(掲載日2010.06.22)
レポーター : 現代心理学部映像身体学科3年次 鶴岡 慧子
万田邦敏教授
この授業で行っているのは、映画から「何が見えてくるのか」を意識的にしていく作業です。普段、わたしたちが映画を見るとき、画面の中のさまざまなものを目の当たりにしていますが、この授業を受けると、いかに自分がたくさんのものを見落としていたかが分かります。わたしたちがなぜそのように映画をとらえたのか、映画はどうやって展開していたのかを「見直す」ことが、この授業のテーマです。
今年のこの授業では、加藤泰監督『沓掛時次郎 遊侠一匹』と、小津安二郎監督『麦秋』を授業内で鑑賞して、その2本について考えました。まず見終わってから、万田教授とわたしたちは「この映画は何をめぐっての映画だったのか」について考えます。
小津安二郎の『麦秋』は、(1)婚期を逃したある一人の女性が結婚を決める (2)一つの家族がバラバラになっていく という二つのテーマをめぐっての映画でした。次に、そのテーマがどのように映画の中から「見えてくるのか」を、一つひとつのシーン、さらに一つひとつのカットから考えてみます。登場人物たちがそれぞれどのような距離でその場に存在していて、どんな動きをしていたか、どのようなものが画面上に登場していたか、じっくりと見直してみると、映画のテーマがはっきりと、目に見える形で画面上に写っていることが分かるのです。
『麦秋』では、冒頭から家族が囲んでいた食卓のテーブルが、テーマの象徴として映画全体を通して存在しているということが分かりました。劇中、ある時を境に家族はその食卓を囲めなくなってしまい、最後に家族全員で晩ご飯を食べるシーンでも、ついにその食卓はあるべき場所からなくなってしまっています。気持ちは離れていないものの、距離的にはもうバラバラになってしまった家族というものが、見ているわたしたちには見えるのです。
ご自身も映画監督でいらっしゃる万田教授のお話とともに映画を見てみることは、つくり手を目指す私たちにとってはとても刺激的で、映画はどうして面白いのかということの再発見にもなります。
| 取材日 | 2010年6月3日(木) 13:15~14:45 |
| 教室 | 新座キャンパス N213教室 |
■授業の目標
劇映画におけるドラマは、いつ、何によって成立し、展開するかを数本の日本映画を検証しつつ探る。
■授業の内容
増村保造、加藤泰、小津安二郎らの監督作品を検証し、劇映画におけるドラマがいつ、何によって発生し、いつ、何によって展開していくかを具体的に探る。
■授業計画
1.増村、加藤、小津らの監督作品を順次上映する。
2.受講生は翌週までに、見た映画についての簡単なレポートを作成し、授業で発表する。
3.その発表に対する受講生からの、あるいは講師からの質疑応答をとおして、さらに発展的かつ具体的な検証を行う。