景として、日本の企業組織は大きな変革を迫られているといってよいだろう。しかしその一方で従来の日本的な経営組織を評価し、そこにこそ日本企業の競争力の源泉があるとする見方もある。いったい「日本的経営」や「日本的組織」とはどのようなものであり、どのような変革を迫られているのだろうか。
この講義では、日本型経営組織とはなんだったかを確認し、その再検討を通じて、今後の日本の企業組織のあり方を考えてみたいと思う。
この授業では、講義計画に記されているような、現代の日本企業を考えるうえで重要なテーマに関連した研究論文を取り上げ、受講者が批判的にこれを読み込み、そのうえでディスカッションを行うという方法で進める。