おもしろ授業 [大学院]

(掲載日2007.10.23)

立教生による講義レポート!

レポーター : 経済学部経済政策学科2年次 猪股 有佐

立花隆教授

 「今年のノーベル経済学賞のハーウィッツがやっているメカニズムデザインも、21世紀社会デザインの一種ですよ。これまでのようにマーケットに経済の行方を盲目的にゆだねるのではなく、新しい経済のメカニズムを自分たちで最適設計して作ってしまおうということですからね」。

 この日の立花先生の授業はこの一言ではじまった。アダム・スミスのレッセフェールの失敗あり、マルクスの計画経済の失敗あり、私たちは経済を単純に市場にゆだねることはできなくなり、計画経済を単純に信奉することもできなくなった。新しい経済メカニズムを創ることが必要となった。しかしながら新しいメカニズムを創ることも容易いことではない。それには需要と供給の把握もいるし、なにより経済主体の行動を読まなくてはならない。ましてや経済主体は嘘をつくこともあり、そう簡単に彼らの行動は読めない。しかし、先生は言う。「経済主体なんて嘘をつくものなんですよ」と。「経済主体はインセンティブを与えないと、嘘を拡大する。だからそれなら、嘘の報告でも集積・配分できるようにすればいいんです。それがゲーム理論の出発点であってゲーム理論そのものなんですよ」。このように過去からの大まかな流れをつくって、それから本論に入っていく。そして主題に到達するころには生徒の関心を最大限引き出す。この先生の独特の授業の展開に生徒が引き込まれていくのが、見ているこちらからでも分かった。

 この日の本題は『何があの戦争で日本を負けさせたのか』だった。先生は第二次世界大戦が行われていた時代を「それぞれの人が何かを信じ理想に向かっていたが、その思いとは正反対のことが起きていた時代だった」と振り返る。人々は日本が勝利を収めることと期待したが、結果は敗戦。人々の希望は消えた。日本政府はアメリカのポツダム宣言を受諾。国体の維持を約束させ主権も天皇のままとすることを望んだ。しかし、GHQとしては明治憲法を改正し主権在民を実現することが目的のポツダム宣言であった。GHQはその後日本側の憲法改正の動きを待つが動きはない。そこでGHQ主体で憲法草案を作り、日本側が作成したことにして国民に日本国憲法案を発表した。それが現在の主権在民の日本国憲法となった。これは大まかな流れであるが、実際には憲法改正にあたって様々な問題が発生した。たとえば日本には治安維持法があり憲法は天皇しか変えることができなかった。そのため他の人間が憲法を変えようとすれば治安維持法を破ることになる。しかし、占領軍が変えるのなら治安維持法違反にならないのか、等々珍妙な議論が沢山あった。

 あの時代のデーターはほとんど残っていない。それは戦火で焼けてしまったのはもちろんだけど、政府が処分したためということが最近では分かってきた。現代になってやっと新しい資料が出現し、あの時代を新たな角度で見る機会が増えてきた。あなたもこの授業を通して歴史を多角的に見て、現在から未来への社会デザインを考えてみてはどうだろうか。

取材日 2007年10月23日(火)16:30~18:00
教室 池袋キャンパスA204教室

授業概要(2007年度シラバスより)

■ねらい・授業内容
 近現代の日本において,社会全体を大変革しようとする革命(維新)ないし大改革の思想が何度か登場した。ある場合は見事な成功をおさめ(明治維新),ある場合は無残に失敗した(昭和維新)。
  成功の事例には,占領軍による戦後改革あるいは,小泉内閣による小泉改革(まだ改革途上だが)をかぞえてもよいだろう。失敗の事例としては,1960~70年代の左翼過激派による革命企図ないし,1990年代のオウム真理教事件などもあげられる。
  革命(維新)の原動力となるのは,「ことばの力」である。それは運動に参加する者にしばしば生命を賭けることを要求し,現実に多くの運動参加者が生命を落としてきた。彼らにそこまで運動にコミットさせる「ことばの力」とは何なのか。構想力なのか。夢想ないし幻想の喚起力なのか。
  成功と失敗を分けたものは何だったのか。各革命・改革のデザインとデザインの現実化過程にわけて,事例別に検討してみたい。
  「21世紀の新しい社会デザイン」に向けて,我々は歴史から何を学ぶことができるのか。
■授業計画
まず,
(1)6・70年代の過激派の革命思想,
(2)90年代のオウム真理教のヴァジラヤーナ思想について考える。資料は,授業の過程でプリント資料を配る。
(3)小泉改革についても考えるが,それについては,竹中平蔵「構造改革の真実-竹中平蔵大臣日誌」,飯島勲「小泉官邸秘録」(いずれも日本経済新聞社)などを参考にする。


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