(掲載日2002.10.7)
橘川武郎氏
本日の授業は、東京大学社会科学研究所教授の橘川武郎をゲストスピーカーにお迎えして、企業文化の形成と変質についてエネルギー業界の事例をもとにご講演いただきました。
キーワードとして
■企業文化を形成していくリーダーシップのあり方
■企業文化が変質していくユデガエルシンドローム
が提示され、 松永安左エ門(電力業界)と出光佐三(石油業界)の2人に焦点をあてて講演が行われました。
まず、講演に先立ち、政府の規制に反抗して革新を実現した反骨の経営者である2人の共通点に光をあてた35分のビデオを鑑賞しました。
電力業界も石油業界の出光興産も、高度経済成長期までは活力があったのは何故か?
その後、活力が失われたのは何故か?
企業文化を形成していくリーダーシップのあり方
松永安左エ門(電力)のリーダーシップとは戦前の電力は水路式の水力発電によるもので、需給関係は夏と冬で需給関係が一致していなかった。水力発電は夏に発電量が多く、冬に少ないが、需要は夏少なく、冬に多い(現在のようにクーラーもない時代なので)。
電力はストックのきかない商品であるため、供給の追いつかないときに火力を使うことを考えたのが松永安左エ門であった。これは、いろいろな発電源を混ぜて使うというエネルギーミックスの考え方で、革新的な発想の転換であった。
出光佐三(石油)のリーダーシップとは
出光佐三はつねに敵(政府、外国石油会社)を作ってチャレンジしていく行動パターンをとった。戦前も戦後も、出光佐三は、軍や国の統制に一貫して反対した。また、終戦後には、日本の主要な石油会社が外資と組んで日本は石油の精製と販売に特化したシステムが定着したが、このしくみに反対して石油の採掘・精製・販売を一体化した石油会社を作ろうとした。
→この2例からもわかるように、ものごとは自然に流れれば何も起こらないが、誰かがリーダーシップを発揮することで流れが変わり、特徴的な産業のシステムができるのである。
企業文化が変質していくユデガエルシンドローム
ユデガエルシンドロームとは・・・
蛙を熱湯に入れたら飛び出すが、水に入れて徐々に暖めて温度を上げていくと、やがて茹って死んでしまう。→組織文化が徐々に状況が変化していく中で、成功体験を絶対化し、プライドだけをもっているとビジネスモデルが崩れていくという、組織文化がおかしくなっていく典型例。
電力会社の例では・・・
石油危機のとき、もはや企業努力だけでは太刀打ちできなくなり、一斉値上げを行うとともに、政府の補助金に依存して原子力施設等を建設するようになった。
石油会社の例では・・・
石油業法の制定により、石油各社の既存のシェア率を保証する護送船団方式になり、各社ともこのしくみに依存してしまった。
【まとめ】
リーダーシップにより、流れは大きく変化したり、イノベーションが起きて、歴史の道筋が変わったりする。ただし、成功したあとに落とし穴が待っている。自己満足や甘い環境に対して気づかずにいると、茹でられた蛙のようになってしまう危険性がある。
| 取材日 | 10月7日(月)13:10~14:40 |
| 教室 | タッカーホール |
90年代以降,日本企業の業績は全体的に低迷している。しかし,中には,経営環境の変化にうまく適応して好業績をあげる元気な企業も存在する。2001年,ホンダは過去最高の年間新車販売台数を達成した。なぜ,同じような経営資源をもちながら,経営環境への適応に差が出るのであろうか。本講義では,この謎を解き明かすため,企業経営において「企業文化」が果たす役割にスポットを当てる。
具体的には,従業員の思考や行動に企業文化が与える影響や,企業の経営戦略の策定・実行に企業文化が与える影響,さらには,企業文化そのものを創造・変革するトップマネジメントのリーダーシップなどについて学ぶ。