(掲載日2007.11.14)
レポーター : 経済学部経済政策学科2年次 猪股 有佐
↑香山先生
みなさんはALS(筋萎縮性側策硬化症)という病気を知っていますか。ALSとは厚生省の認める特定疾患(難病)の1つで、ほとんどが40代以降に発症し、60代で発症のピークを迎えます。ALSは運動神経をつかさどる細胞だけが侵される病気で、2年で歩行困難、3から5年で全介助が必要になると言われています。そして、一般的な運動機能が働かなくなり、噛み砕いたり、飲み込んだりする機能、また言語発生機能や呼吸機能までも失ってしまう病気です。
今回はそのALS患者支援グループである「さくら会」の方を迎えての授業となりました。テーマは大きく分けて「告知」と「地方での治療格差」の2つ。それぞれのテーマにまつわるエピソードやALSの現状を交えてお話をうかがいました。
「さくら会」の代表である橋本みさおさんが発病したのは32歳の時でした。最初は体に疲労感が感じられ、月日が経つにつれて握力が落ち、手で物を持つことが困難になったそうです。しかし、そのような症状が出ても自分が大病にかかったとは思わず、橋本さんは生活を続けました。けれど病状は刻一刻と進行し、やがては指が伸ばせないほどにまでなり、橋本さんは東大病院を受診します。そこでの診断結果は「しゃこつ神経麻痺」。その後、医師からの処方箋を受け、ビタミン剤を飲み生活を続けますが、病状が回復するわけもなく、遂には左腕が上がらないほどになってしまいました。そのため、近所にあった順天堂大学で再度検査をうけ、そこでようやくALSであることが分かったのです。橋本さんは医師から告知をうけませんでした。橋本さんの夫から一生治すことのできない病であることを聞いたそうです。32歳の橋本さんにとって死を目の当たりにした瞬間でした。それから20年あまり、橋本さんは今もALSと共に「さくら会」の会長として活動を続けています。
ある30代の女性が医師から告知を受けた際に「あなたはALSです。すぐに手足が動かなくなり、いずれは呼吸もできなくなるでしょう。呼吸器をつけるか今から決めておいてください」。と言われたそうです。彼女のショックは大きく、真っ先に死ぬことを考えたそうです。しかし自分で死ぬこともできず、ただ自宅に引きこもる日々が続きました。ある日「さくら会」の存在を知り、橋本さんに会いに出かけました。そこで彼女は泣きながら「何もできなくなったら、私はどうすればいいですか」と橋本さんに尋ねました。すると橋本さんは「寝てればいいじゃない」とおっしゃったそうです。その一言に彼女は救われたと言います。
医師の心無い告知。また、最後まで告知しないと決めている医師。医師には、最後まで患者をフォローする義務があります。また、人は必ずいつかは死にます。だから、患者には死に方を選ぶ権利があります。ALSは現在の医療では治療方法がありません。だからなおさら、患者は自分で自分らしい死を選択したいのです。しかし、実際には告知も受けず亡くなる方も多くはありません。自分で自分の病名に気づきながらも、告知を受けないために様々な選択を捨てなくてはならない人もいます。また、地方に住んでいるために十分な診察や介護を受けられない人もたくさんいます。私たちの知らないところで、ALS患者の方々は今日も自分の病気と、まわりの環境と戦っています。私たちは、その人たちに何かしらの手助けができると思います。ALSという病気を知るということも、その第一歩だと思います。もし、あなたが、あなたの家族・友人がALSと分かったら、あなたは告知を希望しますか。十分な医療を受けられないところに住んでいたら、あなたはどうしますか。一度考えてみてください。
↑授業の様子↑
| 取材日 | 2007年11月14日(水)9:0010:30 |
| 教室 | 新座キャンパス N213教室 |
2007年度シラバスより
■授業の目標
医学は、「身体」ともっとも実践的にかかわる世界であると言える。そこで「身体」はどうとらえているのかを、具体的に学ぶ。
■授業の内容
基本的には講義で形式で行う。精神科臨床医でもある担当者がこれまでの治療実践で得たケースをよりどころにしながら、そこで「身体」はどうとらえられているのかについて明らかにしていく。
■授業計画
予定されているテーマ
・診察室は何を診るところか?
・出発点としての「身体」
・到着点としての「身体」
・「こころ」と「からだ」
・「身体」はいくつあるのか
・「身体」はどこまで「身体」なのか
・切り刻まれる「身体」
・作り変えられる「身体」
・生み出される「身体」
・「身体」は誰のものなのか?