(掲載日2002.12.17)
明石 洋子さん
本日はゲストに明石洋子さんを招き、公開授業の形を取りました。
明石さんの息子、徹之さんは、重い知的障害と自閉症を持ちながら初の公務員として川崎市で働いています。明石さんは徹之さんを育てる中で、障害者が地域の中でどう生きていくかを模索し、共生のため地域に働きかけてきました。
そんな明石さんと徹之さんの歩みがドキュメンタリー番組となりました。1999年11月21日に放送された新日本探訪「笑顔で街に暮らす」(NHK総合)と、2000年2月20日に放送された列島スペシャル「お仕事がんばります」(NHKBS1)は大きな反響を呼びました。また「ありのままの子育て―自閉症の息子と共に(1)」(ぶどう社)を出版。続編「自立への子育て」は2月に出版されます。
現在は、管理薬剤師として勤務しながら、「サポートセンターあおぞらの街」というNPO法人を設立し、障害者の地域生活支援活動に取り組んでいらっしゃいます。
息子の徹之が2歳10ヵ月の時、重い自閉症だと診断されました。ショックから立ち直った私たち夫婦は、少しでも障害を治そうと知識を無理やり教えようとしました。それがお互いのためにならず、信頼関係も危うくすると気づいたとき、「治すことより自立させること」を考えました。さて、どう育てようかと考えたとき、大きく分けて以下の3つを教えることにしました。
①社会のルール
交通ルールなどを知らなければ、事故にあってしまうし、お金を払わず物を持ってくれば、泥棒です。社会のルールを覚えない限り、安全が確保される施設に入所することになり、地域の中で生きていくことはできません。
②自立のスキル
息子のできることとできないことをはっきりさせようとしました。できることを伸ばしていけば、自立のスキルを身に付けることができます。息子の場合、幼い頃から、水や数字へ異常なまでの興味がありました。水へのこだわりは、トイレ掃除やお風呂掃除を教えることで、喜んで掃除をするようになりました。また、数字などへの興味をいかして、買い物の練習や切符の買い方などを学び、旅行等楽しみにつなげました。
③人とのかかわり
言葉でコミュニケーションをとることが苦手なので、とにかく挨拶だけはきちんと教えました。挨拶を必ずするようになった息子の影響で、入学した定時制高校の生徒の間にも挨拶することが定着し、校内に挨拶の声がこだまするようになったようです。また、現在の職場、川崎市の老人ホームでも、息子の挨拶に、職場の雰囲気がずいぶん和んでいるということです。
息子が何か近所の方に迷惑をかけた時には、謝りにいくだけでなく、「今度から声をかけ、悪いことをしたときはしかってください」と働きかけることによって、地域の方と息子が交流できるようになりました。
もっともっと息子のことを知ってもらおうと、『徹ちゃん便り』(現在は『明石通信』)という新聞を作成し、地域の方々に配りました。
このような働きかけによって、徹之は高校まで健常児と共に就学し、アルバイト、公務員と就労の夢も果たすことができました。
障害者にとって、一番幸せな生き方は、地域でいきいきと暮らすことだと思います。
身体障害者の方に、車椅子が必要なように、知的障害者に必要なのは、人の支援です。
地域の人が、徹之のことを知り、その特性を理解し、コミュニケーション手段を工夫してくださることで、息子はいきいきとした毎日を送ることができています。
障害者が地域で自立して生きていくため、その支援を行うサポートセンターが、今後重要な役割を果たしていくことと思います。また、皆が「障害者がそばにいる社会こそ当然」と思う世の中になることを願っています。
赤塚先生は、来年度は全学共通カリキュラム総合B群で「心のバリアフリーを考える」という授業を展開します(前期)。
毎回、障害をもつ当事者やご家族、障害に向き合って各界で活躍なさっている方 をゲストスピーカーとしてお呼びし、スポーツ、旅・観光、住宅、TV・映画、子育て、地域活動、権利擁護など、障害をめぐるテーマを多彩に取り上げて行きます。
今回のゲスト、明石洋子さんも、来年、再登場してくれます。
今回の講演会を企画し、司会を務めたコミュニティ福祉学部 4年次の大西聡子さん(左)と仙田涼子さん(右)
| 取材日 | 12月17日(火)9:00~ |
| 教室 | 8号館8101教室 |
ねらい:
私たちは,疾病や事故などで障害をもち,日常生活や社会生活に不自由や困難さをもつ可能性が誰にもあります。わが国では,近年,障害をもつ人たちが普通の当たり前の生活を送ることができるよう,ノーマライゼーション理念の実現を目差してきていますが,まだまだ多くの課題があり,残念ながら障害者差別も存在します。この授業では,わが国の「障害者」をめぐる過去を振り返り,現在をとらえながら,障害をもつ人たちが,安心して生きがいをもって生活できる社会を実現するための課題について考えていきます。
授業内容:
1.第二次世界大戦終戦以前の障害をもつ人たちの生活
明治以前,明治から大正,昭和へ
2.第二次世界大戦終戦後の障害をもつ人たちの生活
障害者福祉制度の誕生,障害児教育,障害者雇用の仕組み
3.障害者運動の展開
障害者運動史,当事者の主張
4.障害者福祉の現状と課題
現行制度における課題,社会福祉改革における課題,障害に関わる意識における課題